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浮遊力に取り憑かれたら何かと捗った  作者: みきもり拾二
◆最終章 そして伝説に、俺はなる!
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【67】魔人軍掃討へ!

「総員、出撃! 魔人軍を掃討!」

「待ってました!」

「任せるがいい!」

「参る!」


 天空城台座の大扉が重い音を軋ませながら開け放たれると、歓声とともに胤泥螺(インディラ)たちが撃って出た。


「狙いは魔人軍! 我に続けえっ!!」

「ブフォオオオッ!!」


 言い放ちざま、鼻息荒く切りかかってきた牛頭妖鬼(ミノタウロス)を、『彌吼雷(ミクライ)の刀』を手にした胤泥螺が一太刀のもとに切り倒す! 真っ二つに切り裂かれた牛頭妖鬼(ミノタウロス)は、電撃に身体を打ち震わせると、黒い靄となって掻き消えた。


 その後ろから襲いかかってきた大鬼兵(オーガ)を、蒼竿銃兵(ブルーロッドスナイパー)が狙い撃つ!


 ターンと乾いた銃声のあと、大鬼兵(オーガ)の身体にぼこぼこと泡のようなコブが浮き上がる。そのコブが「バシャリバシャリ」と破裂したかと思うと、大鬼兵(オーガ)は黒い靄となって霧散した。


「見ろ、オレの蒼竿銃(ブルーロッドライフル)! 魔人軍など一撃よ!!」

「魔人軍、恐るるに足らず!」

「行け! 我ら杜乃榎(とのえ)の力を示すのじゃ!!」


 三方に別れて突撃していく胤泥螺(インディラ)霧冷陽(ムサビ)午羅雲(ゴラクモ)の部隊が、次々と魔人軍に襲いかかる。魔人軍は悪魔術(ラニギロト)を使おうとするが、思うように混沌の黒い渦が発生しない様子だ。


 抵抗むなしく、次々と黒い靄と化して消えていく。



「各国の将よ! 魔人と狭紆弩(サウド)巨石兵(ゴーレム)の力にて、貴殿らもろとも天空城を吹き飛ばす計画にあったのだ! これでもなお、魔人に味方するか!?


 今、天空城の力で魔人の妖力は封殺された!


 十痣鬼(とあざおに)は眠っているだけである! 必ずや元の人へと戻してみせよう!


 ならば魔人に肩入れする理由も無し!」



 皇子空風円の掲げる蒼竿銃(ブルーロッドライフル)の先、青い光球が煌めいた!



「────時は来たれり! 今こそ、魔人討伐の時っ!!!」



 大砲のごとく「ズドーーン!」という音を響かせて、青い光が弾け飛ぶ。


 その光の眩さに、連合軍が我に返ったようにざわめき始めた。その間を、胤泥螺たちが風のように駆け抜けていく。


「五体の巨石兵(ゴーレム)から、また混沌反応なのです!」

凪早(なぎはや)くん、超虹雷砲(スーパーグライキャノン)を! 髻華羽(ウズハ)さんは、加護力の通常発動を!」

「はい!」

「オッケイ! 任せてよ!」


 天空城を少し浮上させながら、凪早ハレヤが『気怠い午後の公爵夫人』を巨石兵(ゴーレム)に向けてしっかりと構えた。『抗魔誘眠(こうまゆうみん)(さざなみ)』に第二の火球を打ち消された巨石兵(ゴーレム)は、すでに第三の火球を練り上げ始めていた。


「五体まとめて仕留める! 彌吼雷(ミクライ)九方撃(くほうげき)!!」


 凪早ハレヤの声に応えて、天空城の土台付近に9つの青い光球が膨らみ始める。その光景に、連合軍からどよめきがあがる。


「あ、あれが噂に聞く、天空城の超虹雷砲(スーパーグライキャノン)……!」

「あのようなものこちらに向かって放たれたら……」


 どよめきを耳にした凪早ハレヤは、思わずニヤけてしまう。皇子空風円の狙い通り、天空城に対する畏怖の念を掻き立てているようだった。


「いっけえええええええええええっ!!!」


 引き絞った弓を解き放つと、光球は五体の巨石兵(ゴーレム)めがけて一直線に飛んでいった。


 ズドン! ズドドドドドン!


