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無題詩1~42(2011年)

無題詩36

月は砂糖菓子のようにだだ甘く、

洒落た歌謡曲が流れてた。

歯車の川に身を任せ、

辿り着いた未来には、

嵐が丘かメガロポリス。

そこにあるのはおびただしい量の漫画と恐怖症。

扇風機に羽根がまわってて、

原子爆弾に怯えている。

小説のたぐいは消え失せて、

少女は踊る暗い腹の中踊る。

読書眼鏡を外したら、

揺れるほむらがきらきらと、

星屑ほしくずのように光ってて、

ヒステリーにも似た記憶が蘇る。

瞬間、炎は蒸発し、

真っ暗、真っ暗、真っ暗さ。

■■■天■■何も■■えない。

ポストモダンの暴風雨。

モノクロ映画の静けさや。

虚無へ捧げた供物から、

蛇や蛙が涌いてきて、

精液の香りは栗の花、

鼻を刺すような眩暈感げんうんかん

脂肪のかたまり、未来のイブ、

人の気配はどこにもないのだ。

アンドロイドと機関銃。

あるのはそれだけ。ただそれぎりなのだ。

日常を生きる僕達は

――歌姫の歌う欠片となって、

冷めたホットミルクの膜の中。

僕は世界を切り裂くために、

ナイフを一切れ握りしめ、

企画倒れの遊園地、

観覧車の頂点へ、

倉皇と急いで駆け抜けた。

終末論的な哲学と、

命を賭けた雪が降る。

僕はナイフで喉笛を、

切り裂き、血が咲き、くずおれた。

いきものはみな死んで、

これでついに町も死ぬ。

灰汁で満たしたコップの中の、

汚れた物語はこれでおしまい。

奇麗な奇麗なおしまいさ。

最後にそのおしまいの内側で、

落ちたナイフの切っ先だけが、

月光を反射して輝いていた。


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