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「……・・・ゲームの中?」
俺がつぶやいた言葉を聞き取った蓮が言葉を反芻する。
蓮は不思議そうに俺を見つめ、言葉を搾り出した。
「兄ちゃん、なんで……・・・リアルの体なの?」
そうつぶやいた後、自分の腕を見て愕然で目を見開いた。
「え、な、なんで?」
そうつぶやき助けを求めるようにこちらを見る。その表情には困惑が見て取れる。
「まぁ、落ち着け。ここはどこなのかはおいといて一つ確認したいことがある」
そういってある現象を起こそうとする。ありえないと思いながらも実行しなければいけない気がしてその現象を起こすために脳内である言葉をつぶやく。そう、『ステータス』と。
そして修也がステータスとつぶやくと同時に音もなく修也の眼前にステータス画面が表示される。
「え、兄ちゃん、それ、まさか」
それを愕然とした表情で見る蓮。
「蓮、俺の仮説を聞いてくれるか?」
そして困惑している蓮に俺が考えた仮説を伝えることにした。まず、あのメールに書かれている文言の意味を俺達が間違えたんじゃないかということから始まりここはCDOの中じゃないかということまでを10分もかからず話した。
「そ、そんな」
その話を聞いて自分のステータスを聞いた蓮の表情は暗い、濃密な絶望がうつされている。
それも仕方が無いが、だって俺達がステータスで確認した能力値は俺達がプレイしていたキャラクターのものではなく、完全無欠に初期値だったからだ、スキルも俺は下級職の魔法使い見習いが最初から覚えているスキル【ファイア】と【ウォーター】、それと【ヒール】のみだったからだ。称号も【異世界人】という成長を促す称号だけだった。
それは蓮も同じだったようで絶望の表情で俺にステータスを見せてくれた。
蓮は下級職の戦士見習いのスキル【スラッシュ】【強撃】【身体強化小】だけだった。それ以外は初期値のところと称号も一緒だった。
「ねえ、兄ちゃん僕達……・・・死ぬんじゃない?」
蓮はがくがくと震え顔を青ざめさせている。まあそれはしょうがない。だってここが本当にゲームの中ならここはヴリトラの大森林、CDO最凶と名高いヴリトラの棲む超高レベルダンジョン。
「まだあきらめんな、とりあえず安全そうな場所探すぞ」
俺がそういうとコクリと顔を立てに揺らす蓮。
それから俺達は歩き続けた、そして判明したここは間違いなくヴリトラの大森林だと。だってこの森は大森林と同じ地形をしているし途中で見かけたモンスター、もちろん先頭は回避した、も大森林に出てくるものだった。
「に、にいちゃん。ここって本当に安全なの?」
不安そうな蓮をよそに俺は固い地面の上で横になった。
今俺達がいるのは大森林の東にある『帝釈天の祠』と呼ばれる洞窟。ここは大森林の中で唯一無二のモンスターが沸かない休憩スポット。普通はポーションがつき、体力が無くなったプレイヤーが自然治癒の時間を稼ぐために来る場所である。
「大丈夫だろ、たぶん」
そういってこれからのことを考えながらステータスが面を開く。
【名前】シュウヤ・トウドウ
【種族】人間
【レベル】1
【職業】魔法使い見習い
【能力値】
HP:120
MP:500
SP:0
STR:25
VIT:14
DEX:83
AGI:5
INT:300
【スキル】
・基本魔法 【ファイア】【ウォーター】
・初級回復魔法【ヒール】
【称号】
異世界人(・成長補正大 ・精神安定) ???
「ん?」
さっきは気がつかなかったが称号に『???』がある。CDO内においてこんなシステムは無かったので何かのバグかナニカだろう。
そういえば、この称号異世界人が無ければこの現象はフルダイブシステムのバグかと思うこともできたんだがと思う。
そんなことを言っても仕方がないので今後のことを真剣に計画していく。
まず一つ目、やせる。AGIが5は流石にひどいのでやせて機動力を確保したいところだ。
そして二つ目、ゲームのキャラクターとしての育成をする。この場所がゲームの中ならそれをすれば生き残る可能性があがる。
最後に三つ目、一番大事な食糧確保。安全な場所は確保できているので命の危険は無いが飯が無いと餓死してしまうので飯が必要だ。
そんなことを考えながら俺は硬い床で眠りについた。