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リング  作者:
23/31

第23話:柏木 七海

 目的の部屋は、案外簡単に見つかった。


 「よし、ここね」


 明日香は、保健室の中へと入った。すると、部屋の中央におかれた長机で勉強をしている少女がいた。

 この部屋の主である養護教諭は、その様子を自分の机から見守っている。


 少女の近くに寄った明日香は、机に置かれた教科書から彼女が、三年生であることを知る。


 「先生、出来ました」

 「じゃあ、私が採点するから少し待っていてちょうだい」

 「はい」


 少女からノートを受け取った教諭は、自分の机で採点を始める。


 (柏木 七海ちゃんかぁ。うん? 幸菜と同じクラス)


 ノートに書かれた名前とクラスを見て改めて少女を見る。髪の毛を一本に結ったどこか大人しい印象を受ける彼女。


 (何で、保健室で勉強しているんだろう?)


 「うん、全問正解。これでもうクラスに追いつけたわね」

 「ありがとうございます」

 「柏木さん、まだ教室には戻る気ない?」

 「…………嫌です」

 「そっか」

 「先生は、迷惑ですか? 私がいて」

 「そんなことないわよ。柏木さん、色々お手伝いしてくれるから、先生楽ちんだもの」


 明るくおどける教諭を見て、七海は笑う。その笑顔を見て更に教諭は目を細める。


 「先生、木崎さん。まだ、学校に来ませんか?」

 「うーん、なかなか本人と会話が出来なくてね」

 「そうですか。私、早く彼女に謝りたい。あと、助けてくれてありがとうって言いたい」

 「うん」

 「私、弱虫だから。彼女が助けてくれたのに、彼女を助けられなかった。それどころか、恩を仇で返すようなことしちゃって。だから、謝りたい」

 「そう。大丈夫、彼女ならきっとまた学校に来るわ。そうしたらあなたの思いをきちんと伝えられるわ」

 「実は、昨日駅前で彼女を見かけたんで追いかけたんです。だけど、他の人がいて声をかけられなかった」

 「駅前?」

 「はい。駅から一本入った路地にゲームセンターがあって。そこら辺は、溜まり場になっているって」

 「分かったわ。でも、危ないからあなたはもう行っちゃダメよ」

 「でも!!」

 「話なら学校でしなさい。ね?」

 「…………分かりました」

 「ちょっときつい言い方になっちゃったわね。さぁ、続きをやりましょう!」


 そこまで2人の話を聞くと明日香は保健室を出て、駅前へと向かう。そして、自分が考えていた最悪の事態に確信が持ててしまったことに焦りを感じるのだった。

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