表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
浮遊力に取り憑かれたら何かと捗った  作者: みきもり拾二
◆最終章 そして伝説に、俺はなる!
61/84

【60】最終決戦軍議

「ひと思いに、超虹雷砲(スーパーグライキャノン)でぶっ飛ばしてやったらどうです?」


 凪早(なぎはや)ハレヤが撮影してきた映像をモニタースクリーンで見返しながら、午羅雲(ゴラクモ)がニヤっと笑った。蔦壁(つたかべ)ロココによる解析処理が施された映像には、魔人軍と連合軍が、入り混じるようにして陣を構えている様子がハッキリと見て取れた。


 今は、天空城操舵室で、合戦に向けた作戦軍議中だ。


「このような密集陣形に向けて超虹雷砲(スーパーグライキャノン)を放ったなら、我らの勝利は近いが、連合軍の大損害は免れぬじゃろうな」

「此度の戦は、勝てば良いだけの(いくさ)ではござらん。魔人の手より杜乃榎(とのえ)を取り戻し、なおかつ周辺国との調和をも取り戻す戦いにござる」

「うむ、胤泥螺(インディラ)の言う通り。連合軍に損害を与えるような真似はすべきではないだろう。首尾よく勝利に辿り着いたとしても、今後に遺恨を残しかねない」

「それがヤツらの狙いじゃろうて。連合軍と皇都(おうと)を盾にすれば、ワシらが超虹雷砲(スーパーグライキャノン)を使うのを躊躇するであろう、とな」

「フフッ、狭紆弩(サウド)の考えそうな見え透いた手だ」

「反面、連合軍はあの場より身動きが取れないとも言える」

「討って出る必要もない、ということにござろう。我らの兵糧は今まさに、兵たちがすべてを平らげている最中にござる……」

「天空城の超虹雷砲が使えない上、短期決戦已む無しとなると、我々は捨て身の白兵戦を挑むしか無い、ってわけですね」

「そうなれば多勢に無勢! 如何にワシらが獅子奮迅の働きを見せ鼓舞しようとも、兵士たちの士気を保つのは容易ではあるまいて!」

「さらに防衛ラインの城壁までござる。真正直に正面から挑むとあらば、弓矢と石礫の雨あられでござろう」

「無理無茶無謀な白兵戦は、ヤツらの手に落ちたも同然ってわけですか」

「うむ。全ては狭紆弩と父上の計画通り、ということだ」


 皇子空風円(アフマド)の言葉に、操舵室がしんとなる。左舷と右舷の操舵席にそれぞれ控える真茱鈴(マジュリン)流那鈴(ルナリン)も、不安げな表情を浮かべていた。


「ハハッ、まあ難しい戦い方を選ぶのは勝手ですがね。オレはコイツさえ派手にぶっ放せるなら、それで構いませんよ」


 午羅雲は蒼竿銃(ブルーロッドライフル)の銃身をスラリと撫で付けると、モニターに映る魔人軍に向けて構えてみせた。


「この状況では、午羅雲さんの蒼竿銃(ブルーロッドライフル)はとても重要な戦力だと思う」


 蔦壁ロココの言葉に、皇子空風円が頷く。


