表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
浮遊力に取り憑かれたら何かと捗った  作者: みきもり拾二
◆第二章 彌吼雷に、俺はなる!
27/84

【26】合流

髻華羽(ウズハ)お姉さまぁ!」


 身をかがめて出迎える雨巫女髻華羽(ウズハ)に、真茱鈴(マジュリン)流那鈴(ルナリン)が走り寄って抱きついた。とても嬉しそうに、大きな尻尾を激しくフリフリしている。


「二人とも、よく留守を守りましたね」

「真茱鈴がんばりましたなのです!」

「流那鈴もがんばったの……」


 三人、頬を寄せ合ってその温もりを確かめ合っているようだ。

 その様子を、後ろで腰を落として控えている胤泥螺(インディラ)が、普段なら絶対に見せないような表情で、微笑ましげに見やっていた。


 すでに夕刻。天空城は雨巫女髻華羽たちを迎え入れていた。

 疲れた様子の杜乃榎(とのえ)兵たちも、それぞれの無事と再会を喜び合っている。


「やあ、オヤッサン。まだ生きてましたか」

「当たり前であろう! 首の折れ曲がっておるキサマに言われとうないわ!」

「ハハハッ、頭を撃ち抜かれるたぁ、オレの腕もまだまだってもんです」


 左斜めに首を傾げた状態の午羅雲(ゴラクモ)が、おでこの真ん中の穴を指さして笑っている。皮肉を返す霧冷陽(ムサビ)も、破顔一笑で大笑いしている。


「ロボットだったのか〜」

「ロボット?」

「んああ、俺の世界ではそう呼ぶの」

「はぁ、なるほど。まあ古の彌吼雷(ミクライ)より伝わる技術でしてね、この天空城と同じ『機械仕掛』ってヤツですよ」

「午羅雲は有能な整備士じゃて、自らもこのような姿にな」

「なっるほどね〜。いいじゃん、カッコイイよ」

「そりゃどうも」


 そう言って、午羅雲はニヒルな笑顔を返した。


「おつかれさま、凪早(なぎはや)くん」

「やあ、蔦壁(つたかべ)

