第7話:愚痴
「………やっと見つけた」
明日香は、やっとことで見つけた本を抱きしめその場に座りこむ。
この表現はおかしいと思うが言わせてもらう。死ぬほど大変だったと。
今の明日香の姿を見れば、きっと誰もが同情してくれることだろう。
何故なら明日香が着ている制服やきちんと整えていた髪の毛には埃やら蜘蛛の巣やらがついて、見るからにボロボロという言葉がぴったりだった。
「掃除くらいしろよ、まったく」
何とか立ち上がり、閲覧室まで戻り机に本を置くと、とりあえず身なりを整えるために部屋へと戻る。
そして大急ぎでシャワーを浴び、新しい服に着替えると閲覧室へと向かった。
何故、明日香の私室がこの館にあるかというと、本来明日香達の仕事はこの館の蔵書の管理である為だ。
お迎えに行く仕事は他の課がやるので基本的に自分達は関わらない。明日香達が関わるのは迷い人や特殊な事情を抱えた場合のみである。
だから、今回の仕事は明日香の仕事だと言われればそうなのだが何も研修中の身である自分が引き受ける場合ではないと思う。
そんな愚痴をブツブツと言っている明日香だったが、やれと言われたからにはやるしかないのだと無理やり自分を納得させた。
(だって、円先輩の悪魔の微笑みが見えるんだもん)
閲覧室に戻り、早速本を手に取る。
表紙には、木崎 幸の名前があった。
「よし、早速読むか」
明日香は、本を開き少しでも指輪の情報を得ようとページをめくり始めた。