第四十八話 レールロードエンパイア
1945年十一月十三日 遂にこの日は来た。
北米攻略作戦、作戦名は何処が付けるか揉めたすえ、順当に大日本帝国による
「決号」作戦で決まった作戦の第一波がアメリカ合衆国ワシントン州に到着したのである。
はて?何処から?
見た所、海上には一隻の輸送船も見えず、空には輸送機らしき影もない。
只今北米時間で朝の五時、皆さまよくお休みです。
迎撃の一つもないではないか?
本当に何処から来たの?
三時間後、シアトルキングスポート駅はあり得ない客を迎えていた。
どうにかこうにか再建した駅に列車それも装甲列車が猛スピードで突入してきたのだ。
アイエ!装甲列車!装甲列車何で!
何で?如何して?と言う間もなく急ブレーキで止まった装甲列車、アメリカ軌道に合わせた九四式装甲列車改は重機関銃をばら撒きその場に居た人間をなぎ倒す。
動く者全てがなぎ倒され血だまりに沈む駅に降り立つ悪鬼たち。
腕章には呪われし鉤十字、髑髏の紋章ピカピカとリバティ抹殺軍団只今惨状。
「本当に上手くいきましたね少佐殿、私、こいつに乗せられたときは冗談だと思いましたよ」
「私もだよ、曹長。だがまあ、無事到着して良かったじゃないか」
メイド謹製装甲客車より降り立った、親衛隊少佐と先任曹長はまだ信じられない風で辺りを見回す。
アメリカだ、本当にアメリカ合衆国に我ら親衛隊は降り立ったのだ。
アシカどころではないな。
では何だトド?象アザラシ?
まあ良いか。無理を言ってまで一番槍を買ってでたのだ。
成功しないと伍長殿が五月蠅い。
「良し、各自所定の行動を実施。今日中にシアトルを制圧するぞ」
「了解しました。少佐殿」
親衛隊少佐の号令一下、悪鬼の軍勢、SS人狼大隊は動き出す。
ソ連軍の奇襲の際、少年と言って良い年齢ばかりで編成されたこの大隊も、今や立派な戦士。
大人でも尻込みするどんな残虐な任務であろうと嬉々として遂行する理想の兵士だ。
これ程、民兵共の立て籠もる市街地制圧に適した部隊もあるまい。
本当に良い子たちだ。私も鼻が高いよ。
育ての親である親衛隊少佐は胸を張る。
「でっ、少佐殿はいかがされるので?陣頭指揮は御取りにならないのですかな?」
「虐めないでくれ、曹長。私はいま気分が優れないんだ。しばらく休んだら行くよ」
「幾ら、タダだからと言って。駅弁とやらを五人分も食うからだよ、このデブ!」
「言ったな!自分だって二日酔いじゃないか!知ってんだぞ」
「食い過ぎで動けないあなたよりましです!」
ギャーギャー言い合うデコボココンビ、大隊員たちは慣れた物だ。
「「「仲は良いんだよなあれで」」
大東亜枢軸連合襲来す。
この報告は直ぐには西海岸防衛司令部には届かなかった。
届いた後も事実確認に追われて時間を空費、シアトルはおろか、十六日にはタコマ、ポートランドまで制圧されてしまう。
相手は既存の路線で爆走してくるのだ、早い早い。
こまで後手後手なのは訳がある。
当たり前だが相手は上陸してくると思っていたからだ。
それを陸上、それも海運が使えない為に真っ先に再建された鉄道を使って進撃してくるなど誰が思うだろうか。
陸上兵力の殆どは、戦艦爆弾の爆発圏外に張り付けて置いていたのだから、後ろから現れた敵に、次々と包囲されていく。
敵が止まったのは二十一日サクラメントを包囲下に置いてからのことであった。
合衆国の作戦計画では戦艦爆弾なり自爆核兵器なりをやり過ごし、上陸してきた部隊を核攻撃後、内陸で受け止め、さらに航空攻撃で撃滅する予定だったのだ。
陸軍は今までの予算不足で陸上兵器にまで手が回っていなかった。
急ピッチで揃えているが、習熟出来るかは別の話だ。
その結果ベテラン部隊は貴重も貴重、その貴重さ、ダイヤモンドが金塊かと言うくらい。
その為、主力は州軍と予備役、新人ばかり。
武器は有っても運動戦は覚束ない。であるから基本的に張り付けて運用。
