第8話:木崎 幸について
木崎 幸――享年28歳。中流層の一般家庭・浦辺家の長女として生まれる。大人しい性格だが両親の愛情に守られ育つ。
大学を卒業してすぐに結婚。その3年後に待望の娘を持つ。しかし、その1年後事故で帰らぬ人となる。
あの世へと来てからは、娘の守護霊になり、つい先日その役目を終える。
以上が幸の本のおおまかな内容。
明日香は、本を閉じて横にずらすと頬杖をつき考える。
(うーん、別に特にこれっていうのがないな。後は、彼女が育った場所を順々に回っていくか)
明日香は、手帳を取り出し、幸が育った場所や学校などをメモしていく。だが、そのペンの動きはだんだんと止まってしまう。
指輪、きっとこれは大事なキーポイント。
明日香は、指でペンを回しながら考える。そしてふとある考えが浮かび上がる。
「あー、そうだ!私ってば根本的な問題を無視してるし」
明日香の脳裏をかすめた疑問。
それは、死んだ人間が指輪をあの世に持ってこれるかということ。
「馬鹿だ、私。何でこんな簡単なことを思いつかないかな」
明日香は、椅子を跳ね飛ばすような勢いで立ち上がると扉へと走り、そのノブを回す。しかし、ノブを持ったまま止まってしまう。
(でも、待てよ。こんな簡単なこと先輩達なら簡単に気づくはず、なのに円先輩も三千代も何も言わなかった)
「ここは大人しく疑問をぶつけるまで」
自分は研修中の身なのだ、アドバイスを求めたって悪くないはず。
そう決めた明日香は、扉を開けると館の図書室へと向かった。
何とか年が明ける前に更新です。
のろのろとした更新ですが、楽しんでいただければ嬉しいです。




