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浮遊力に取り憑かれたら何かと捗った  作者: みきもり拾二
◆最終章 そして伝説に、俺はなる!
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【77】魔人再召喚!!

皇都(おうと)最終防衛シールド、屹立!」


 蔦壁(つたかべ)ロココの声が響き渡ると同時、皇都防衛ラインの城壁に半透明の青い壁が立ち昇る。


 凪早(なぎはや)ハレヤとサンリッドとスクワイアー、そしてガーゴイルたち以外は、屹立したその最終防衛シールドの内側に控えている。各国の将たちはそれぞれが皆、蒼竿銃(ブルーロッドライフル)を携え、片膝を付いていつでも放てる構えだ。


 胤泥螺(インディラ)は『彌吼雷(ミクライ)の刀』を握りしめ、霧冷陽(ムサビ)はその後ろで『彌吼雷(ミクライ)の鉾』を手にしている。


 皇都防衛ラインの城壁から少し離れた荒れ地には、ミュリエルによって大きな魔法陣が描かれている。サンリッドとスクワイアー、それに凪早ハレヤの三人が、その魔法陣を挟んで防衛ラインの城壁に相対するように控えていた。

 5体のガーゴイルたちは、ミュリエルによってその身体に天使文字(アークグリフ)が刻まれており、魔法陣から離れたところにそれぞれ散っている。


 他の連合軍の兵たちは、皇都防衛ラインに構えた陣や皇都城壁の上で、固唾を呑んでこれを見守っている。万が一、炎を纏った天空城が皇都防衛ラインを越えてきたなら、それは敗北と死を意味するだろうことを知りながらも、皆、手に手に武器を携えて、いざという時に備えているのだ。


 上空は、雲ひとつ無い青空が広がっている。丸い大きな姿を赤色に染めた夜映(やはえ)が、不気味な雰囲気を醸し出しながら、これを見下ろしていた。


 張り詰めた空気の中、ミュリエルが一歩進み出る。


「行きますわよ」


 ミュリエルは扇子をバッと開くと、舞を踊るかのようにヒラヒラと動かし始めた。



「天なる主宮(アーク)に 揺れたもう


  鮮やかなりし 焔の(きわ)


 夢 泡沫(うたかた)なりて 虚ろなり


  我が世と闇を つなぐ道


 (えにし)(とこ)に 刻みつけん────」



 和歌を詠むが如くの詠唱に、大きな魔法陣が黒い光を放ち始める。どこからか「ゴオ〜〜ン」と重い鐘の音が響き渡り、凪早ハレヤは、心にズシリと重い何かがのしかかって来る気がした。



宵闇(よいやみ)夜闇(よやみ)、深き闇、汝を縛る金鎖(かなぐさり)


 『囚われし霊魂の、鬼獣と化す(すべ)』を捧げたもう


 (はら)千切(ちぎ)りて ()の地にい出よ────!」



 突然、「ズドドドドドド!」と激しく地が唸り、魔法陣の紋様から黒い光が迸った! そしてそれは竜の如くうねりながら、舞い踊るかのように立ち昇っていく!



「────降臨! 灼焔魔(しゃくえんま)!!!」



 舞い踊る黒い光が「ギエエエエエエエエエエエエエ!」と気味の悪い叫び声を上げる! それに応えるかのように、魔法陣から真っ赤に燃える火柱が勢い良く「ズドーン!」と突き上げてきた!

 激しく燃える炎の中で薄黄緑色の光が収縮し、一瞬にして上空へと姿を消した! 


 「ズゴゴゴゴ」と腹まで響くような重低音に、皇都防衛ライン城壁がグラグラと揺れ、魔法陣の周囲に土煙が立ち昇る! 

 「ズゴン! ズゴン!」と岩が砕ける音が響き渡り、黒い光は竜の如く、真っ赤に燃え立つ火柱に纏わり付いて、耳を塞ぎたくなるほどの不気味な悲鳴を上げた!


「キィィィシャアァァァァァァァァァァァ!!!」

「来るわ!!!」


 蔦壁(つたかべ)ロココが錫杖を水平に構えると、その足元に緑の光を放つ魔法陣が現われる。



 一同が固唾を呑んで見守る中、炎を纏った天空城が、魔法陣を突き破るようにして姿を現した────!



