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浮遊力に取り憑かれたら何かと捗った  作者: みきもり拾二
◆第三章 最強従者に、俺はなる!
53/84

【52】成長の跡


「ヒャッハー! 当たるかよ!!」


 ヒュンヒュンと飛んでくる石礫(いしつぶて)が、凪早(なぎはや)ハレヤの目にはまるでスローモーションの如く映り、どこをどう飛べば交わせるかが即座に見えた。

 見事に石礫の間をすり抜けて、クルクル飛び回る凪早ハレヤ。


 オーガたちは怒声を上げると、凪早ハレヤめがけて棍棒を振り上げた。


「鬼さんこちら〜、手の鳴るほうへ〜♪」


 鼻歌交じりでオーガたちの脇をスイスイとすり抜ける。

 オーガもホブゴブリンもまさにキリキリ舞い。同士討ちのような格好で味方を殴りつける者までいた。


 そこへ冒険者の先頭集団が雄叫びとともに雪崩れ込んでくる!


 ホブゴブリンとオーガの一団は一気に劣勢に立たされ、次々に打ちのめされていった。


「ここは任せとくか!」


 凪早ハレヤは素早く切り返すと、後方からノシリノシリとゆっくり前進してくるサイクロプス目掛けて飛翔し始めた。


「キイイィィィィシャアァァァァァッ!!!!」


 真っ直ぐに飛んでくる凪早ハレヤを威嚇するかのように、サイクロプスが大口を開けて奇声を上げる。熱い唇がめくれ上がり、大きな鋭い牙がキラリと光った。目は血走って漆黒の瞳がギラギラと憎悪の炎をまとっている。

 そしてサイクロプスの奇声に、頭上の黒い靄が同調するように急激に膨らんで、悲鳴をあげた。


「ハハハッ! お得意の火の玉攻撃かい? 撃てばいいじゃん!!」

「シャオオオオオウゥゥッ!」


 サイクロプスの雄叫びとともに、単眼の大きな目が煌めいて、真っ赤なレーザービームが放たれる!


「レーザービームかよっ!!!」


 悪態をつきながらも、凪早ハレヤはいとも簡単にこれを交わしていた。


 サイクロプスの周囲を旋回する凪早ハレヤに向けて、サイクロプスが立て続けにレーザービームを放つ!


 ヒュンヒュンヒュン、と空を切り裂いてレーザービームが上空高くすっ飛んでいく。


「遅い遅い遅いィィ!!! 全然当たんないぞ!!!」

「キシャアアアアアヒャアアアァァァァァァッ!」


 嘲笑混じりに上昇する凪早ハレヤに向けて、サイクロプスが憎しみのこもった唸り声を上げる!

 頭上の黒い靄が悲鳴を上げて、一気に膨張したその時!


 ズドオオオオン!


「グシャアアウォオオォォゥ……!」


 爆発音とともにサイクロプスの巨体が大きく揺れる。

 背後から冒険者の放った火の玉が、サイクロプスの後頭部を直撃したのだ!


 一瞬、しぼみかけたサイクロプスの頭上の黒い靄が、悲鳴とともに再び膨らんでいく。

 冒険者たちを振り返るサイクロプスの目が、怒りに燃えて赤い光をキランキランと輝かせていた!!


「よそ見してると命取りだぜ!!」


 冒険者の魔術師たちが防御シールドを展開しているのを確認すると同時、凪早ハレヤは弓をサッと構えた。


「『古風な純心乙女』の導き! ────剛射!」


 シュワシュワと光球が膨らんで、バリバリと電撃が四方に迸る!


「キヒャアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァッ!」


 サイクロプスが冒険者の一団目掛けてビームを放つ! オーガやホブゴブリンもろとも巻き込んで、爆煙が上がった!


「隙だらけって言ってるじゃーーーーーーーん!!!」


 瞬間、凪早ハレヤが矢を解き放つ!


 ズドン!! と轟音が轟いて、サイクロプスめがけて稲妻が走った!


 稲妻は狙い過たず、サイクロプスの頭を吹っ飛ばす! ビチャリとドス黒い液体をまき散らしながら、巨体がバランスを崩して大きく前のめりに揺らぐ。そのまま地面に倒れ伏すかに見えたが、ドンと拳と膝を付いて踏ん張った!


 その上で渦巻く黒い靄が、一際大きく悲鳴を上げる!


「ヒイイイイイイィィィィィフウウウウゥゥゥゥゥゥ!!!」

「頭ふっ飛ばされても、まーだ死んでないってことね!!」


 すばやく弓を引き絞る凪早ハレヤ!


「全弾行くぜ! 雷エンチャ・フルバレットブースト!」


 「ブゥン!」と強風が吹き抜けて、凪早ハレヤの髪の毛が総毛立つ。制服の裾をバタバタとはためかせ、ビリビリと電撃が鏃の先で迸った。


「『古風な純心乙女』の怒髪天!」


 言うなり、矢を解き放つ!


 「ズガシャーーーーン!」と巨大な稲妻が轟いて、サイクロプスの身体が木っ端微塵に弾け飛んだ!


