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公安部地域安全課の守り人

迷宮に入るには、2つの壁を突破しなければならない。


 1つ目は、結界。

 迷宮の入口には魔法陣が刻まれた結界が施されており、正式な許可を持つ者以外は通れない。

 違法許可証を持つ者なら通過できるが、当然、アリスとリンコは持っていない。


 2つ目は、公安部 迷宮安全課の「守り人」。

 迷宮の入口には常に2名の守り人が配置されている。

 彼らの役割は、迷宮に入る冒険者の確認、および迷宮外へ出ようとするモンスターの討伐・捕獲 だ。


 守り人たちは公務員ではあるが、いわゆる「行政職」ではなく、実務職寄りの職員 である。

 つまり、細かい規則や書類の運用には詳しくないことが多い。


「さて、どうする?」


 リンコが腕を組みながら、前方の門を眺める。

 門の前には、魔法陣の刻まれた石造りの結界。

 そして、その前には2名の守り人 が立っていた。


 鎧を纏った大柄な男と、片手に魔法杖を持った女性。

 二人とも、いかにも「現場で鍛えられた」ような雰囲気を醸し出している。


 「……交渉しましょう」


 アリスは決意したようにメガネを押し上げる。


 「交渉? どうやって?」

 「私たちは迷宮管理部 冒険者支援課の職員 です。それを伝えれば、もしかすると……」

 「……まぁ、やるだけやってみなさいな」


守り人とのやり取り

 二人は門の前へと進む。

 案の定、守り人の二人がすぐに警戒した様子で立ちふさがった。


 「お前たち、ここで何をしている?」

 大柄な男の守り人が低い声で問いかける。


 アリスは落ち着いた口調で言った。


 「迷宮管理部 冒険者支援課の職員です。現在、冒険者支援業務の一環として迷宮内部の状況確認を行うため、入場申請を行います。」


 「……迷宮管理部?」


 もう一人の女性の守り人が眉をひそめた。


 「お前たちが?」


 アリスは頷くと、リンコが小さな声で「名札とかもってないの?」とささやく。

 「こちらが私の名札です」と言いながら、しっかりと名札を提示した。


 名札には「迷宮管理部 冒険者支援課 職員:アリス・エンフィールド」と記載されている。


 守り人の二人は顔を見合わせる。


 「……あれ、本当に職員っぽいぞ」

 「……」


 守り人たちは、迷宮の実務に関しては精通しているが、行政手続きや規則には疎い。

 迷宮管理部の職員が名札まで提示して堂々と言うのだから、「これが正式な規則なんだろう」 と受け取ってしまったらしい。


 「……まぁ、お前らが本当に役所の人間なら、問題ないだろう」

 「入れ」


 男の守り人があっさり通行を許可した。


 「……え?」

 アリスは一瞬、拍子抜けした。


 (い、意外とすんなり通りました……!)


 「ありがたく通らせてもらおうかしら」


 リンコはアリスの肩を軽く叩きながら、結界の中へと進む。

 アリスも慌てて続いた。


守り人の疑念と発覚

 二人が通過した後、守り人の女性が少し考え込んだ。


 「……ねえ、本当にあんな規則あった?」

 「さあな……まぁ、役所の人間がわざわざ嘘をつくとも思えんが」


 「ちょっと待て。念のため、上長に確認してみる」


 そう言うと、彼女は通信用の魔導具を取り出し、公安部の上長へ連絡を取った。


 「こちら守り人。迷宮管理部の職員を通しましたが、規則通りで問題ありませんでしたよね?」


 数秒の沈黙。


 そして――


 『……は? そんな規則があるわけがないだろう!?』


 「……えっ?」


 守り人たちは目を見開いた。


 「……ちょっと待ってくれ。今、誰を通したんだ?」


 『迷宮管理部……冒険者支援課の職員です』


 『バカ者!! すぐに捕まえろ!!』


 「えっ!?」


 焦る守り人たち。


 一方、その頃――アリスとリンコは堂々と迷宮内へ進んでいた。


公安部、迷宮管理部へ緊急連絡

 「……くそっ、やられた!」


 鎧の男の守り人が舌打ちをしながら、魔導具を握る。


 「こちら守り人! 迷宮管理部へ緊急連絡!!」


 すぐに、迷宮管理部本部の通信魔導具が鳴り響く。


 『こちら迷宮管理部。どうしました?』


 「迷宮管理部の職員を通してしまったが、あれは嘘だった! そっちで確認しろ!」


 『……了解しました。状況を確認します!』


 迷宮管理部へと広がる緊急事態。

 一方、アリスとリンコは――


 「……意外とすんなり通れましたね!」

 「でしょ? 名札って、思ったより信用されるのよ。こういうことも多くないから案外しっかり確認しなかったりするのよね・・ダメだけど・・」

 「……怠業です!」

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