第9話:彼女の真意とは?
「円先輩!! …………って何をしてるんですか?」
明日香は、図書室の扉を開けたと同時に自分の目に飛び込んできた光景に唖然としてしまう。
「え? ヨガよ、ヨガ。三千代、あなた体硬すぎよ」
「無理、無理です! 円先輩!!」
悲鳴にも似た声で三千代は、自分の体を押さえている円に抗議する。その声と三千代のあまりにも硬い体に見切りをつけたのか、円はその手を離す。
「たっ、助かった」
「明日香、あなたもやってみる?」
「遠慮します。あの、質問があって来たんですけどいいですか?」
「あら、何かしら?」
「あの、そもそも死んだ人間が指輪を持ってこれるんですか?」
「やっと気がついたのね」
円の言葉に明日香は、やっぱりそうなのかと肩を落とす。
「知っていたなら、教えてくれても……」
「それじゃあ、研修にならないでしょう?」
何を言ってるのこの子はと言わんばかりの反応に本気で泣きたくなる。
「彼女は失くしたとは言っていたけど、いつ失くしたとは言ってなかったでしょう?」
「はい。気がついたら失くしていたと」
「それが意味するのは失くしたのはこちらに来る前、守護につく以前最初に死人としてこちらに来た時」
「だったら、何で今さらそんな事を………」
「何か理由があるのかもしれないわね。その指輪を現世においておけない何かが」
「その何かって?」
「それを調べるのもあなたの仕事よ」
円はにっこりと笑いながら明日香をやんわりとつき離す。
(そうでした、円先輩はそういう人ですよね)
「一度、現世に行ってきます」
明日香がそう言うなり図書室を出て行こうとするのを三千代が引き留める。
「明日香!! 彼女が守護についてた娘さんについて調べてから行ったほうがいいよ」
「そっか! ありがとう、三千代」
明日香は、来た時と同じ勢いで今度こそ図書室から走り去って行った。
「三千代?」
「これくらいいいじゃないですか。研修中の子には難しいですよ、絶対。それに私はあの子の指導担ですから」
「ふふ。今回は大目にみるわ」