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浮遊力に取り憑かれたら何かと捗った  作者: みきもり拾二
◆第二章 彌吼雷に、俺はなる!
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【22】赤髪の仮面男

「くっそおお、無傷かよ!!」


 クルクル回転する身体を制御すると、グイイインと上空高くまで一気に上昇する。


「だったら全身全霊! 雷エンチャ・フルバレットブーストをお見舞いしてやんよ!!!」

「『ちょっと凪早(なぎはや)くん!? 何をムキになってるの?』」

「魔人軍の本隊さ! 呪術師たちが防護シールド展開して涼しい顔してる!」

「『無茶はやめて! そんな強力なシールドは、相手が強い証拠よ!』」

「俺はまだ、全力を出してない! 勝てるさ!!!」


 ギリリと奥歯を噛み締め、ニヤリと口角を上げる。狂気にも似た闘争心が、凪早ハレヤの胸中に渦巻いていた。


「目にもの見せてやる!!!!」

「『やめなさい、凪早くん!!!!』」

「バグ玉制御発動! 行っくぜえええええええええええええええええっ!!!!!!」


 蔦壁(つたかべ)ロココの制止の声も聞かず、再び凪早ハレヤが真っ逆さまに直滑降し始める!


「剛射! アァァァンドォォ! 雷エンチャ・フルバレットブゥゥゥゥゥストォォォッ!!! そして!!」


 ギランと凪早ハレヤの瞳が怪しく光る。


「全弾叩き込んでやんよっ! 攻撃エンチャ・フルバレットブゥゥゥストオォッ!!」


 引き絞る光矢の先で、もの凄い音を立てて光球が膨れ上がる! 真っ逆さまに落下する凪早ハレヤが稲妻のごとく、その周囲に電撃がバリバリと迸った。


 グングン近づく魔人軍本隊! ヒュンヒュンと火の玉を打ち上げてくる!


 戦車に立つ赤髪の仮面男が腰を低く落とし、両腕を広げて凪早ハレヤを見上げていた。その頭上で、大きな黒い渦が渦巻いている!


「何をする気か知らないけど、やれるもんならやってみろ!!!」


 剛射はMAXパワーに膨れ上がり、あとは射程圏内に入るだけ!


「赤に変われえええええええええええええ!!!!」


 凪早ハレヤが絶叫したその時!! 赤髪の男の目がキランと光り、グンと両腕を突き上げた!


「あっ!」


 と思ったその瞬間、ヒュンと赤いレーザービームが凪早ハレヤの背中の翼を撃ち抜いていた!!


「うっきゃあああああああああああああああああああぁぁぁぁぁっ!!!!」


 片翼を失った凪早ハレヤは、完全にバランスを失った! そのはずみで剛射をあらぬ方に解き放つ!

 「ズドオオオオン!」と轟音がどこかで轟いたが、凪早ハレヤにそれを気にする余裕など有りはしなかった!


 ギュルギュルと風を巻いて錐揉みしながら、墜落していく! 今どのへんまで地面が迫っているのか、完全に見失っていた!


「やっばあああああああああい!!! おかあああああさぁぁぁぁぁぁぁん!!!」

「『凪早くん!? どうしたの!?』」


 ヘッドセットから蔦壁ロココの悲痛な叫び声が聞こえて来る! 


「冗談言ってる場合じゃないぃぃぃ!! バグ玉制御解放っ!!!」


 バシュンと身体の周りに光が巻いて、錐揉みしたまま凪早ハレヤの身体が急上昇し始めた!


「おぶぶぶぶぶぶぶっ!! 目が!……目が回るうううううう!!……」


 もはや上も下もわからない。そんな状態に陥っていた。

 やがて回転がゆっくりと収まっていく。

 クルクル回る視界の中で、眼下に雲が薄く広がっているのが見て取れた。


「おぅうぉえええぇぇぇぇ……」

「『凪早くん!? 凪早くん!?』」


 ヘッドセットから、蔦壁ロココの切迫した声が聞こえて来る。


「んああ、あ〜……ダイジョブダイジョブ……おぅぶっ」

「『ホントに大丈夫なの!? 呻き声が聴こえるんだけど……!』」

「……あはは、目が回っただけ。うっ……気持ち悪っ……ぷっ」

「『もう、無茶しないで……!』」

「ごめんごめん。あ〜、でもマジ死ぬかと思った〜〜〜」

「『……怪我はない?』」

「んああ……あ〜……」

「『どうしたの?』」

彌吼雷(ミクライ)の翼、右側が壊れちゃった。これじゃ真っ直ぐ飛べそうにないや」

「『……バランスが悪いなら、捨てた方がいいかも』」

「んだね〜」


 凪早ハレヤは泳ぎを止めると、『彌吼雷の翼』を脱ぎ始めた。


「ごめんね〜、悪気はないんだ。恨みっこなしで成仏しちゃってよ。ぽいっとな」


 スマホと望遠鏡を制服のポケットに突っ込むと、『彌吼雷の翼』を下に向かって適当に放り投げた。そして、そっと手を合わせる。『彌吼雷の翼』は何の抵抗もなく落下していった。


