第27話:傷の理由
「ほら」
「…………ありがとう」
自販機で買って来た缶ジュースを幸菜は、七海に手渡した。幸菜は、自分の分の缶で目蓋を冷やす。思いのほか熱を持っていたようで、缶の冷たさがとても気持ちいい。
公園のベンチに並んで座りながら、幸菜は自己嫌悪に陥っていた。まさか、自分がこんな人目のある場所で泣くことになろうとはと。
「それ、いつから?」
「…………小学校の六年生頃から。私、中学に上がる前は違う学区に通ってて。その頃から、いじめの対象だったの。自分でもする理由は、よく分からないの。ただ、痛みと流れる血を見たら生きてる感じがするから」
「そうだったんだ。確かにあんたの顔は、小学校で見たことないや」
幸菜達の通う学校は、生徒数が少ない。だから、だいたいのメンツは小学校から知っている。なので、七海と同じクラスになった今年の自己紹介の時間で彼女を見た時に、違和感は少しあったのだ。けど、転校生の一人だとすっかり勘違いしていた。
「ママにこれが見つかって、中学に上がると同時に引っ越したんだ」
「へー、いい親じゃん。娘の為に引っ越しするなんて、相当の覚悟もいるだろうし」
「うん。でも、ばれたくなかったの。いじめられてる事」
「まぁ、格好は悪いか。あたしも親父には言えないし」
登校拒否をし始めた時、一度だけ問い詰められたことがあった。だけど、言えなかった。自分なりのプライドもあったけど、心配をかけたくなかったのが本音。
(うちの親父の場合、学校に殴りこみをかけそうで尚更言えない)
今は、極普通のサラリーマン。しかし、一度だけ父親のアルバムを見た時に思った。血は争えないと。
そこに写っていたのは、リーゼントに短ランを着た父親がおきまりのうんこ座りをしている姿だった。
(あれは、引いた…………)
幸菜は、思わず遠くを見た。
そんな事を幸菜が考えているとは知らずに、隣の七海はポツリと言った。
「でも、私はママが嫌い…………」
「?」
七海のその言葉に幸菜は、軽く首を傾げる。
転校までの経緯を聞いた感じでは、悪い母親には思えないけど何かあるのだろうか。
「私がいじめられる原因は、ママだったから…………」