 電撃は地面を伝って四方に走り、防御に身を固める冒険者たちもうめき声をあげた。もうもうと砂塵が舞い上がり、螺旋を描いて緩やかに上空へと巻き上がっていった。


「あっら〜、みんなごめんね〜。無事かな〜?」


 スイーッと地表に向かって滑るように飛翔すると、冒険者たちがざわつきながら顔を上げた。どうやらみな、軽傷程度らしい。


 身体に纏わりついた砂塵を払うと「ひでえ目に遭ったぜ」「チッ、仕留められたか」とか口々に言いながら、ポーションを飲んだり回復魔法を唱えたりし始めた。さすが命知らずの猛者たちといったところだろう。


 やがて砂塵が晴れた向こう、城壁から大歓声があがった。



 ◆



 『フラワリア』に来てから3日目────。


 溶岩溜まりが顔を覗かせる地下洞窟の奥深く。

 凪早(なぎはや)ハレヤはレッドルビードラゴンと対峙していた。


彌吼雷(ミクライ)九方撃(くほうげき)!」

「ゴハアアアアアアアア!!!」


 凪早ハレヤが旋回しながら放った9本の光の矢に向けて、レッドルビードラゴンが咆哮をあげる。咆哮の波動がパパパパパと光の矢を食い止めて、電撃を四方に走らせる。


 しかし9本のうち1本だけが咆哮を掻い潜り、レッドルビードラゴンの鱗に突き刺さった!


「ギヒャアアア!」


 小さく走る電撃に、怒りの声を上げるレッドルビードラゴン。しかし、さほどダメージではないのか、すぐに凪早ハレヤを憎々しげに睨みつけ始める。


 もう何度目か、同じ事の繰り返しだ。ちょこちょことダメージは与えているだろうが、決定的な一撃を加えられずにいる。


「来いよ! ブレス攻撃!!」


 凪早ハレヤは挑発するようにレッドルビードラゴンの周囲を大きく旋回しながら、弓を横に構えた。


 レッドルビードラゴンは、黒光りする溶岩石に大きな鉤爪を食い込ませ、コウモリにも似た翼をバサバサとはためかせた。熱風を巻き起こし、凪早ハレヤの動きを止めようとでもするかのように。


 しかし乱気流の発生するレッドルビードラゴンの周囲を、凪早ハレヤは苦もなく飛び回る。


「その手はもう食わない、って!!!」


 嘲笑する凪早ハレヤに腹を立てたかのように、レッドルビードラゴンの胸の下、煌々と輝く赤い大きな宝玉がヒュルヒュルと音を立てて光り始めた。


「『凪早くん、来るわ!』」


 グスタフとともに、地下道脇から見守る蔦壁(つたかべ)ロココが声を上げる。


「よぉーーーーしっ! 今度こそ仕留める!!! 彌吼雷剛天弾(ごうてんだん)!」


 キランと白い光が煌めいて、凪早ハレヤの構える弓の前で、電撃を迸らせながら光球が膨れ上がった。


「ゴハアアアフオオオオオ!!!」


 レッドルビードラゴンは長い首をくねらせて、飛び回る凪早ハレヤを慎重に睨めつける。そして鋭く尖った凶悪な牙の並ぶ大きな口を少しだけ開くと、抑えきれない炎がその口端からボウボウと音を立てて漏れ始めた。


 その喉の奥では、真っ赤に燃える溶岩にも似た炎が渦巻いているようだ。


「来い!」


 瞬間、レッドルビーラゴンの胸の宝玉から赤い光の輪が発生し、一気に周囲に広がった!


「ドガアアアアアアアアッ!!!!」


 雄叫びとともに、レッドルビードラゴンの口から真紅の炎のブレスが放たれる!


「轟け雷鳴! 切り裂け炎!!」


 炎のブレスを迎え撃つようにして、凪早ハレヤが弓を解き放つ!


 迫り来る炎のブレスを切り裂いて、光の矢がレッドルビードラゴンの口蓋を撃ち抜いた!


 「ズドン!」という衝撃音のあと、「ズガシャアアアアアン!」と激しい雷鳴が轟いて、レッドルビードラゴンが大きく顔をのけぞらせる!


「グガアアァァグワアアアアアアアアアアア……」

「もう一丁!! トドメだ!」


 凪早ハレヤは四方に飛び散るブレスの熱風に身体を煽られながらも、『鬼蜻蜒(おにやんま)』の空中姿勢制御力で姿勢を保ち、素早く弓を構えた。


「彌吼雷速撃砲(そくげきほう)!!!!」


 言うなり、シュンと光の矢を解き放つ! 青い一筋のレーザービームが煌めいて、レッドルビードラゴンの長い喉元を追い打ちの如く撃ち抜いた!


 一瞬の間のあと、レッドルビードラゴンの全身に電撃が駆け巡る!


 激しく全身を戦慄(わなな)かせると、レッドルビードラゴンの身体がグラリと揺らめいて、大きな両翼が力なく垂れ下がり、前のめりに倒れこんだ。


 ズダアアアアアン……。


 地下洞窟いっぱいに地響きが鳴り渡り、レッドルビードラゴンの目から生気の灯火が消えた。

 凪早ハレヤの脳裏にファンファーレが鳴り響き、周囲で花火が打ち上がる。左手甲の数字は『55』になっていた。


「ふうっ! なんとか勝ったぜ!」


 ゴーグルを上げて親指をビッと立てる凪早ハレヤ。


 地下道から蔦壁ロココがレッドルビードラゴンの亡骸に駆け寄って、そっと、その鼻面に触れる。そして凪早ハレヤの方を見上げると、大きく頷いた。





これはもう戦闘機ですわ

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