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浮遊力に取り憑かれたら何かと捗った  作者: みきもり拾二
◆第三章 最強従者に、俺はなる!
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【43】天使のシステム

「過去に戻ってからまた異世界に??」

「うん」


 凪早(なぎはや)ハレヤはパンを口いっぱいに頬張りながら首を傾げた。

 今は、食卓を囲んで、三人で夕食をとっている。


 夕食を元気いっぱいに掻き込みながら、蔦壁(つたかべ)ロココから『ベースポイント』の仕組みについて説明を受けていたのだが、『過去に戻れる』という部分がどうしても理解できないらしい。


「ごめん、意味が分かんな〜〜い」

「これだから、低能な輩は本当に困りますわね」


 「本当に」の部分に力を込めながら、スープをすくったミュリエルが、ニヤッと口の端を吊り上げる。

 そんなミュリエルに構わず、凪早ハレヤはピッと人差し指を立てた。


「もう一回確認していい?……ここでエキスパートランクにランクアップとか、サブクラス取得とか準備をやって、それから俺たちの元の世界に一度戻って、そこからレベルアップのために異世界に飛ぶ、ってことだよね?」

「うん、そういうこと」

「で、その異世界で3日ほど過ごしてたら、髻華羽(ウズハ)からの召喚ゲートが開いて、戦闘中の地下牢に戻れる、と?」

「うん、合ってる」

「ふあ〜〜〜?」


 自分できちんと説明できたにもかかわらず、凪早ハレヤは再び首を傾げた。その呆けた表情に、蔦壁ロココは苦笑せざるを得なかった。


「細かいことは気にならさない方がよろしいんじゃありませんこと? 異世界ウォーカーの利点を活かす事に関しては、ロココちゃんにお任せしておけばよいのですから。それに、どうせこの一件が終われば、従者(アシスタント)契約も解除なさるのでしょう?」

「えっ」

「えっ」


 ミュリエルの言葉に、二人同時に声を上げる。


「……従者(アシスタント)契約を続けられるおつもりですの?」

「んああ、どうするかなんてちっとも考えてなかったよ」

「えっと……」

「契約を解除して、ハレヤの世界から離れるのが一番ですわよ、ロココちゃん。なんでしたら、あたしのこの世界を拠点になさってもよろしくってよ」

「……うん、ありがと。この件が終わったら、ちょっと考えてみるね」

「やったぁ〜〜〜ん、ロココちゃんゲットですの〜♪」


 ミュリエルが尖った耳をピコピコ動かしながら、小さくガッツポーズしてみせる。背中に回したクマのぬいぐるみも微笑ましげだ。


「あはは、いいね〜。まあ俺は、今はとにかくレベルアップして、魔人を倒すことだけを考えるよ! その後のことはまた考えるさ!」

「うん、そうだね」


 元気よくビシッと親指を立てる凪早ハレヤの様子に、ミュリエルがまた不満気な顔になる。


「今はロココちゃんのアシストのために、レベルアップを目指すのは構いませんけど。異世界で英雄になろうだなんてこと、思わない方がよろしくってよ?」

「えええっ、なんで? っていうか、もう英雄に祭り上げられちゃったよ」

「まあ、なんてことでしょう」


 ミュリエルは眉をキッと潜めると、真面目な顔つきになった。背中にしがみつくクマのぬいぐるみは、少々困ったという表情だ。


「だって仕方ないじゃ〜ん。杜乃榎(とのえ)には言い伝えがあるらしくってさ〜、みんなその言い伝え通りの姿だって口を揃えて言うんだよ。俺が『なるなるなるよ〜ならせてくれ〜』って言ったわけじゃないもんね〜」


 口いっぱいに夕食を頬張りながら凪早ハレヤが不平っぽく漏らした。


「フンッ、どうだか……それで? その言い伝えとはどのようなものですの?」

「えっとね〜」


 思い出そうとする凪早ハレヤの横で、蔦壁ロココがそっと口を開いた。


「その者 群青(ぐんじょう)の衣を羽織りて 宙を舞い

 白き光の渦より 出づるなりけり


 そは彌吼雷(ミクライ)なり 虹色の双眸

 光明なる雷槌(いかづち)振るいて 悪を薙ぎ

 疾風の如く 魔を(はら)


 黒髪の従者 金色(こんじき)の錫杖振るいて 豊穣の地を指し示さん────」


「んああ、そうそう。そんな感じ。さっすが蔦壁、よく覚えてるよね」

「かなり昔からの言い伝えらしくて、杜乃榎国の各役職の『心構えの書』に必ず記載されてるの」

「へえ〜、そうなんだ」

「でもね、この言い伝えなんだけど……」

「おおお、なになに? 何か秘密でもあった?」


 凪早ハレヤが好奇心に目を輝かせる。蔦壁ロココは小さく微笑むと、そっとミュリエルを見た。


「あのね、長い前置きがあるの」

「あら……」


 ミュリエルと目配せするように視線を交わすと、二人揃って言葉を紡ぎだした。


絶界(ぜっかい)闇海(やみうみ)より(ほむら)立つ

  雷鳴告げる、乱世の暗雲


 対極(たいきょく)座して光雲(こううん)纏う天宮(てんきゅう)より

  聖舟(せいそう)、氷河を下りて、山紫水明(さんしすいめい)の清流と成す


 運流(うんりゅう)極まりて、大河に交われば

  順風帆に受け、豊穣の(その)に辿り着かん」


 チラリと、ミュリエルが蔦壁ロココの顔を伺う。

 蔦壁ロココは頷くと、一人、言葉を続けた。


(めい)に向かいし処女なる巫女よ

  あまねく衛宮(えいきゅう)虹玉(こうぎょく)、今、授けん

 竹林(ちくりん)()ゆる聖滝に、言霊(ことだま) 河底(かわぞこ)穿(うが)つ時、絶対運命の扉が開かれよう────」


 蔦壁ロココが言い終わると、ミュリエルはそっと目を閉じて肩をすくめた。


「なるほど、理解いたしましたわ」

「えええ、どういうこと〜?」


 凪早ハレヤ一人、置き去りだ。そんな凪早ハレヤに、蔦壁ロココが微笑みかける。


「あのね、これは天使のシステム『絶対運命』なの。天使が仕掛けた、絶対に抗うことのできない運命の予言」

「なにそれ? そんなものがあるんだ?」

「うん。異世界ウォーカーも悪魔に対抗するための天使のシステムのひとつだけど、『絶対運命』も同じようなものだと思う。異世界ウォーカーが誕生する前から、天使は『絶対運命』を仕掛けることで、悪魔の攻撃を防いでたみたい」

「その世界の法則が崩れそうな時、もしくは崩れた時、天使は法則の作り出す運流を束ねて世界の修復を試みるのですわ。悪魔のもたらす混沌に遮られることなく、法則のサイクルが淀みなく流れ続ければ、必ずその予言通りに帰結いたしますのよ」

「へええ〜。だから杜乃榎国の彌吼雷再来の予言が、ピッタリバッチリ的中したってこと?」

「まあ、そういうことになりますわね。古くからの言い伝え、ということでしたら、随分前に天使がその地に訪れたということでしょう」

「うん。もしかすると、杜乃榎で『古の彌吼雷』と伝えられている人物が、天使だったのかも」


 凪早ハレヤは口をモグモグさせながら、「ふ〜ん」とばかりに頷くしか無かった。







対魔王防衛システムとでも言いますか

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