第6話:地下
「円先輩! おつかれさまです」
「はい、おつかれさま。で、何をしているの?」
明日香は、円を見上げてハハハッと笑う。
「ちょっと探し物を」
明日香の言葉に円は首を傾げる。
「あなた、指輪を探しに行ったんじゃなかったの?」
「あはは、それがですね………」
明日香は、身振り手振りを混ぜながら一連の出来事を説明する。
すると円は、苦笑しながら教えてくれた。
「お迎えが済んだ人の本は、ここじゃないわ。地下の書庫よ。三千代に聞かなかったの?」
「えっと、飛び出して来ちゃいました」
そう言えば、三千代はまだ何か言いかけてたかもしれないと今ならば思う。
「仕方のない子ね。いらっしゃい」
円に連れられて明日香は、館のエントランスに戻る。すると、階段の裏の壁に扉があるのに気づく。
「あそこが地下への階段よ。そう言えばまだ本の移し替えの業務についてなかったわね」
円の後に続いてその階段を下りるとそこは、だだっ広い空間に本棚が所狭しと並べてある。
「ここは、現在守護についている方々の本を保管しているの。守護を終える=転生の資格を得るということだというのは習ったでしょ?」
「はい」
それにしてもこの膨大な本の量はどうだろう。この本の数と同じだけ守護をしている魂がいるのだと思うとすごいを通りこして圧倒されるというか。
「じゃあ、守護を終えた方の本は?」
「転生と同時に破棄されるわ。まぁ、守護の役目の期間はそれぞれだから。じゃあ、あとは自分で探しなさい」
「え?」
驚く明日香を見て円は微笑む。
「あなたの仕事でしょ? 本はちゃんと戻しておいてちょうだい」
そう言って円は、明日香を一人残し去って行った。
(ひっ、ひどい。鬼だ、あの人)
円さんは優しいけど厳しいのです。