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浮遊力に取り憑かれたら何かと捗った  作者: みきもり拾二
◆最終章 そして伝説に、俺はなる!
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【69】援軍!?

「げげげっ、まだいたのか!!」

「あのような場にも兵を伏せていたとは……! すべて従者ロココどのの見立て通りとはいえ、迂闊だった!」


 凪早(なぎはや)ハレヤのヘッドセットから、皇子空風円(アフマド)の歯ぎしりが聴こえてくる。


 見る間に、城壁の魔人軍から火の玉が放たれる! 「ドーン! ドォォーン!」と爆炎をあげて、混乱する連合軍の中で弾け飛んだ!

 あちらこちらで悲鳴があがり、眠っている十痣鬼(とあざおに)は抵抗する間もなく火の海に包まれていく。


 そしてそれを合図に、正面門の大鬼兵(オーガ)三眼黒妖象(ギリメカラ)たちが突撃してくる!


「大損害だあああああああ!! 早くあいつらをなんとかしないと!!」


 天空城に向かいかけた凪早ハレヤだが、慌てて皇都(おうと)城壁へと向きを変えた。


「『ダメよ、凪早くん! 天空城が優先!』」

「えええっ! で、でもさ〜!」


 蔦壁ロココに呼び止められて、思わず停止する凪早ハレヤ。キョロキョロと天空城と皇都城壁を交互に見やり、右往左往してしまう。


彌吼雷(ミクライ)どの、ここは我らに任せるのだ! 『彌吼雷(ミクライ)の刀』と『彌吼雷(ミクライ)の鉾』ならばあの火の玉も斬れる! 杜乃榎(とのえ)兵は総員、魔人軍を迎え撃つ構えを取れ!」


 皇子空風円の声に気勢を上げる杜乃榎兵だが、やはり、混乱する連合軍の中で動きがバラバラだ。


「道を開けるか、我らに続くか、心を定めよ!」

「お主ら、同士討ちをしてる場合ではないぞ!」

「敵は魔人軍だ! 加勢が来てるのがわかんねーか!?」

「あわわ、みんな侵攻できないじゃ〜〜ん!」

「各国の将は十痣鬼(とあざおに)の身柄を確保! 皇都防衛ラインまで退却されよ!!」


 皇子空風円の呼びかけも、左から右へと素通りの様子だ。


 それを嘲笑うかのように、小鬼兵(ゴブリン)を背に乗せた三眼黒妖象(ギリメカラ)たちが人を踏みつけ弾き飛ばし、怒涛のように駆け抜けていく。


 先ほどの強風のせいで、天空城は今にも地表に降り立たんばかりとなっている。三眼黒妖象(ギリメカラ)の群団は、それ目掛けて一直線に駆けてくるのだ!

 しかもその背には大きなバリスタが二基ずつ載せられており、小鬼兵(ゴブリン)たちが天空城に狙いを定めていた!


「むう! ヤツらの狙いは天空城か!」

「ワシらの部隊が天空城防衛に回る! 胤泥螺(インディラ)午羅雲(ゴラクモ)は皇都城壁へ急ぐのじゃ!!」

「天空城は絶対死守!!」


 皇子空風円が言い放つと同時、「ターン!」と乾いた銃声が響き渡る。すると、先陣を切っていた三眼黒妖象(ギリメカラ)が、大きな耳をバタつかせ、悲しげないななきを上げてもんどり打って倒れ伏した。

 だがしかし、その後ろから二頭三頭と迫りきている!


「うひいいい、空風円さんの蒼竿銃(ブルーロッドライフル)だけじゃ多勢に無勢だあああぅぁぁぁ!」

「彌吼雷どの! 早う天空城へ戻られよ!! ワシらで押し返すのじゃ!!」

真茱鈴(マジュリン)流那鈴(ルナリン)! 防護シールドは展開できるか?!」

「『防護シールドに精霊力を回している余裕がありませんなのです!』」

「『流那鈴、エネルギー注入に全力中なの……』」


 ヘッドセットから聴こえるみんなの声にも余裕が無い。


「うっひょおおお! やるっきゃないぜ〜〜〜!!」


 凪早ハレヤが心を決めて、急いで天空城へ向かおうとした、その時だった────!


「へっ!?」


 いきなり、凪早ハレヤの服の下から白い光が煌めいた! そして目の前に、白い渦が現われる!


「これって……!」


 蔦壁(つたかべ)ロココと共に異世界を渡る時のあの白い渦に違いなかった! 驚く凪早ハレヤの目の前で、白い渦の中から人影が飛び出してきた!