「魔人の下僕を一撃の下に討ち倒せるのは、『彌吼雷(ミクライ)(ほこ)』に『彌吼雷(ミクライ)(かたな)』、そして『蒼竿銃(ブルーロッドライフル)』だけであろう」

「中でも蒼竿銃(ブルーロッドライフル)は高火力な上、誰にでも扱える万能さがござる。魔人軍を討ち倒す主力にござろう」

「まあ、弾がある限りはね」


 皆に褒め称えられて、午羅雲が少し得意気に鼻の下をこすってみせる。


「でもさ、そう考えるとさ〜、アイツらの存在がヤバイよね」


 のんびりとした声を上げながら、凪早ハレヤがモニターの一点を指さした。


「ほら、あそこに魔人軍の黒套呪術師(ダークシャーマン)たちがいるじゃない? アイツらがさ〜、小鬼兵(ゴブリン)をどんどん呼び出しちゃうんだよねぇ〜」

「見たことのない魔物を呼び出す可能性もあると思う」

「ハハハッ、そうなるとさすがに弾がいくつあっても足り無さそうだ。まずはあの黒套呪術師(ダークシャーマン)ってヤツらから仕留めなきゃなんない、ってことですかね」

「それは敵も承知しているのでござろう。周囲を屈強な者共で固めているようにござる」


 胤泥螺の言う通り、一人の黒套呪術師(ダークシャーマン)に対して、その周囲を5体の大鬼兵(オーガ)と2体の牛頭妖鬼(ミノタウロス)が取り囲んでいる。


「近づくだけでも厄介そうじゃのう!」

「しかも悪いことに、連合軍の合間に分散して配置されている。……こりゃ、ひとつを撃ち倒しても、他方で増やされるって感じですかね」


 自虐的な笑みを浮かべて首を横に振る午羅雲の横で、胤泥螺と霧冷陽(ムサビ)が揃って唸り声をあげた。


「魔物の呼び出しって無制限なのかな〜?」

「ううん、そんなことは無いと思う。それでも、今の20倍から30倍に増えてもおかしくないわ」

「えええっ、そんなに増えちゃうんだ?……だったら、今のうちに増やしちゃえばよくない?」


 奥の席で真茱鈴と流那鈴が、凪早ハレヤの疑問に「そうだそうだ」と言わんばかりに頷いている。蔦壁ロココは静かに首を横に振ると、そっと口を開いた。


「彼らを軍勢として統制をするには、悪魔にも……魔人にも相応の強力な力が必要になるみたいだから」

「へええ〜、そうなの?」

「うん。彼らは粗暴な上に大食漢。手持ち無沙汰で空腹を持て余すようなことになれば、同士討ちすら始めるわ。勝手に徒党を組んで離脱を図る者もいたりするし……。世界を混乱に陥れたいのなら、それでも構わないと思う。でも、今は大軍勢でわたしたちを迎え撃つ必要があるでしょ? だからと言って、悪魔術(ラニギロト)を使って食を与えれば、今度はそれに集中して戦いを放棄しかねない」

「狂犬を大人しく待機させとくには、この数が適度ってわけですか」

「悪魔も案外、メンドーなんだね」

「悪魔たちの住まう世界は無法地帯。各々が自由気まま、好き勝手に思いのままを悪魔術(ラニギロト)で描き出すの。衝突すれば、悪魔術(ラニギロト)の強い方が勝つ完全な実力主義。だから考えが違えば、ただひたすらに分裂していくだけ……」

