第20話:密談・2
管理局に配属されると決まって行われるのは、新人研修。内容は、自分が配属される予定の先輩と共に各課の仕事を一通り経験するというもの。
何故、新人一人で行わないかというと理由は、いたってシンプル。
新人にミスをさせないためである。
もし、新人が失敗しそうになっても最終的には、一緒にいる先輩局員がカバーする。何故ここまで慎重になるかというと、自分達の仕事は霊の管理という失敗が許されない仕事だからだ。
なので今回の明日香の研修は、三千代が同行しているのである。
「あら、すぐに分かったのね」
「それは! …………この間、敷島さんが役目を終えたから」
「そう、本来なら明日香は敷島さんの代わりにその役を引き継ぐはずだったのよねぇ」
「うちに来たってことは、適正が無かったってことですよね。それなら他の課長達も文句はないはずじゃあ」
三千代の言葉を否定するように円は首を振った。
「適正はあったの。それも、かなりの高レベル。それを課長が無理やり引っ張って来ちゃったの」
「…………あたしは、あの子に適正があるっていうほうが驚きです」
「それは何故?」
「性格的に向かないと思いました。あの子は、優しすぎます。一課の仕事には向きません」
「あの子の本質が分かってないのね、あなたは」
三千代を見て円は、笑う。そんな円の態度に三千代は、だんだんと腹を立て始める。
「どういう意味ですか?」
「あの子には、人間的な部分と非人間的な部分が同居しているの。何て言ったらいいかしら。例えば自分の友達が悲しんでいたら同じように悲しむのだけど、彼女の中にはどこか冷静な部分があるのよね。その冷静な部分でそこに至った経緯を振り返ってそうなって当然だとも考えている。自分の感情全てで悲しんだり、喜んだりっていうのがないんじゃないかしら」
「そんなのどんな人間にだってあります」
「そうね、私にだってあるわ。もちろん、三千代にもね。だけど、その割合が普通の人より大きいのよ、明日香は。だから、一課に配属される事になっていた」
「よく分かりません」
「実を言うと私にもよく分からないのよ。課長が何故明日香をこちらに無理に引っ張ってきたかなんてね。ただ、今回の件を一人で解決した時に答えが出るらしいのよ。だから、私達のサポートは禁止だそうよ」
「…………やっぱり納得出来ません。けど、それが条件なら我慢します」
三千代は、口を尖らせて言うとそのまま黙りこんでしまう。そんな様子を見て円は、仕方ないとばかりに肩をすくめるのだった。