「はぁ〜〜〜い、あたくしの登場ですわ〜!」


 聞き慣れた明るい声と、軽やかに地表に降り立つその小柄な姿。ツインテールに結んだピンク色の髪の毛に、白いフリルと赤いリボンがいっぱい施された魔法少女のような衣装。そして、背中には虚ろに空を見上げる大きなクマのぬいぐるみ。


「────ミュリエルさん!?」


 ミュリエルは軽やかに地上に降り立つと、ポンポンと跳ねるようにステップを踏み、凪早ハレヤの方へとクルリと向き直ってみせた。


「このあたくしが、来て差し上げましたわよ〜ん♪ オーホッホッホッ!」


 相変わらずのペタペタした幼いしゃべり方で、扇子で口元を隠しながら高笑いをあげるミュリエル。その背後で、白い渦から次々に人影が飛び出してくる。


 赤いガーゴイル1体に、4体のくすんだ色のガーゴイル。そして、全身プラチナに輝く鎧を纏った二人の騎士がドスンと音を立てて地表に降り立った。


「ほっほう! 剣戟響き渡る戦場だ!」

「こりゃまた大混乱の様相ではないか!」


 プラチナ鎧の騎士は聞き覚えのある声だった。


「もしかして、サンリッドさんとスクワイアーさん!?」

「やあ、ハレヤさん。お待たせしてしまったかな?」

「ミュリエルさまの従者としては、お一人で戦地に向かわせるわけには行きませんのでな!」


 揃って兜の(ひさし)を上げて親指を立てるサンリッドとスクワイアーの向こうで、魔人軍の放った火の玉が「ドーン」と爆炎を上げた。


「うっひゃあああ! 悠長にしてる場合じゃないんだ! ミュリエルさん、今、もの凄い大ピンチなんだ!!」

「見ればわかりますわ。しっかし何ですの〜、この暑さは? 太陽光で焼け焦げそうですわ」


 ゴキゲンな様子だったミュリエルが急に顔をしかめる。


「あっちで光ってるヤツ! 魔人の魔術らしいんだ! 暑い上に、みんなの頭の中がやられちゃうみたい!」

「あら、そうですの。悪魔のよくやる『暗惑囚牢(ダークネスドミネイター)』ですわね」

「では、あちらで刀を交えている人間の兵たちは……」

「味方同士の同士討ちなんだ! やめさせないと!」

「なるほど! 確かに紫色の目をしている!」

「『暗惑囚牢(ダークネスドミネイター)』に囚われている証拠ですわね」

「そして、あちらから向かってくる混沌の軍勢は、敵ですな!」

「そういうこと!」

「で、あそこに浮いてるデカブツが、例の天空城ですわね?」

「うんうん! あ、蔦壁もあそこにいるよ!」

「まあそうですの!? きゃ〜〜ん、ロココちゃ〜〜ん」


 いきなり、ミュリエルが天空城に向かって、両手をブンブン振りながらピョンピョンと飛び跳ねる。


「ミュリエルさん、ミュリエルさん! そんなことしてる場合じゃないから〜! 天空城も守らないとヤバイんだ!」


 天空城の周囲はすでに、三眼黒妖象(ギリメカラ)たちに取り囲まれていた。三眼黒妖象(ギリメカラ)がグルグルと周回するその背中で、小鬼兵(ゴブリン)が天空城に向かってバリスタを撃ちまくっているのだ。天空城の土台にも社にも、槍より大きな矢が突き刺さっていた。

 霧冷陽(ムサビ)率いる蒼竿銃兵(ブルーロッドスナイパー)と、皇子空風円の蒼竿銃(ブルーロッドライフル)で抵抗を試みているが、多勢に無勢の様相だ。


 皇都城壁からの攻撃は苛烈さを増し、止む様子もない。火の玉が雨あられと降り注ぐ中、大鬼兵(オーガ)たちが連合軍の兵たちを金棒で薙ぎ飛ばしていた。

 ようやくに前線に辿り着いた胤泥螺(インディラ)が鬼神の如く、大鬼兵(オーガ)を2体3体と切り裂いていくが、城壁からの魔人軍の勢いが凄まじいようだ。


「オホホ、よろしくってよ。状況はよくわかりましたわ」


 腰に手を当て、キリッと眉を結んだミュリエルの前で、サンリッドとスクワイアーが跪く。


「サンリッドとスクワイアーは前線へ、ガーゴちゃん部隊は天空城周辺へ! 混沌は残らずすべて摘み取りますわよ!」

「はっ!」

「御意に!」



「────我ら、天使の使徒たらんことをあまねく衆目(しゅうもく)に示すのです! お行きなさい!」



 ミュリエルがサッと手を横に薙ぐと同時、ガーゴイルが翼を大きく開き、雄叫びを上げた。翼が白い光を纏って、煌々とした輝きを放ち始める。


「んじゃまあ、久しぶりにガツーンとやりますか」

「ふっふっふっ、腕が鳴る! 行くか、サンリッド!」


 拳を突き合わせると、サンリッドは庇をパタリと落とした。


「────セイクリッドランサー、起動!!」

「────ディバインハンマー、装着!!」


 二人の声に、プラチナ鎧がそれぞれ白い光を放ち始める。そして、どデカいランスと盾がサンリッドの前に現われ、スクワイアーの手には巨大なハンマーが握られていた。


 さらに二人の身体は、地表よりわずかに浮いて土埃が舞い上がっていた。


「正義は我らにあり! いざ、突撃!!!」







ミュリエルさんが来たああああああ!!www

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