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006

遅れてごめんなさい( T_T)



どうぞ!

というわけで、彪斗は採掘場にいた。


「おーい!にいちゃん、なんか用か?」


声が聞こえ、彪斗は辺りを見渡すが、誰もいない。


「こっちだ!こっち」


再び声がかけられた。声が下から聞こえてきた、と感じた彪斗が視線を下げると、小柄な体躯の男がこちらを見上げていた。俗に言うドワーフと呼ばれている種族のようだ。彪斗はそこまで考えてから視線を下げ、話しかけた。


「ギルドで依頼を受け、手伝いに来ました」


「おお!そうか、そうか。よく来てくれたな!」


ドワーフは顔面に喜色を滲ませた。


「それで、俺は何をすれば?」


「うむ。わたしが掘った鉄鉱石を運んでくれ、既に掘ってあるのも頼む」


ドワーフは300m程離れた建物と、山のように積み上がった鉄鉱石を指差した。彪斗は山のようにうず高く積もった鉄鉱石を見て、道理で誰も受けない依頼だな…と思った。


「分かった」


とはいえ、依頼を受けたからには達成しなければならない。服が汚れないように脱ぎ始めた彪斗の体を見て、ドワーフは言葉を失った。その体は無駄が一切無く完成された芸術品が持っているような美しさを放っており、体の前面に無数ある傷がその男の実践経験を物語っていた。ドワーフは震える声のまま、彪斗に話しかけた。


「おい、にいちゃん…」


「なんでしょう?」


「なんで、こんな誰もやりたがらない依頼を受けた?」


「俺がギルドにいるからですよ?」


「??」


ドワーフは心底、分からないといった顔をする。それを見て、彪斗は軽く笑いながら説明した。


「ギルドは本来、困っている人達の為の場所です。とはいえ、報酬や名誉しか見ていないのが現状です」


「確かに」


「だからこそ、それを少しでも変えたいと思っただけですよ。まあ、ただの自己満足です」


その照れたような笑顔を見て、本来の冒険者を見たような気がした。ギルドは困っている人達の為の場所と言われ、冒険者をしていた事もあるドワーフは現役時代の自分を恥じた。報酬や名声に踊らされ、大切な事を見失っていた自分に気付いたからだった。そんなドワーフをよそに、彪斗は黙々と作業を続けていた。


「わたしも始めるか…」


ドワーフが、そう言って作業に移ろうとした時、悲鳴が聞こえた。


「きゃあああーーー」


2人は作業を中断し、顔を見合わせた。


「今のは!?」


「分からんが、あっちは村の方角だ!」


「なんだと!」


そうドワーフから聞くないなや彪斗は、猛然と走り出した。ドワーフも昔使っていた装備を慌てて引っ張り出し彪斗の後を追う。彪斗は空間魔法で桜誓を取り出す。徐々に離されていくドワーフは桜誓を見て、目を丸くした。


「なんだ?あの奇妙な剣は?」


その声は彪斗には届かなかった。なぜなら、彪斗は既に視界から消えていたからである。


「速すぎじゃろ…」







ドワーフを引き離した彪斗は、悲鳴の聞こえた村に到着していた。


「ひでぇな」


討伐ランクBのオークが群れで暴れていた。家は壊され、男と家畜は根こそぎ殺されて貪り食われ、女は連れ去られていた。まるで地獄絵図、それが彪斗の眼前に広がっていた。


「とりあえず、助けられる者だけ助けようか」


そう言って、彪斗は60近くいるオークの群れに斬り込んだ。







「ここまでか…」


簡単な依頼の筈だった。オーク3体の討伐、それはBランクである腕利きのエカーナにとっては尚更そうだった。しかし、実際はどうだろう?依頼を受けた村に行けば、100に足りる数のオークがひしめき合っていた。すぐにギルドに引き返して救援要請をしようとした時、それは現れた。オークを束ねる王、その名は『オーク・キング』。絶対絶命な状況にも関わらず、エカーナは変に納得していた。オークは通常群れをなさない、それがまとまる時はB+ランクのキングが誕生した時だからだ。


「グオォォォ!」


剣が折れるまでオークを殺したエカーナは、殺すようにしたようだ。エカーナに棍棒が迫る。エカーナは観念して目を瞑った時、声が聞こえた。


「大丈夫ですか?」


見ると、男が立っていた。助かった、と思う前に男を怒鳴りつける。


「何をしている!早く逃げろ!」


そう怒鳴っている間にも、10体近いオークが2人を取り囲む。


「グオオオ!」


「危ない!」


オークが一斉に襲いかかり、エカーナが声を発した時、男の口が動いた。発した声は微かではあるが、エカーナには聞こえた。


雲霞くもがすみ


風が吹いた。直後、オークが血を吐き、崩れ落ちていくのをエカーナはただ呆然と立ち尽くし、見ていることしか出来なかった。


「大丈夫ですか?」


再び男がエカーナに声をかける。


「ああ、大丈夫だ…」


エカーナはそう返すしかなかった。


「なんじゃあ!こりゃあ!」


騒がしい声が聞こえた。男はその騒がしい声に返答を返す。


「オークの群れみたいですね」


「そんな、世間話するみたいに言われても…」


「?」


「いや、もうツッコまん…」


額を抑えながら登場したのはドワーフだった。それを見てエカーナは我に返り、慌ててお礼を言った。


「助けていただき、ありがとうございます。私はBランクの冒険者、エカーナです」


「気にしないで下さい。俺はCランクの冒険者、彪斗です」


「わたしはドワーフで炭鉱夫のダラスじゃ」


Cランク!?と、エカーナは内心の驚きを隠すことが出来なかった。オークキングが群れを率いたら、最低でもAランクには届く危険度だ。それをあっという間に皆殺しにした男がCランクだった現実が信じられない気持ちだった。エカーナの内心を他所に、男とドワーフはコントのようなやり取りを始めていた。


「ダラス?初めて聞いたな」


「初めて言ったからな!だいたい、依頼者と自己紹介もしない冒険者が何処にいる!」


「ここに」


ドワーフは呆れの表情を浮かべ、次に真剣な表情になり男に提案した。


「…まあいい、素材の剥ぎ取りはわたしがやっておくから、村人は頼んだ」


「分かった」


2人は、呆然としているエカーナと協力して村の救助を行い、崩れ欠けている大きな建物に村人と身を寄せ合って、夜を明かした。




後付け設定ですが、彪斗は空間魔法を空間倉庫だけ、使えます。容量は3㎥位です。

空間倉庫は多少魔法が使える人なら、使える位の難易度です。

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