コンペイ島のヤマト
本編の更新が止まってますが、AIイラストの関係でもう少ししたら更新する予定です。
本編はネタが思いつかず気分転換に書いてみました。
「おはようございます姫様」
「おはよう!今日もいい天気だね!」
ここは現代でいうハワイ、オアフ島でここではコンペイ島と呼んでいた。この地は姫様と呼ばれる者もその周りも獣人を中心とした亜人達が占め人間は1人もいない。
強い日差しが照りつける中、今日も平和な日々が続いていた。
「おはようミイ!」
「おはようサラちゃん!こんな朝から見回り?」
「まあ、一応ここの警備を任されてる身だからね」
姫と呼ばれている猫族の女の子はミイという名前で、サラというのは犬族で女がてらに体格もよく一応近衛兵という身分を与えられてはいる。
この海のド真ん中に亜人のみの町があるのには理由がある。西の大陸も東の大陸も亜人は人間から迫害を受けまともな扱いをされず、奴隷として苦しい生活を余儀なくされていた。
亜人たちの先祖はその生活から逃れようと、当時は陸があるかわからない外洋に活路を見出すために賭けに出た。
そして、多大な犠牲を払いながらもここハワイの島々を発見、ここを亜人たちの安住の地と決め現在に至る。およそ100年前の出来事だ。
「ふう、今日も暑くなりそうだな」
姫様ことミイは特別扱いされるわけでもなく、他の者と一緒に労働に勤しむ。王も王妃もいるが亜人国家という体を取るためだけのお飾りに過ぎない。
しかし、そんな平和も長くは続かなかった。
「船だ!5隻ほどの船団がこっちに向かってきているぞ!」
見張りの者が町の中心まで息を切らしながら走りそう叫んでいた。
「何!まさか………」
サラがそれを聞き、視力を活かし報告のあった方向の海を見つめると。
「本当だ、大きな船だ。私達の船じゃない」
「え?それじゃ…………」
ミイが不安げに返答する、その不安とは天敵とも言える人間のことだ。
「まずいね、戦える者を至急集めるよ!」
その知らせは瞬く間に町中に知れ渡り、各々武器になるような物を持ち王の住む家に集まった。
ミイの父親であり王であるポンセは集まった者達に。
「まずは様子を見るのだ、話し合いが先だ。決して先に手を出すことのないように」
人間の恐ろしさは言い伝えで聞いてはいたが、現在この地に住む亜人は人間と直接会ったことはない。
話し合いが通じるかどうかも皆目検討もつかなかった。
「王様、そんな及び腰じゃ舐められないか?最初にガツンとやっておくべきでは?」
そう提案してきたのはサラだ、その部下達も武闘派であるためサラに同意見の様子だ。
「いや、事を荒らげて住民に被害を与えたくない。穏便に済むならそれに越したことはないだろう」
「そうだよサラちゃん、人間の戦力もわからないうちに手を出さないほうがいいよ」
父親の意見に同意するミイ、それを聞いてサラも従うことにした。
そして、その船影がハッキリと見えてくると住民達は不安の声をあげ始める。伝え聞いている人間が乗っていればその緊張はピークに達し大混乱になるのは必至だ。
そして、遂にその大型帆船が沖に現れるが、この町に大型の船が接岸出来るような港はないため小舟を出しこちらにやって来た。
「こりゃ驚いたな!何やら町のような物を見かけたと思ったら亜人どもの巣だったとはな」
上陸してきた人間の1人の言葉からはとても友好的ではないのは明らか、初めて見る人間に住民達の緊張も増してきていた。
「これはこれは遠路はるばるお越し下さった、私がこの地を治めるポンセという者です」
ポンセは数人の人間の前に歩を進め丁寧な対応を取ったが、人間達の顔は明らかに見下したような顔つきで鼻でせせり笑うように。
「お前が亜人達の長か、この地を治めると言ったな。だが我々が来たからには本日からこの地は我が神国アルテミスが治める」
ドヨ!
その言葉にポンセの後ろにいた亜人達から驚いたような声が漏れた。
「そんな!私達はこの地を追い出されてはもう行く場所がございません!」
ポンセが大きめな声で訴えかける、その後ろにいるサラとその衛兵たちは怒りで今にも襲いかかろうと武器を握っていた。
「お前達は我らが飼ってやる。これだけの奴隷を本国に持ち帰れば王もお喜びになるだろう」
「そんな、飼うなどと………。それは余りにも横暴ではありませんか」
「あ?我々人族の役に立ち、神国アルテミスのためになるのになんの不満がある?お前達亜人は下等生物の分際で人族に逆らおうというのか?」
全く話し合いにならない、ポンセを始め全員がそう思っていた。
「王様!もう我慢ならない!こいつらは話し合いなんかに応じるつもりなんかないよ!」
激昂したサラが大声で叫び、武器を手に10人ほどが前に出ると。
「ふん!おい、少し痛い目に合わないとわからないようだな」
クイッ
指揮官らしき人間がアゴをしゃくって合図のようなものを送ると1人の男が前に出てきた。
「まあ、2、3人殺せば嫌でもわかるだろう。女は使い道があるから男をやれ」
「弱い者イジメは好きじゃないんだけどな、まあ仕方ないか」
前に出てきた男の手には剣が握られていた。亜人の町では見かけないような立派な剣だ。
「火よ、我が剣に宿れ」
ゴオオオオオ!