「どう、怪我はない?」

「んああ、大丈夫。元気そのものだよ!」


 ニコッと笑って、凪早ハレヤは両拳を突き上げてみせた。


「そう、よかった」


 蔦壁ロココが優しく微笑む。特に変わりない様子に、凪早ハレヤは少し戸惑いを感じずにはいられなかった。


「……あのさ、ごめんね、蔦壁」

「え?」


 突然の事に、蔦壁ロココが驚いた表情になる。


「だってさ、俺、マスターである蔦壁の指示を無視した挙句、無茶やってヘマしちゃったからさ……」

「ああ……」


 口に手をあて、納得した様子の蔦壁ロココが、再び小さく微笑んだ。


「仕方ないよ、はじめのうちは。自分でなんでも出来る気分になっちゃうの」

従者(アシスタント)には、よくあること?」

「うん」

「蔦壁もそうだったの?」

「えっと、わたしは……」


 蔦壁ロココが考えを巡らせるようにして、視線を彷徨わせる。


「……どうだったかな? サポート魔法ばかり覚えてたから……あまり自分からは前に出てなかったと思う」

「そっか〜、蔦壁らしいや」


 二人顔を見合わせて笑い合う。凪早ハレヤは、胸一杯に温かいものが広がる感じがしていた。


「俺はでも、もっと気をつける! 午羅雲さんがいなかったら、天空城もヤバかったし!」

「うん、凪早くんなら大丈夫。きっと、もっと上手く戦えるようになると思うよ」


 少し小首を傾げて微笑む蔦壁ロココに、凪早ハレヤはもう一度気を引き締める思いだった。



 ◆



「髻華羽さま、お努めご苦労様です」


 雨巫女髻華羽にそっと近づくと、紅梨沙理(グリサリ)が丁重に頭を下げる。雨巫女髻華羽は真茱鈴と流那鈴の手を優しく解くと、腰を上げて正対した。


「ああ、紅梨沙理。留守の守り、よくぞ耐え忍んでくれました。心から感謝いたします」

「午羅雲と真茱鈴、流那鈴もおりましたので。それより髻華羽さま、よくぞ彌吼雷さまの召喚の儀を果たされましたこと、心よりお慶び申し上げます」

「ありがとう、紅梨沙理。あなたのお導き無くしては、何も成し得なかったでしょう」


 お互いに軽く頭を下げ合うと、つと、凪早ハレヤと蔦壁ロココの方に向き直った。


「改めまして、こちらが彌吼雷さまに、従者のロココさまにございます」


 雨巫女髻華羽がそっと手で指し示す。

 凪早ハレヤはニコニコしながら頭を掻き、蔦壁ロココは小さく頭を下げた。


「私は紅梨沙理と申します。巫女師範を務めております」


 そう言いながら、恭しく頭を下げた紅梨沙理が顔を上げた時、「あっ」と言わんばかりに口を少し開いた。

 その目は、蔦壁ロココを見ているようだった。眉をそっと潜め、何かを確かめているかのように食い入るように見つめている。


「……んああ? どうしたの?」


 凪早ハレヤが紅梨沙理と蔦壁ロココを交互に見る。蔦壁ロココの方は、「なんだろう?」といった様子で首を傾げている。


「……失礼いたしました。あまりにも、お二方が言い伝えの通りのお姿でしたので」


 そっと目を伏せながら、紅梨沙理が頭を下げる。


「わかります。わたくしも、彌吼雷さまが渦の中よりお出ましになられた時、冷水にやられて夢でも見ているのかと……」


 口を袖の端で抑え、雨巫女髻華羽がそっと笑う。


「すごい優秀な言い伝えだね!」


 凪早ハレヤが呑気なことを言うと、紅梨沙理がふっと頬を緩めた。


「髻華羽さま、早速ではございますが、加護力の発動を」

「そうですね」

「それと、精霊力が不足気味ですので、髻華羽さまの精霊力注入をお願いできれば」

「わかりました」

「雨巫女よ、ワシと午羅雲は要所の点検をして参ろうと思う」

「久々の浮上ですからね。どこに不具合が潜んでいるか、見てみないことには」

「こやつもこの状態じゃいかんだろうて。直さねばな!」

「はい、そのようにお願いいたしまする」

「では、拙者は兵のまとめを」

「おう、胤泥螺。任せたぞ」

「悪いね、胤泥螺。ちょっとオヤッサンを借りるよ」

「ああ、それから、胤泥螺」


 雨巫女髻華羽の呼びかけに、それぞれの持場へ向かおうとしていた三人が足を止める。


「兵には今晩、ゆっくりと休むようにと。酒宴を許可いたします」

「ほほーっ、これは楽しみじゃ! ワシらもさっさと点検を済ませようぞ!」

「そりゃいい。髻華羽さん、とっておきの羊肉が五頭、取り置きがあるんですよ。兵にそれを振る舞ってもいいですかね?」

「やったー、羊肉大好きなのです!」

「流那鈴も大歓喜なの……」

「ええ、許可いたしましょう。しかし、兵糧は十分なのでございますか?」

「ハハハッ、それを言うとヤバイんですがね」


 ふっと、一同に沈黙が訪れる。重い空気が漂って、お互いの疲労感が増したように感じられた。


「まあいいじゃん。今晩ぐらいゆっくりしようよ! どうせ、明日には皇都に着くんでしょ?」


 重い空気を振り払うように、凪早ハレヤが呑気な声をあげた。


「皇都に行って、皇さまに会って、魔人ぶっ飛ばす! そのためにも、腹が減っては戦ができぬ、さ!!」


 ビッと親指を立てると、霧冷陽と午羅雲が笑い声をあげた。


「彌吼雷さまの精神の強さには恐れ入る!」

「皇も宰相も、圧倒されるでしょうな。皇子はきっと、お喜びになるだろう! いやあ、楽しみだ」

「胤泥螺、では先の通りに。兵たちへの指示を、よろしく頼みましたよ」

「はっ、承りましてござる」


 胤泥螺が畏まって敬礼すると、霧冷陽、午羅雲とともにその場を後にしていく。


「ではわたくしたちも参りましょう」


 雨巫女髻華羽に促され、凪早ハレヤたちは操舵室へと向かった。






束の間の休息ですね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