第22話:学校
現世に戻った明日香は、幸菜に会うべく例の公園に向かった。時刻は、昼過ぎ。本来なら学生である幸菜がいる時間帯では、ない。しかし、今の幸菜の居場所は、あそこしかない気がするのだ。
公園の降り立った明日香は、公園内を見渡す。すると、時間帯のせいか思いのほか人が多い。遊具の周りには、小さい子供やその母親達の姿があった。
しかし、残念ながら明日香の目当ての人物の姿は、ない。
「いないか…………。まぁ、あれを確かめる為にもあまり人がいないほうがいいんだけど」
それにしても幸菜はどこにいるのだろうか。
「学校に行ってみるしかないかな」
彼女の居そう場所に見当がつかない明日香は、幸菜の中学校へと向かった。
幸菜が通っているのは、この地区にある公立の学校。コンクリート造りのよく見るタイプの学校だった。
校庭では、生徒達が体育の授業を行っている。その様は、いたって普通のよくある光景。しかし、あの小さな箱の世界では、様々な感情が渦を巻いているのだ。
「よし、行ってみるか。確か、三年五組だよね」
明日香は、生徒用の玄関から校舎の中へと入った。一歩中へと足を踏み入れると生徒用の下駄箱がある。ちょうど三年用の下駄箱が並んでいる場所が目に付いた。
五組の場所を探し、幸菜の場所を確認する。すると、やはり靴はないようだ。
「やっぱりいないか。まぁ、本人が行ってないって言ってたしな」
だとしたら、街のどこかにいるということか。いくらなんでも自分だけでこの街の全てを探し回るのは無理だ。
「…………保健室」
幸菜の父親の再婚相手が居る場所。
もしかしたら、何か手掛かりがあるかもしれない。
「行くだけ、行ってみるか」
多分、職員室とかの近くにあるだろうと当たりをつけた明日香は、どんどんと中へと突き進んで行ったのだった。