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25. 冬百合祭りと彼とのワルツ(上)

「わぁ……!」


 見渡す限りの見事な白に私は感嘆の声を上げた。冬百合が心地よさそうに風に揺れている。今日は闇の国のお祭りである冬百合祭りの日だ。この日の為に学園から隣町へと下りてきたのである。


 ソテダウス学園は高台にあるので、歩いていこうとレオナルドと話していたのだが、レイラが自分の家の馬車を用意してくれた。馬車に揺られながら外を見るとこんな寒い季節なのに花が咲いていることに改めて驚いた。


「これだけあると圧巻だな。さすが『予言の町』の冬百合だ」

「予言の町?」


 闇の国では外に出る機会などほとんど皆無だったので、地理は全くわからない。


「……この町の冬百合は、これからの1年を選定する大事な百合を咲かせるの。その占いが今まで外れたことがないから『予言の町』と言われるのよ」

「へぇ、すごいね」

「冬百合は闇の国では一斉に咲くけど、これだけ大規模なのはこの町だけだ」


 今日も厚い雲で覆われている。青空の下、太陽に照らされたらもっと綺麗だろうな。ここがもし光の国なら……私はそんなことを思った。



 町に到着し、馬車を下りる。大きな町だけあって活気があった。いろんな場所に冬百合が飾られており町は、白一色だ。私ははぐれないようにレオナルドとレイラについていく。露店があちこちに出されており、そのうちの一つに足を止めた。どうやらこの露店は冬百合を売っているようだ。


「最初に選定する冬百合を見に行こう。その前に……リリア、あの」

「冬百合祭りでは体のどこかに冬百合を挿すの。冬百合を交換し合うとより仲が深まる言い伝えがあるわ。例えば家族とか、…………友達とか」

「そうなの?素敵な言い伝えだね!ねぇレイラ、冬百合を交換しない?」

「…………仕方ないわね」


 恥ずかしがりやの彼女のことだ、断られること承知で聞いてみたらしぶしぶといった形で冬百合を交換してくれた。レイラも私のこと友達ってほんの少しでも思ってくれてるのかな。ほら私って……「余計なことしないで」宣言されたし、私からしかぐいぐい話しかけてないし?


「レオナルド、どうしたの?」

「はやくいきましょう。遅くなると人が多くなるわ」

「…………あぁ」


 ぽかん、と固まっているレオナルドに私とレイラは声をかけた。彼女と冬百合を交換したことに満足した私は、悔しそうなレオナルドと勝ち誇った笑みを浮かべたレイラの姿に気づくことはなかった。



 占いに使われる冬百合は露店が出ている場所から少し離れた静かな場所に咲いていた。すでに多くの人がいて、近くで見るには少し時間がかかった。冬百合は3輪咲いており、そのどれもが触れるのも憚られるような高貴さをまとっていた。


「綺麗……」


 おもわず言葉がこぼれた。町のあちこちで咲いていた百合とは雰囲気が全然違う。


「……この冬百合は町でのお祭りが終わった後に占いに使われるのだけど、3輪咲いているでしょう?」

「うん」

「1輪1輪に意味があって、この国の過去、現在、未来の状況を示しだしてくれるそうよ。この地の領主が占ったものを後日私たちに伝えるの」

「そうなんだね。教えてくれてありがとう」


 最近、レイラが説明してくれることが多くなった。返事が必要なことでさえ億劫そうだった彼女に何があったのかは分からないが、私に少しでも心を開いてくれているのならいいなぁ。レイラは目を伏せながら言った。


「…………別に。知らないと思っただけよ」


 

 そろそろ戻ろうと3人で話し、最後にもう一度だけじっくり冬百合を見ることにした。滅多にお目にかかれる機会でもないしね。


(百合って言ってるけどもうこれは別の何かだよね…………あれ、なんだろう)


 ふと3輪咲いている隅を見ると、何かが引っこ抜かれたような跡があったような気がした。見間違いかもしれないと思い、目をごしごしこすってからもう一度見るとそんなものは存在していなかった。


「リリア、行くぞ」

「うん」


 レオナルドに返事をして私は冬百合の咲いている場所を後にした。

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