1話 凶器と狂気
「うん?ここは…」
気が付くと私は何もない真っ白な空間で一人だった。
「気が付いたか人間」「!?」
後ろから声が聞こえ、振り向くと先程まではいなかった5人の謎の人物が机を囲み、座っていた。
「…状況から察するに君たちは神というやつかな?違うかい?」
「ほう、飲み込みが早いな。気に入った!」
どうやら大柄の男は私の発言に興味を示しているようだ。
「気に入る気に入らないの話はどうでもいい。私は今一つの情報が知りたいんだ」
「何が知りたいんですか~?」
ふわふわした雰囲気の女が聞いてきた。
「いたって単純な答えだよ。おそらくだが私はあの鉄球で死んだんだろう?」
「そうですね~まさか生き返らせてくれとか言いませんよね~?」
「正直少し思ったがそれよりも…
私の装置で鉄球は何km出ていた!?」
「「「「「…は?」」」」」
「私が死んだということは少なくとも30km以上はあるだろう?あの装置の威力が知れれば私は満足さ!さあ、どうだったんだい!?」
「え、えっと…70kmですけど…」
「70kmか!結構出たねぇ!つまり単純計算磁石の方も約70kmほど出たとは…実に興味深い結果だ!」
私が結果に満足していると先程の女が質問してきた。
「あの〜…死んだことが怖くないんですか?」
「怖い?まさか!正直私が死のうと興味なんてないのだよ」
「え…?」
「私の命なんて二の次さ。私が知りたいのは私が作成した装置の結果だけさ」
「狂ってる…」
「狂っているだって?心外だね。私はただ結果が知りたいだけなのだよ」
そんなやりとりをしていると真ん中に座っている髭の生えた男が話しかけてきた。
「…話が逸れたな。時に人間、君は何故ここに来たかわかるか?」
「フム、確かに考えていなかったね。何か私がやらかしでもしたのかい?」
「まずそれが思いつくのかお前…」
「確かに君はさまざまなことをやらかしてはいるが…今回はその逆、君が善行をしたことへの褒美をやろうと思って呼んだのじゃ」
「善行だって?した覚えはないが…」
私には善行をした覚えがまったくなかった。
「死ぬ直前、女子生徒を助けただろう?」
「まあ、助けたといえば助けたが…まさかそれが善行なのかい?」
「当たり前だろう?だから君に褒美をやろうと言っているだろう」
「そうなのか…まあありがたく受け取っておくよ」
そうして私は褒美を受け取ることにした。
「そういえば君たちのことは何と呼べばいいのかな?」
「そういえば自己紹介がまだだったな。儂は6柱の一人の創生の神であるジェードじゃ」
髭を生やした男はジェードというらしい。
「私は自然の神のフェルサです〜よろしくです〜」
「俺はジェイク!闘争の神だ!よろしくな!」
ふわふわした雰囲気の女はフェルサ、大柄の男はジェイクというらしい。
「…ダイア、魔法の神だ」
「魔法だと!?実在したのかい!?」
「ああ、貴様の世界ではほとんど発見されていないがな」
「これは…実に興味深いねぇ…!」
吊り目の厳しそうな雰囲気の男のダイアが魔法の神と聞いて私は興味津々だった。
「え、えっと…私はマリアナ…文化の神…です…」
「…君、大丈夫か?」
「ひゃい!だ、大丈夫です…」
おどおどしている彼女を心配したが逆効果だったようだ。
「さて、これで全員の自己紹介が終わったな」
「ん?全員だって?」
私はジェードの言葉に違和感を覚えた。
「ジェード、君は確か最初に自分たちのことを6柱と言っていたはずだが…ここにいるのは5人だし自己紹介したのも5人だ。ならば残り1柱はどこへ行ったんだい?」
「おお、ちょうどいい。今その話をしようと思っていたのだ」
「ならばその話とは何なのだい?」
「うむ…実はな、残りの1柱である知能の神であるティフォンなのだが…あやつめ神の仕事がつまらんとかほざきよって現世に降りて行ってのう…あの馬鹿小僧が…」
「ジェード様、素が出てます」
「おっと失礼、オッホン」
危うく素が出ていたジェードをダイアが静止した。
「まあ話を聞いた限り私にその神を連れ戻してほしいという願いに聞こえるんだが、それで合っているかい?」
「そういうことです~」
「そう…デスね…」
「フム、正直私よりも君たちがやった方が効率が良いと思うんだが…」
「そうしたい所なんだが…現世に降りたことで我々では手が出せなくてな…」
「現世にはよほど緊急のことがない限り現世には干渉出来ねえのが俺ら神のルールなんだよ。だがティフォンの野郎神を辞めて人間として降りちまったから神のルールも影響されねえしよぉ…」
「至極めんどくさいものだねぇ…神というものは」
私たちが悩んでいると、ジェードが話しかけてきた。
「それで、引き受けてくれるか?」