「だからこそ我らが相手にしている魔人は、統制のとれている今、慎重に事を進めているのだな?」

「うん、そうだと思う。上手くすれば、もっともっとたくさんの霊魂を手に入れられると考えているんだと思うの」

「苦々しいことじゃ! 我らの国が、魔人の気に召す状況にあるなどと!」


 地団駄を踏む勢いの霧冷陽が、やり場のない怒りに顔を歪める。


「うむ、その怒りは魔人とその軍の掃討に向けようぞ」

「おうよ! 魔人め、このワシの目の前に現れたなら、即刻にその首を締め上げてやりましょうぞ!」

「ハハハッ、オヤッサンの元気には恐れ入る。張り切りすぎて息切れしないことを祈ってますよ」

「老骨に鞭打つにも限度があるでござろう。暴れ牛をあしらうが如く、敵兵に手玉に取られぬよう」

「なんじゃと、貴様ら!?」


 午羅雲と胤泥螺に目を剥く霧冷陽の様子に、皇子空風円も苦笑を隠せない。雨巫女髻華羽(ウズハ)もどこか微笑みながら、「まあまあ」と霧冷陽をなだめた。


「従者ロココどの、その呪術師についてひとつ確認させてほしい」

「うん、なに?」

「好きに軍勢を呼び出せるとあれば、兵法として軍勢を別の場所に伏せておくのも容易と考えるが……そのようなことも想定すべきだろうか?」

「うん、それはあるかも。ここに映っていない場所に、黒套呪術師(ダークシャーマン)たちを伏せているかもしれないわ」

「要は、ここに映ってるヤツらに全力で当たっていると、こちらが疲弊したところを見越して難敵が現れる可能性もある、ってことですね?」

「背後や側面を突かれるという可能性もあるじゃろうな」

「うん」

「先の魔人騒動の折は、ここまでの軍勢にはならなんだが……」

「今回の魔人は、すでに相当量の霊魂を取り込んでいるんだと思う。取り込んだ霊魂は、魔人の力を増幅させる効果があるから」

杜乃榎(とのえ)の民だけではなく、連合軍の中にも相当数の十痣鬼(とあざおに)が紛れている、ということでございましょうか?」

「うん、そうだと思う」


 蔦壁ロココの言葉に、一同が食い入るようにメインモニターを眺め始める。


「……各国の違いはあれど、兵同士は皆同じ格好をしておる。この中から十痣鬼を見分けるのも一苦労じゃの。どれほどの数がいるのかさえも、見当もつかぬわ」

「すでに『疑心の濃霧』で満たされている様子……となりますと、十痣鬼は魔人の思いのままに動くに違いないでしょう」

「戦力がどこに潜んでいるやもしれぬ魔人軍に、今は敵なれど助けねばならぬ十痣鬼……負担が大きすぎるでござる」

「だが彼らはなんとしても、救わねばならない。おそらくだが、連合軍が魔人に味方する大きな理由の一つに、『十痣鬼は治せない』という思いがあるのではないか、と」

「それは言えてますね。特に西方の徒党や南方の貴族連中は、家族や仲間意識が強いですからね。皆揃って十痣鬼となっているのであれば、死なばもろともと思っていても不思議はないでしょう」

「東方の者たちは東方の者たちで、主君への忠義に厚い者たちばかり。主君が十痣鬼とあらば、死路を共に歩む決意でござろう」

「逆に言えばじゃ、『十痣鬼(とあざおに)が治せる』ことを証明できれば、連合軍も思い直すやもしれんのお」

「うむ、私はそう思っている」


 皇子空風円は力強く頷くと、鋭い眼差しを凪早ハレヤに向けた。


彌吼雷(ミクライ)どのは、『十痣鬼(とあざおに)は元に戻せる』と申されていたが、あてにして良いのかな?」

「およよっ」


 凪早ハレヤはいきなり話を振られて一瞬、戸惑った様子を見せたが、すぐさまビッと親指を立てて見せた。


「任せてよ!」


 満面の笑みの凪早ハレヤに、胤泥螺と雨巫女髻華羽が深く頭を下げる。霧冷陽も信頼しきった表情で顎をさすり、午羅雲は見ものだと言わんばかりにニヤッと口角を上げた。



 ◆



「ふむ。では、ひとまず整理しよう」


 皇子空風円(アフマド)はひとつ咳払いすると、キリッと眉を結んだ。


「ここまで確認したとおり、父上と狭紆弩(サウド)はこちらの出方を読んだ上で、このような布陣を引いているものと思われる。それを相手にするだけでも、すでに難しい局面にあることはよくわかった。だが我々は、困難を承知で、次の3つを達成しなければならない。これはこの合戦の大義であり、杜乃榎(とのえ)が果たすべき責務である」


 一同をゆっくりと見渡しながら、皇子空風円はそっと指を立てた。


「────1つ、連合軍への被害は最小限に。

  刃向かう者は切らねばならぬこともあろう。だがそれは我らの身を守るためであり、周辺国の兵の命を狙うものではない。できれば説き伏せて、我らの味方へと引き込みたい。


 ────2つ、十痣鬼(とあざおに)は元に戻す。

  元に戻す方法は、彌吼雷(ミクライ)どのに一任する。そのために必要な準備があれば教えていただきたい。我らはその準備と方法を遂行するのみ。


 ────3つ、天空城と雨巫女(あめみこ)の力を見せつける。

  此度の件は、天空城と雨巫女に対する不審が密かに広がってしまったことも一因と思われる。ならば周辺国に今一度、天空城と雨巫女の重要性を再認させねばならぬ。超虹雷砲(スーパーグライキャノン)は封印せねばならぬ状況だが、天空城の機動力、雨巫女の加護力などを大いに活かし、連合軍に脅威を与え、再び天空城と雨巫女の下に集うよう心変わりを促したい。


 以上だ。これらを達成するにはどのように戦を進めるべきか、皆の考えを聞きたい」


 皇子空風円が口を閉じると、天空城操舵室に静寂が訪れた。





すっごい面倒臭そうなんですけど、何かいい作戦はあるんですかね~?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