第11話:事情
現世へやってきた明日香は、先ほど得た情報を元に木崎家へと向かう。
その家は、あの公園から歩いて十分程の新興住宅街の一角に建っていた。表札を見ると確かに木崎と書かれている。
「ここで間違いないか。さて、幸菜って子はいるかな?」
明日香は、家の門を開けて敷地内へと進む。すると、微かにだが何かが割れるような音が家の中から響いてきた。
「何の音?」
明日香は、庭へと周り込み近くの窓から中を窺う。すると、家の中では若い少女の怒声とそれを諌める男女の声が聞こえる。
後ろ姿だけだが、何とかその人物達を確認することが出来た。
一人は、スーツ姿の中年の男。その隣には男よりも若い女がいる。
(多分、あれが幸菜って子の父親ね。それにしても隣の若い女性は?)
「うっせえな。何度言ったってあたしはこの女がここに住むのは認めない」
「幸菜。いいかげんにしないか」
「この女がここに住むっていうなら、あたしが出てくよ。あんたは、その女と生まれてくる子供と勝手にしろよ!!」
一緒にいた女性を庇うように立つ父親を見てさらに怒りを爆発させた幸菜は、そのまま飛び出して行ってしまう。
それを見た明日香は、急いで玄関に回る。が、たっちの差で幸菜は、暗い路地へと姿を消してしまう。
しかし、その横顔を見て明日香は、驚いた。
「幸菜ってあの子だったの?」
あの指輪探しの夜、公園であった少女こそ、木崎 幸菜だった。
「じゃあ、指輪ってあれでよかったんだ。それにしても…………」
幸菜が開けっ放しで出て行った玄関。その扉の前で佇む男女の姿に明日香は溜息をつく。
(父親の再婚問題か。ただでさえ思春期で色々とゆれる時期なのに。相手があれじゃな)
父親の横に立ち、俯いている女性を見て明日香は、思う。
「どうみても20代だよね、父親の相手って……」
どうやら、幸さんが心配しているのはこの事らしい。それならそう言って欲しい。まぁ、何が出来るってわけじゃないけどさ。
明日香は、気を取り直すと幸菜のあとを追った。
お久しぶりの更新です。
少しはこっちの更新速度も上げたいなと思う、今日この頃です。