「…引き受けたら褒美はどうなるんだい?」
「そうじゃな…ならば転生したあと裕福に生活できるようにしてやろう。それでどうじゃ?」
「そうか…じゃあ断るよ」
「「「「!?」」」」
私が丁重に断るとジェード以外の4人が驚いた表情をした。
「…先程お主は受け取ると言ったはずじゃ。何故気分が変わったのか理由を聞こう」
「そうだね…今の説明と褒美だけで引き受けるほど私は優しくないのでね。私を動かしたいのらばそれ相応の対価を要求するよ」
私が理由を説明するとマリアナ以外の4人が交渉してきた。
「な、なら闘争の神の名の下に闘争神の加護を与えよう!すごく強くなるぞ!」
「私は別に戦いたいわけではないよジェイク君」
「ならば魔法神の加護もつけるがどうだ?先程君は魔法に興味を示していただろう」
「確かに興味はあるが…先程も言った通りリスクとリターンが見合っていないのでね。諦めてくれ」
「自然の力を操れる自然神の加護もありますよ~どうですか~?」
「生憎私はあまり自然に興味があまりなくてね。残念だがそれじゃ興味をそそられないよ」
「…ならば先の3つの力と共に我が力の一端である創造の神力を与えよう。これは先程の3人の加護とは違いまさに神の領域にも匹敵する力だ。これでどうじゃ?」
「確かに便利だねぇ…だが私はもう実験の結果が知れただけで満足なのだよ。だから全員おとなしく諦めてくれたまえ」
「「「「ぐぬぬ…」」」」
4人が四苦八苦していると黙っていたマリアナが口を開いた。
「…もし創生神様の要求を飲まなければ私が貴方の作った装置を破壊すると言ったらどうしますか?」
「何だって…?」
「私が貴方を殺した凶器を破壊してあげると言っているんですよ。聞こえませんでしたか?」
「君…雰囲気が変わったね」
口を開いた彼女は先程までのおどおどしていた雰囲気とは打って変わって堂々とした言葉と威圧感を持っていた。
「それで?どうするんですか?物理学者もどきさん?」
「…随分と言ってくれるね?びびり君」
「さっきから神に向かって無礼ですよ人間」
「今更だろう?それに言葉遣いを変えてもどうせやることは一緒だろう?」
「それはどうでしょうね?」
「ストップストーップ!二人共ヒートアップしすぎです~!」
「争うのは構わんがせめて二人でやってくれ!」
「周りへの被害を考えろ…!」
「一度落ち着いて話し合うんじゃ!」
「…わかりました」
「ついつい白熱してしまったね」
「まったく…マリアナもはり合うんじゃない」
「申し訳ございません…皆さんが馬鹿にされているのがどうも許せなくて…」
「馬鹿にしているつもりはないんだがねえ…誤解を招いたようだね」
「さて…私の話、受けてくれるかな?」
「だから受けないと…」
「…!」
「…言っていたが先程の無礼のお詫びとして協力しようじゃないか!」
「おおそうか!なら良かった!」
「…」
拒否しようとした瞬間マリアナから物凄い殺意が向けられて私は慌てて引き受けた。
「良かった良かった!これで引き受けてくれなかったらどうしようかと思ったぞ!ガハハ!」
「さすがにそれは私の二度目の死に直結するから辞めたよ…」
「?」
「よし!話も纏まった所でお前には先程言った加護を授けよう!」
「そういえばそんなことも言っていたね」
「ウム、じゃあ皆の者、手を出せ」
「わかりました」
「はーい」
「どうぞ!」
「…私もですか?」
「当たり前だろう。さあ、手を」
「…わかりました」
そして神たち全員が手を重ねると光の線が私に向かって胸に当たった。
「おお…!これが加護というものか…!」
加護を受けた私は全能感に満ち溢れていた。
「よし!ならばティフォンのことを頼んだぞ!」
「ああ、待っていてくれたまえ!」
そして体が光に包まれ、私は意識を失った…
「…行きましたね」
「そうか、マリアナよ、もういいぞ」
「ダハ~~ッ!疲れた~!」
「お疲れさまです、マリアナさん」
「完璧な演技だったな!俺も本気で怒っているかと思ったぞ!」
「まったく、創造神様も無茶言いますよ!『これから来る人間に転生させるために怒ったふりしてくれ』って!危うく本気で怒ってバレそうになるこっちの身にもなってください!」
「すまんすまん。彼の性格上こうでもせんとダメそうでな」
「おどおどしている様子を見せて油断させたあと本性を出す…アドリブであれだけの演技ができるとは驚きだ」
「それにしても…本当に彼で大丈夫なんですか~?自分を殺した凶器の結果を一番に聞くくらいには狂ってますよ?」
「まあフェルサの言い分も分かるが…すでに選んだのだ。ならばあとは信じるだけだ」
「そうですか…」
「頼んだぞ、円野 環よ…」