男が何かを唱えると、握っていた剣に炎が纏い振りかざす。
ゴオオオオオ!
炎が地を這い、勢いよくサラの隣りにいた男の獣人に向かっていった。
「うわ!何だこれは!ぎゃあああああ!」
サラの隣りにいた男の足元から火柱が立ち上がり火だるまになるとその場でのたうち回る。
「伏せろ!みんなで砂をかけるんだ!」
それを見たサラは即座に部下達に命じ、それに呼応して数人で砂をかけ始めたのだが。
「何で!何で消えないんだよ!」
砂で埋めてもその隙間から炎が立ち上がり一向に消える様子はなく、部下の1人はその炎に焼かれ続け動かなくなってしまった。
「あああ、くそ!おい!おい!しっかりしろ!」
そう声をかけるサラだったが、全身が既に黒く焦げた状態で生きているわけもなかった。
「さて、もう1人はどいつにするかな?お前か?それとも……お前か?」
指揮官と思われる男は顔をニヤつかせながら指を差し、指を差された者は自ずと後退っていく。
「くそー!お前ら!ただじゃおかない!」
サラは激昂し、槍を手に男に向かっていく。
ヒュンヒュン!
その一歩を踏み出した瞬間、空気を切り裂くような音がしたかと思うと手に持っていた槍が斬られポトポトと落ちサラの眼前に男の顔が現れた。
「遅い、遅すぎる」
チャキっ
男の剣先がサラの喉元寸前に突きつけられ、それを見たポンセは慌てて言葉を発する。
「お待ちを!これ以上の殺生はお止め下さい!我々は逆らいません、どうか住民に手を出すことだけは………」
人間達の武装、見たこともない魔法に尋常ではない体の動きを見てポンセは太刀打ち出来るような相手ではないと悟ったようだ。
それはポンセに限ったことではなく、サラを始め全員が一瞬で感じていた。
「最初からその態度ならそいつも死ぬことはなかったのにな!ハーハハハ!」
指揮官の高笑いが響き渡り、そしてこの亜人の町は人族の手に落ちた瞬間でもあった。
ザワザワザワザワ
それから、沖に停泊する帆船から続々と人間が上陸し指揮官の元へ集まると。
「さて、まずは寝泊まり出来るような家を用意しそこで我々をもてなすようにな。こんなチンケな土地じゃ期待は出来んだろうが」
「はい、お前達食事の用意をな………」
ポンセは住民達にそう声を投げかけるが、その表情は恐怖に怯える者、苦々しく顔をしかめる者、サラのように怒りの表情の者など多種多様。
そして、全員がこれからどうなってしまうのだろうと不安でいっぱいであった。
「それと女の用意を忘れるなよ、そうだな10人ほど見繕って連れてこい」
「え!そ、それは………」
「人族に可愛がられるんだ、光栄と思えよ!ハーハハハ!」
そこでポンセの後ろに隠れるようにいたミイの姿を発見した指揮官。
「中々整った顔をした娘ではないか、少し若いがお前こっちに来て酒を注げ」
ミイは俗にいう美少女と呼ばれるに値するほど顔が整っており、細身の体に膨らみかけの胸が薄着の服装から見て取れる。
「やだー………」
時は少し遡り、この日から2日前の出来事。
「うーん…………あれ?ん?んー?何だ?」
コンペイ島の森の中、この地に似つかわしくない白の軍服に身をつつみ一振りの軍刀を手にした黒髪で黒目の男が目を覚ます。
「人間?オレは確か……………大爆発して………」
男の名前はヤマト、異世界とも言えるこの地に転生してきた。前世は人間などではなくあの世界最強と言われた戦艦大和、沖縄へ海上特攻を敢行し道半ばにして散り気がつけば人間の姿でこの地にて目を覚ました。
「訳がわからんな、意思がある…………それにこの格好は」
混乱するのも当たり前である、無機物だった物が意思を持つ有機物の者になったのだ。
「まあ、いっか」
考えてもあまり意味はなくどうなるわけでもないと判断したヤマトは辺りを見回す。
「ここはどこだ?やけに暑いな沖縄に着いたのか?」
ヤマトはとりあえず人のいる所を探し森の中を進んでいくと。
「お!家だ、あそこで聞いてみるか」
ヤマトのもう1つの物語がここから始まる。
こちらはモロのエロ描写はありませんのであしからず。