第18話:あらたな決意
「はーーーっ、疲れたよ…………」
館の入口の扉を押し開き、中へと入る。さすがに時間が時間なので、部屋の明かりは消えていて人の気配も感じられない。
居ないとは思うが、一応、図書室に顔を出しておくべきだと考えた明日香は、小さくノックをして静かに部屋に入る。
「やっぱり、誰もいないか。それにしても疲れたよぉ」
小さく呟くと近くにあった椅子を引っ張り出し、そこに座る。
正直なところ、今回の件は簡単に済むと思っていた。だって話を聞く限り、指輪を探して持って来るという単純な仕事だと思ったから。
それがいつの間にか、家庭問題やら深い話に転がって行っている。
はっきり言って、生きていた頃からあまり人と深く付き合うことをしてこなかった自分にとってかなり難しい。
幸菜にはえらそうに話ているが、人と真正面からぶつかって行っている分、彼女の方が人間として器が大きいし大人だ。
「本当に私に務まるのかなこの仕事」
これまで何とか研修をこなしてきた。
そう、こなしてきただけ。
毎日、山のように出される課題をこなして仕事を覚えていくだけしか出来ていなかった。この仕事の本質を真に理解していたのだろうか。
そんな風に色々と考えているといつぞや、言われた言葉が脳裏に浮かぶ。
――――この仕事を甘く見るな。ただ、死者を迎えて管理するなんて単純な仕事じゃない。相手の気持ちを考え、いかに未練を残さずあちらに送ってやれるかが大事なんだ。俺達がちゃんと向こう側との橋渡しが出来なければ、それはその死者の終わりを意味する。よく、考えるんだな。
言われたのは、一課に研修に行った時の事。
彼等の仕事は、未練を断ち切れずあちらとこちらに害をもたらす存在になった霊の排除。
自分達の仕事は決してきれいなだけではないのだ。
それを知っているくせに甘く考え過ぎた自分は、何て愚かだろう。それでも…………。
「それでも、今回の件は絶対に丸く収めて見せるんだから! よし、明日に備えて寝よ」
明日香は、今一度、仕事に対する覚悟を決めると自分の部屋へと戻って行った。
それを見計らったかのように無人だったはずの部屋の奥から人が出てくる。
「頑張れ、明日香」
そう呟くとその人物は、同じように部屋から出て行った。