 ズギュゥン! ズドドドドドドッッッ!!!


「うわっとっとお!!!」


 地表から天空城の大社が顔を覗かせた瞬間、熱光ビームが四方に向けて放たれた! 地表を穿ち、皇都最終防衛シールドを切り裂かんばかりに縦横する!


「やたらめったら撃ちまくりじゃない!?」


 さすがの凪早ハレヤも、『鬼蜻蜒(おにやんま)』のスキル任せでひょいひょいと交わすのが精一杯だ。


「隙あり!────破魔!猪突貫通槍(ちょとつかんつうそう)!!」

「────剛砕!猪突破岩撃(ちょとつはがんげき)!!」


 一瞬の隙を突いて、サンリッドとスクワイアーが、天空城に向けて高く跳んだ! まるで火のカーテンを開け放つが如く、炎のシールドを振り払う!


「おおおお! さっすが!……って、空理布(アリフ)さんだ!」


 驚嘆の声を上げる凪早ハレヤだが、炎のシールドは瞬時にその穴を閉ざしてしまう!

 一瞬、垣間見えた天空城甲板に、雨巫女髻華羽(ウズハ)真茱鈴(マジュリン)流那鈴(ルナリン)・皇子空風円(アフマド)に加えて、皇空理布(アリフ)の姿が確かにあった。


「げげげっ! 炎がすぐに回復しちゃうよ!! これじゃ突撃できないんですけど!?」

「攻撃を加え続けて!!」

「やるしかないですな!」

「おう!」

「キシェエエエエエエエエエエエエ!」


 天空城の周りを高速で飛び回る凪早ハレヤに、渦巻く混沌が奇声を上げる。天空城を覆う炎が荒れ狂い、熱光ビームが続けざまに(ほとばし)る。


「うっひょおおおおお、やっべええええええええええええ!!!」

「覚悟を決めて特攻しろ、ハレヤ!」

「むむむ、無茶言わないでよ〜〜! 焼き鳥になっちゃうよ!!」

「だったら少しぐらい矢を撃て! テメーの弓は飾りモンか!?」

「うひいいいいいい!!」


 肩に止まるグスタフがけしかけるが、それどころではない。天空城周辺を動き回るサンリッドとスクワイアーも、第二の攻撃の機会を得られずにいた。


「────精霊力増幅! マジカルアンプ!!!」


 逃げ惑う凪早ハレヤの耳に、ミュリエルの詠唱が木霊する。定位置で天空城の熱光ビームをひょいひょいと交わす5体のガーゴイルの間に、白い光のラインが現れて、五芒星を描き出した。


「さあ、これで精霊魔術の効果がパワーアップですわ!」

「すべての(ことわり)に背いて ()の者を灼熱の檻籠(おりかご)(とど)めん!

 ────マグマティック・スネア・ダブル!!」


 間髪を入れず、蔦壁ロココが精霊魔術を繰り出した!


 地表に「ズガガガッ! ズゴゴゴン!」と重い音が響き渡ったかと思うと、真っ赤に燃える溶岩の手が2本現われる! そしてガッシリと天空城の土台を鷲掴みにした!


「キシィィィィィィィィィ!!!」


 天空城の混沌が、怒気をはらんだ雄叫びを上げる! 黒い渦がうねるように膨らんで、天空城の土台下に巨大な火球が膨らみ始めた!


「ビームが止んだ! チャァァァァンス!!」


 この機を逃さず、三人が天空城に殺到する!


「────破魔!猪突貫通槍(ちょとつかんつうそう)!!」

「────剛砕!猪突破岩撃(ちょとつはがんげき)!!」

「────彌吼雷速撃砲(そくげきほう)!!!」


 サンリッドとスクワイアーが交錯し、さらに凪早ハレヤの放った雷の矢が「ズドン!」と雷鳴を轟かせて、炎のシールドを大きく切り裂く!


「ヒシャアアアアアアアアアアアアアアア!!」


 ズドオォォォォン!!!