 その時、ヘッドセットの向こうでボソボソ言っている声が聴こえた。


「『彌吼雷さま?』」

「おおおっ? その声は髻華羽(ウズハ)かな?」

「『さようでございます。とてもはっきり聴こえるものなのでございますね』」


 雨巫女髻華羽の少し驚いたような声に、凪早ハレヤは思わずニヤリとしてしまう。


「『申し合わせの通り、天空城に入られてはいかがでございましょう? 魔人軍に対抗するための兵器もございますので』」

「んああ、それしかないかな? やってみるよ。」

「『天空城の天頂付近は、防護シールドが展開しにくい場所にございます。そこからお入りくださいませ』」

「へえ〜、そうなのか! 了解!」

「『無事に天空城に着きましたら、紅梨沙理(グリサリ)午羅雲(ゴラクモ)をお探しください。この耳にかける器械をお渡しいただければ、わたくしからお話いたします』」

「オッケイ、じゃあ、ちょっと行って来るね〜」

「『うん、気をつけて』」

「『どうか、無理だけはなさらぬよう』」


 二人の声を聞きながら、ふと、凪早ハレヤが首を傾げた。


「ねえねえ蔦壁」

「『どうしたの?』」

「さっきから、蔦壁と髻華羽の声が同時に聴こえてるんだけど?」

「『耳と頬を寄せあっておりますゆえ……』」

「おおおっ、マジで!? ゆ、百合展開きたあああああああああ!!! 画像うpキボンヌうううううううう!!」

「『ユリ?』」

「『……ちがうから』」

「ゆーり、ゆーり♪ 聖なる乙女の恥じらいに〜お天道様も頬染めた〜♪」

「『やめてってば……』」


 呑気に宙を泳ぐ凪早ハレヤとは裏腹に、天空城は切迫した事態になりつつあった。


 散開していた魔人軍はすでに隊列を整え直していた。そして三眼黒妖象(ギリメカラ)の一団が防護シールドに牙を差し、あともう少しで破らんとしている。

 火の玉が破壊したシールドからは、小鬼兵(ゴブリン)の放つ矢の雨が降り注ぎ、杜乃榎(とのえ)軍は防戦一方だ。


 杜乃榎軍の先頭に立っていた長銃の男は、今は盾の間から長銃を構えていた。突っ込んでこようとする魔人軍の小鬼兵を撃ち倒しているが、それも多勢に無勢の様相だ。


「よぉーし。天空城の真上まで来たぞ!」

「『彌吼雷さま、どうかお気をつけて』」

「ああ、祈ってて! 乙女の祈りが俺を百万倍に強くする!!!」


 訳の分からない自信が凪早ハレヤにみなぎって、ビッとばかりに親指を立てた。


「バグ玉制御!発!動!」


 凪早ハレヤの足元からバシュンと光が舞い上がり、凪早ハレヤの身体が重力に引かれて落下し始める。


「これが彌吼雷こと凪早ハレヤさまの生き様だああああ!!! うおおおおおりゃああああああああああああああああっ!!!!」


 雄叫びを上げながら、頭から真っ逆さまに落ちていく。ヒュウンと風を切り裂き、凪早ハレヤの身体が弾丸となり、天空城目掛けて突進していった。


「狙いバッチリ!! このまま行くぜええええええええええええええええ!!!」


 ゴーグルに映る高度計と目標の天空城を睨みながらバグ制御解放のタイミングを測る。


「今だ! バグ玉制御解放オオオオオオオオオゥ!」


 叫びながら腕を真横にグンと突き出す。一瞬、錐揉み状態になって身体が回転するが、すぐに回転が緩んでフワリと落下が止まった。

 天空城の豪奢な社の向こう、防護シールドに、魔人軍の火の玉がぶつかっては弾け、ぶつかっては弾けを繰り返していた。


「無事に天空城の防護シールド内に潜入〜」


 スイーッと宙を泳ぎながら、凪早ハレヤは天空城の社正面を目指した。





やられたフリして敵を油断させて、密かに天空城に入り込むという高度な作戦ですね(キリッ

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