部隊移動に関しては第一次大戦型の鉄道での移動が主力になる。
そこにこれだ。
敵上陸、、、出現としか言いようがない事態を受け入れた時にはサクラメントは包囲されていた。
アメリカ軍は悪くない。
大東亜枢軸連合軍、いや大日本帝国が頓智機すぎるのだ。
出現と言うか、ポップした言うか、湧いて出たと言うか、兎も角、常識外れなんだからしょうがないだろう。
頓智機軍団が何処から来たかは、説明するまでもないだろうが述べて行こう。
カナダさんとその怖いお兄さんが飛行禁止、軍事通行禁止だと言うならば裏をかく。
地上が駄目なら地下がある。
「地下移動禁止だなんて誰も言ってないもんね」
言わないんじゃない、常識で考えれば出来ないから態々言わないだけだ。
子供の言い訳じゃないんだぞ、本当に実行する奴が有るか馬鹿!
だってメイドさんが出来ますって言うから?
メイドさん!甘やかすのもいい加減にして!何?それが存在意義?
じゃあしょうがない。
奴らは地下から来た!
舩坂弘軍曹以下超人三人組に殺された助教授が、捕らえた振動はこの工事の音だ。
アラスカ、米本土間直通トンネル!
これが米本土攻略作戦の為の秘密計画である。
こいつの計画着手の為だけに、核攻撃を受けてでもアラスカを奪う必要があったのだ。
上陸作戦無し、玄関空けずに即侵略の効果は絶大。
先に挙げた合衆国側の混乱した対応もそうだが、一番は彼らが核兵器を易々とは使えなくなった事。
先にも述べたが上陸部隊がもたついている所に、一発ドカンと食らわす腹積もりだったのである。
迎撃は熾烈で有る事を覚悟し、自爆覚悟の決死部隊を編制すらしていたのだ。
それもパーだ。
さて、アメリカ滅茶苦茶にし隊こと大東亜枢軸連合であるが、どんな装備でやってたのであろうか?
枢軸の皆さまなど、着の身着のままで来たのであるから、全部日本製である事は間違いない。
ここで皆様に想像の翼を広げて頂く為に一部を紹介しよう。
全部言ってるとキリがないのでご容赦頂きたい。
先ず小銃、出来ました半自動小銃、試製が取れたぞ一式小銃。
機関短銃なのか短機関銃なのか、どっちかにしろ百式機関短銃乙。
一分隊一丁の一式軽機。
ドイツ側が頑として受け取り拒否、一式重機。我がまま言うなMG42。
ドイツから矢張り奪ってきましたパンツァーファウスト100
。砲火器としまして、自動車化砲以外は五式十五糎自走砲ホキ、自走対空砲ソキ、四式重迫撃砲 等取り揃えてございます。
飛行機は勿論、あんたが主役、火竜ことフッケバインを基本装備。
爆撃のお供に史実での火竜であるMe262爆装型日本名橘花。
戦術爆撃に使うと効果的と分かり、ガンガン使っております富岳が続きます。
兵員移動は皆さま好評、密閉型になりました一式半装軌装甲兵車。
他にもロケ車とかシケ車矢張りキリがない。
忘れていました肝心要のあれが有りません。
戦場の破城槌でありハンマーで有る戦車が。
サクラメント攻略は終盤に掛かりましたのでその活躍をご覧ください。
サクラメントが崩壊していく。
華やかだった通りも、忙しく人が働いていた野菜取引所も皆皆崩壊していく。
15センチ砲が撃ちこまれ、ロケットが飛び込み、500キロ爆弾が降り注ぐ。
上空では黎明のジェット機と数を頼みにした終焉のレシプロが争っている。
だが人々は諦めない。
ここで負ければ待っているのは強制収容所だ。
シアトルでナチが何をしたのか皆知っている。
奇妙な果実になるくらいだったらここで死んだがました。
だがその抵抗を終わりに近い。
最後に残ったM4シャーマン四両は、生き残りの寄せ集めと共に女子供を逃がす為、
これより死の突撃を行うつもりだ。
嘘のようだ。つい先日までこの町は平和なはずだった。
そりゃ世間は大変で物は無くなってきたが、農業生産の中心地であるこの町は難民に分ける事が出来る位の食い物もあったんだ。
畜生。
辺りは妙に静かだ。
あいつ等俺たちを殺し尽くしたと考えたのか?
