第16話:最弱の生き物
幸菜の話を聞きながら、明日香は自分の時はどうだっただろうと思い返す。
とりあえず、親友二人がいたから表だってどうこうといのは、なかった。まぁ、影で色々言われり、行事とかで自分だけはずされたりって感じのはあったくらい。
何より、倒れられたら困るって先生方が、注意して見てたしね。
「でも、私は幸菜はえらいと思う」
「え?」
「だって、見て見ぬふりも出来たわけでしょう?」
「…………そんなこと出来ないよ」
視線を地面に落とし、幸菜はポツリと呟いた。
「だから、えらいのよ。だって関わらなければ自分は安全だって思う人間が圧倒的に多いし。きっと、彼女はすごく嬉しかったはず」
「だったら…………」
幸菜が言いたいことは、すぐ分かった。
だったら、何で自分に話しかけてくれないのか。
「人って強い生き物じゃないんだよ。ううん、逆に最弱の生き物かもね。だからこそ、いつまでもしてしまった事を後悔して自らを責める。きっと、彼女は自分を責めてる。そして、答えを見つけようともがいてるはず」
「最弱の生き物…………」
「そうよ。強くて完璧な人間なんていない。むしろそんな人間がいたら、気味が悪い」
「それは、大人も弱いって事?」
「大人になればなる程かもね。大人になればどうしても守らなきゃいけない物が増えていくし、他人に弱さを見せることも難しくなるもの。だから、家族や友人、それに恋人が必要になるのかもしれない。生きていく為にね」