 激しい悲鳴とともに、天空城の土台下の火球が猛烈な勢いで爆発し、蔦壁ロココの繰り出した溶岩の手が弾け飛ぶ! 熱風が吹き抜けて、土埃を巻き上げた。


 だが、引き裂かれた炎のシールドは大きな穴が開いたままだ! 甲板の様子が丸見えとなる。

 そこには、蒼竿銃(ブルーロッドライフル)を構える皇子空風円を守るように、雨巫女髻華羽と真茱鈴と流那鈴が両手を突き出し、防護シールドを展開する姿があった。周囲には、老兵たちが血を流して倒れ伏している。


 そして、真っ赤に燃える瞳に炎のオーラを纏った皇空理布が、炎に燃える剣を両手に詰め寄っていた!


 それだけではない! 双頭の黒い大型犬のような魔物が5匹、雨巫女髻華羽たちの周囲を取り囲んでいるのだ!

 口から鋭い牙を覗かせて、どす黒い炎を吐き出し、唸り声を上げている!


「あれは双頭黒妖犬(オルトロス)!!」

「髻華羽どの!!! 髻華羽どのおおおおおお!!」


 瞬間、一匹の双頭黒妖犬(オルトロス)が皇子空風円に襲いかかる! 皇子空風円がすかさず蒼竿銃を放つが、双頭黒妖犬(オルトロス)は横に飛び退ってこれを交わした!


「空風円さまは真茱鈴がお守りしますなのです!」


 蒼竿銃の弾丸を込め直す皇子空風円に向かって、再び飛びかかろうとする双頭黒妖犬(オルトロス)の前に、真茱鈴が立ちはだかる。


「突撃しろ、ハレヤ!」

「よおおおおおおおおおしっ!!!」

「私たちも行くぞ、スクワイアー!」

「おうよ!!」

「大人しくしなさい!────マグマティック・スネア・クインテット!!」


 再び錫杖を振るう蔦壁ロココの声に応えて、天空城の周囲に4本の溶岩の手が突き出てくる! 即座に天空城を四方から掴み上げた!

 制止した天空城に、サンリッドとスクワイアーが再び飛び、凪早ハレヤが真横から突っ込んでいく!


「ヒイィィヒャアァァァァァァァッ!!!」


 怒気をはらんだ叫びを上げて、混沌が一気に膨れ上がる! 真っ赤な光がキランキランと不気味な輝きを放ち、辺りを染めた!!


「あぶねえ! 上に逃げろハレヤ!!」

「うひいいいいい!?」


 グスタフの声に、咄嗟に急上昇する凪早ハレヤ!


 その直下で、天空城から爆発音が轟いた!!!


 ズドオオオオオオオオオオオオン!!


「ぶはあっ!!!」


 爆風に煽られて、凪早ハレヤの身体が弾き飛ばされる。


 核爆弾でも落としたかのように、砂塵がキノコ雲となって立ち昇る。激しい熱風が四方へ走り、皇都防衛ラインに構える連合軍にも襲いかかった。


「……クッ……よくも……よくも、あたくしのガーゴちゃんたちを……」


 モウモウと煙が立ち込める中、ヘッドセットからミュリエルの歯軋りする声が聞こえる。


「うっへええええ……サンリッドさんとスクワイアーさんは?」

「ヤツらは問題ねえ。地獄の炎でも死なねえ超脳筋(ちょうのうきん)だ」


 グスタフの言葉通り、雲の下には、2つの白い光が円を描いて動き回っていた。


 そして……。


 土埃が晴れると、再び炎のシールドに覆われた天空城が姿を現した。

 その天頂で、混沌がほくそ笑むかのように甲高い声を「ヒィィィ……」と小さく漏らしている。


「ははっ! 凄い魔力だが、熱光ビームを放つ余裕は無いようだな!」

「ああ、これだけの悪魔術(ラニギロト)を使ったんだ! 疲弊は免れないさ!」

「……お遊びはここまでですわ。皇都最終防衛シールドを解除しますわよ!」

「おお、一気に決めますか! 蒼竿銃兵(ブルーロッドスナイパー)、構え!!!」


 ミュリエルの言葉に、防衛ライン城壁が俄に色めき立った。




貴重なガーゴイルが……! 果たして炎のシールドは破れるのか!?

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