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Memory World  作者: 彼方わた雨
第1章-出会い-
9/25

遭遇

 私は何も知らないんだ。




「どうしたのかな、お嬢さん?」

 真っ暗な森とは対照的な真っ白な馬に乗った男の人、そして、まわりにも人が何人かいる。明りに照らされてその人がうっすらと見える。

 髪は黒く、目はダークバイオレットであった。髪の毛は短く切られていたが、ニコよりは少し長めである。口調と表情は柔らかだったが、簡単に信用してはならないと思った。まだ、出会ったばかりだが、私は直感的にそう感じていた。

「この村の周辺には人は1人も住んでいいないはずなんだが、君はいったいどこから来たのかな?」

 1人も住んでいない?

 ノクタルン村にはニコがただ1人住んでいるだけだ。そう、誰も住んでいないわけではない。それなのにこの人は誰も住んでいないという。これはいったいどういうことなのか……。

「あなたこそ、いったい何者なの?」

「お前っ、誰にものをいっ――」

「構わん」

 私が聞いただけなのに、その男の人のそばにいた別の男の人が私に怒鳴り声を上げた。しかし、すぐに黒髪の男の人が止めた。

 もしかして、この人は偉い人なのかしら……。

「申し遅れて申し訳ない。私はリュエル・ピアノリア、この国の王子である」

「……王子、さま?」

 私が問いかけると彼はにっこりと笑い、うなずいた。

 王子とは、あの王子のことを言うんだよね。今の王様の次に王様になる人のことだよね。でも、こんなところに何で王子さまみたいな方がいるのだろうか。

「君の名を聞かせてもらっていいかな?」

 優しい、アルトの声で言われて私は考え直した。もしかしたら、簡単に信用してはいけないと思ったのは王子という遠い存在であることを感じたからではないかと。だってなんだか、優しそうな人だ。

「私は、ルーシャといいます」

「ルーシャ……」

 王子さまは私の名前を聞くと少し暗い顔をした気がした。まわりが暗いためそれは見間違いかもしれないが。

「それで、どこから来たのかな?」

「ノクタルン村です」

 私がはっきりと言うとまわりはざわざわとした。私はそんなにおかしいことを言ってしまったのだろうか。

「お前、さっき殿下も仰ったが、ノクタルン村には誰1人住んでいないのだぞ?」

「そんなことないもん! ニコが住んでいるもん。私もそこで一緒に――」

「ニコだと!?」

 私が言い切ってしまう前に王子さまは大きな声で私に問いかけてきた。明りに照らされたその顔は明らかに驚いていることがわかる。まわりも先ほど以上にざわざわとしている。

「……ニコと君はいったいどんな関係かな?」

「関係? 私がみんなに会えるまでニコが家においてくれるって言って……」

 少しの沈黙。風が何だか冷たいな……。

「ルーシャ、我々と来なさい」

「殿下!?」

 王子さまと一緒に行く?どうしてそんなことになるのか。まわりの人たちも理解ができないようで慌てている。もちろん、連れていかれる私も混乱している。

「私が連れていくと言った。それからお前たち、今彼女から聞いたことは他言無用である。誰かに話せば己の身が危うくなると思え」

「……了解いたしました」

 さっきよりも低い声で言った王子さまの声は怖かった。これが王子というものなのであろうか。恐れられる存在であることは何となくわかった気がする。

「こんな小さな子がここにいることは危険だ。我々が保護する。安心していい、我々とくれば怖いことはない」

「でも、ニコが待っているから……」

「心配はいらない。……お前たち任せた。無事城へ送り届けろ。私は後で行く」

「はっ、では後ほど」

 私は何もできずひょいと男の人に抱き上げられ、そのまま馬へ乗せられるのであった。

「わ、私はニコのところにっ!」

 なんだかとても嫌な予感がして私はじたばたとした。一緒に馬に乗った人は急な出来事であったので驚いてバランスを崩しそうになっていた。

「わっ――」

 男の人はバランスを取り戻したが、私がバランスを崩してしまいそのまま馬の上から落っこちてしまった。痛かったという感覚は覚えているが、そのあとどうやって連れていかれてどのくらい経ったのかは全く覚えていない。




 こうして私は王都セレナードへ行くことになってしまったのであった。

今日はちょっと張り切って1日に2話投稿してみました。

王子様なんてファンタジーっぽいひとが出てきました。

なかなか、ニコと合流できませんね……。


では、次回でもお会いできること願っています。

2014/5 秋桜(あきざくら) (くう)


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