 土煙と共に爆炎が立ち昇る。五体の巨石兵(ゴーレム)は抵抗する間もなく塵と化した。


彌吼雷(ミクライ)の力が、巨石兵(ゴーレム)も打ち倒した! 勝運、我ら杜乃榎にあり!!」


 皇子空風円の声に、杜乃榎兵たちが怒号を上げる。


「こ、これが天空城と雨巫女、そして彌吼雷の力か……!?」

十痣鬼(とあざおに)は本当に治るのであろうか?」

「魔人は我らを虫けら同然に扱ったのだ!! 卑劣なる裏切りぞ!!」


 連合軍の間で広がる声。


「我らの敵は魔人なり! 悪しき力に頼るべからず!!」

「今こそ我ら力を合わせ、魔人を討伐するのだ!」

「我らの初志は魔人討伐なり!」


 (せき)を切ったように、あちらこちらで付近の魔人軍へと斬りかかり始めた。

 悪魔術(ラニギロト)さえなければ、魔人軍とてただの歩兵に過ぎない。


「各国の将よ、我らに続け! 杜乃榎の蒼竿銃(ブルーロッドライフル)は魔人を射る光なり!」

「眠れる十痣鬼(とあざおに)を魔人軍から守るのだ!」


 情勢は、もはや天空城と皇子空風円に傾いたのは明らかだった。


「ひとまず、第一作戦成功かな〜?」

「そうみたい。髻華羽さん、悪魔術(ラニギロト)封殺のために、加護力の発動を続けて」

「はい、おまかせくださりませ」

真茱鈴(マジュリン)流那鈴(ルナリン)も、エネルギー注入と防護シールドの管理を」

「はいなのです!」

「流那鈴、自信MAXなの……」

蔦壁(つたかべ)〜、俺も撃って出ていいかな〜? 端っこの方の魔人軍の掃討にさ〜」


 見ると、大軍勢の端っこの方では、黒い靄が点々と渦巻いているのが見て取れた。『抗魔誘眠(こうまゆうみん)(さざなみ)』の影響がやや薄く、雨巫女の加護力もまだ届いていない様子だ。


「うん、お願い。時々、天空城を持ち上げに来てね」

「ほいよ〜」


 ビッと親指を立てると、凪早ハレヤはいそいそとグローブとブーツを脱ぎ始めた。

 胤泥螺たちが次々と魔人軍を討ち倒していく様を見ながら、チラリと防衛ラインの城壁に視線を向ける。

 まだ薄く防護シールドが発動されているその根元、城門の上に紅梨沙理が倒れているのが見えた。


「(『抗魔誘眠の漣』で、紅梨沙理さんも眠っちゃったのかな〜?)」


 そんなことを思いつつ、『彌吼雷の間』の重いハッチを押し開き、操舵室へと飛び出した。操舵室は、雨巫女髻華羽と真茱鈴と流那鈴、そして蔦壁ロココが情勢を見守りながら天空城の操作に余念がない様子だ。


「ちょっと行ってくる〜」

「うん」


 蔦壁ロココにひと声かけて、操舵室を飛び出していく。


 天空城の大社を大急ぎで駆け抜けて、甲板に踊り出る。

 皇子空風円と目が合うと、親指をビッと立てた。すると皇子空風円が、ビッと親指を立て返して見せた。


「はっはは〜〜! 勝利は目前!」


 心も軽く、『気怠い午後の公爵夫人』を構えると、凪早ハレヤは天空城から飛び出していく。


 眼下に広がるは、魔人軍に打ち掛かる連合軍と胤泥螺たちだ。三方向に別れた杜乃榎の三部隊は予定通り、天空城を中心に、卍を描くようにグルリと方向転換しつつ進撃している。彼らを止められる魔人軍はいないようだ。


「魔人よ、早く出てこないと、ヤバイんじゃないの〜?」


 思わずニヤニヤしながら、凪早ハレヤは『気怠い午後の公爵夫人』に矢をつがえた。


「俺は彌吼雷(ミクライ)! 我が『気怠い午後の公爵夫人』のお導き! 受けてみよ〜!」


 言い放つと、連合軍と刃を交えている魔人軍の黒套呪術師(ダークシャーマン)めがけて弓を引いた。


「彌吼雷速撃砲!」


 「ズドーン!」と雷鳴を上げて、凪早ハレヤの放った光の矢が、黒套呪術師(ダークシャーマン)を貫いた。電撃に打ち震えながら黒套呪術師(ダークシャーマン)は声もなく倒れ伏す。そして黒い靄となって霧散した。


「おおおお! あれが彌吼雷!?」

「伝説に違わぬ凄まじさ!」

「あっはは〜! まだまだいっくよ〜〜!!」


 今や味方となった連合軍の大歓声を受けながら、凪早ハレヤは黒套呪術師(ダークシャーマン)めがけて次々と矢を放っていく。


「彌吼雷どのに遅れを取るな!」

「オレたちの見せ所だ! ハレヤに続け!!」


 士気上がる杜乃榎兵に、連合軍も呼応する。

 すでに合戦の行方は定まり、残党を切り捨てたあとは、魔人を迎え撃つばかりに思えた────。



 が、しかし!



 ────突然、皇都の方から「ズドオォォォン!」と号砲のような爆発音が、大音響で轟いた。






うわあああ、なんか来たあああ?

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