そんな事ない、ジャップ共は狡猾だ。
つい先だって投下してきた降伏を促すビラだって信じるモノか!
馬鹿にしてやがる!何が負けを認めてお腹一杯食べましょうだ!
聞こえた!キャタピラの音だ。アイツだ!アイツが来る!
「停止!停止だ!聞いてるのか!中村軍曹!」
「はいぃぃ。聞いております!」
女性兵士を間に挟むから如何しても反応が遅くなる。
日本軍の支援に当たった我が中隊は、
戦車が有り余っていると言う馬鹿な理由で無理矢理バラバラに配属されてしまった。
クルツの奴ホントに車長が務まるのか?
あいつは砲手だぞ。
何が優秀なドイツさんの戦車戦技術を吸収したいだ。
言い加減すぎるぞ日本軍!
それにこの戦車、本当に現代に戦車か?
時代遅れだろこんな物?
デカい事は良い事だとは言え、これでは機動力を生かせないだろうが!
戦車の命は機動力だろ!
「車長、前方から駆動音、恐らく戦車です」
「分かった、弾種、、、確かタ弾だったか。装填!」
贅沢は贅沢なんだよ。
徹甲弾は廃止して榴弾以外全て成形炸薬弾とはドイツも見習って欲しい。
でもなぁ。
見えた!民兵も一緒か、、
可哀そうだが。
「距離400!情け無用フォイヤ!」
戦闘は三分と掛からなかった。
100ミリと砲の猛射を受け四両のM4は焦げた置物と化す。
残った民兵も副砲の47ミリが排除。
後方から隠れて近づこうとした正規兵も後部の7.7ミリが掃除する。
戦闘は終了した。
動く要塞の如き戦車と、目に付く者全てにパンツァーファウストを叩き込む、歩兵の連合に勝てる奴はそうはいない。
贅沢だ贅沢すぎる。
パンツァーファウストは対戦車火器の筈だが日本軍は手ごろな歩兵砲代わりに使っている。
フリーガーファウストも歩兵砲代わりに人気だと誰か言ってたな。
それにしても、、、、
また故障だ!
超重多砲塔戦車なんぞ無理があるんだよ!150トンだぞ!
「あー、フロイライン頼めるか?」
「畏まりました」
車長の指示で女性兵士たちが下りる、フワリとした浮遊感と共に超重戦車は動き出す。
これだ頭がおかしくなる!
さっきも思ったがこいつは150トン何だぞ!
何で女五人で持ち上げられるんだよ!いや、考えるのはよそう。
東洋の神秘だ、東洋の神秘。総統もそんな事言ってた。
確か東洋の神秘の国が味方だから負けないとか。
ポルシェ博士の協力によりエレクトリックなパワーと前面90ミリ、側面後面70ミリの重装甲を手に入れた、大日本帝国の誇り超重戦車オイは150ミリ砲から100ミリ砲に換装しても脅威の活躍を見せている。
メイドさん込みであるが。




