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プロローグ"異世界公務員!"

この世界、ユネクトには 9つの国 が存在する。

 それぞれが独自の文化と政治体制を持ち、時には争い、時には協力しながら、長い歴史を紡いできた。


 247年前、ユネクトを揺るがす大戦争があった。

 それは9つの国すべてを巻き込む激しい戦い。剣と魔法が飛び交い、竜が空を裂き、王たちが誇りと領土を賭けて血を流した時代。

 しかし、その戦争は突如として終結した。


 ――「迷宮」の発見と共に。


 突如として世界中にほぼ同時に出現した693の迷宮。

 その内部には未知の魔法、貴重な資源、そして凶悪なモンスターたちが潜んでいた。

 人々は恐れ、あるいは好奇心に駆られ、迷宮へ挑んだ。


 そして、やがて発見された事実。


 迷宮を踏破した者は、常人を超えた強大な力を手にする。


 ――ある者は神に匹敵する魔力を得た。

 ――ある者は伝説の武具を携え、不滅の存在となった。

 ――ある者は時空を超える能力を得たともいう。


 かくして、戦争は終わった。

 なぜなら、国同士で争っている場合ではなくなったのだ。

 世界の支配権を握るのは、もはや軍隊ではなく、迷宮を制する者たち だと誰もが悟った。


 9つの国は和平条約を結び、迷宮の管理と利用 に全力を注ぐことになった。


 そして、それから247年後。


 タイア王国。


 9つの国のうち、唯一の民主主義国家 であり、世界最多の 120の迷宮 を有する迷宮大国。

 そのため、国の政策は常に「迷宮第一」。

 「どう迷宮を活用するか」「迷宮を巡る国際競争をどう生き抜くか」が、政治の最重要課題とされている。


 迷宮は国家の経済を支え、観光資源となり、貴重な魔導具やレアメタルを生み出す。

 踏破者は英雄となり、その力は国の存続を左右するほどに強大だ。


 人々は迷宮に夢を見る。

 若者たちは強き冒険者を志し、伝説に名を刻むことを願う。

 強き魔術師は未知の魔法を求め、強者たちがしのぎを削る。


 そう、これは――


 世界の命運を握る者たちの、壮大な物語……


 ……ではない。


 この物語の舞台は、そんな激動の時代を生きる英雄たちの物語ではなく――ただの役所。


 タイア王国某自治体・迷宮管理部 冒険者支援課。

 そこに勤務するのは、伝説の冒険者でも、偉大な魔術師でもない。


 ただの公務員、新人職員・アリス・エンフィールド。


 剣を振るうのではなく、書類を捌く。

 魔法を操るのではなく、窓口で苦情対応をする。

 迷宮の謎を解き明かすのではなく、迷宮探索許可証を発行する。


 彼女の日々の仕事は、モンスターの討伐ではなく、「迷宮利用規則 第34条」の適用範囲について市民からのクレームを受けること だった。


 ――「規則では、迷宮への入場には事前登録が必要となっています」

 ――「しかし、規則の適用には例外があり……いえ、原則としてはですね……」

 ――「ちょっと待ってください、書類が……!」


 これは、戦いの物語ではない。

 これは、魔法と冒険の物語ではない。

 これは、ただの地味な役所で働く、新人公務員の物語である。


 だが――


 彼女が巻き込まれる事件は、決して地味では済まなかった。


 そう、迷宮とは、何が起こるかわからない場所。

 規則で縛ることなど、できるはずもない。

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