第四十四話 初夏の元気なご挨拶
1945年5月 日本軍はアラスカ準州に上陸。
一週間に渡る激戦の末これを攻略した。
これに対しアメリカ合国は片道での核攻撃を実施。
上陸部隊への核投下は防げたものの、盾になる形で装甲空母千歳が轟沈、巡洋艦多数が被害を受ける。
日本海軍の艦載機が未だ烈風改で有る事を考えれば、よくぞこれだけの被害で済んだと言えるかもし知れないが、海軍の衝撃は大きい。
技術力では未だ米国には届かない。まざまざと現実を見せつけられる事になる結果だ。
しかし、タタではやられないのが、この世界の頓智機枠であるメイドwith日本軍、新たなる贈り物が空より送り込まれる事になる。
拝啓、そろそろ初夏を迎えますね。米国さんには御変わりあり過ぎでしょうが、いかかがお過ごしですか?西海岸の復興はお済ですか?大量発生した避難民の皆さまもお元気でしょうか?
米国経済の動向、私どもも心配しております。早く皆様が楽になります様に、些少ながらお手伝いをさせて頂きたく、贈り物をお送りいたします。
敬具。
追伸 大西洋ではボーグ級さんが独伊連合艦隊の襲撃を受けて大損害とか、もっと被害を受けて欲しいので、枢軸国の皆さまには、雲龍級空母と綾瀬型軽巡を二十隻ずつ供与致します。
楽死んでください。
愛を込めて大日本帝国より。
近頃、大日本帝国には連日大枠付きで臨時雇用募集が新聞に載っている。
年齢不問性別男性のみ、簡単な軽作業です。
海の見える仕事場で働いて見ませんか?
朝九時から夕方五時まで。
単純作業に自信のある方優遇。出来高制、ボーナスあり。
詳細はお近くの陸海空の募兵事務所まで。
六月八日 アラスカ準州を奪われた合衆国は一段と警戒を強めている。
戦艦爆弾は西海岸沿岸を破壊しつくしたと考えたのか来襲していないが、相手は常識外れの事をしでかす悪の帝国である。
いつ何時どんな頓智機をしでかして来るか分かったものでは無い。
カナダは英連邦諸国と共に本土と足並みを揃えて中立を宣言し、連合、枢軸、日本全ての勢力に国境を閉ざしている。
もし侵犯したなら反対勢力に軍事通行権を提供するとの脅し付きでだ。
いっそ軍事占領してやりたいが、そんなことをしてニューファンドランドなりカリブ諸島なりを枢軸に提供されたらエライことになる。
戦争が終わったら見てやがれよ!
と思いながら大人しくするほかはない。
今の所南米各国も核の脅しで寝返っていないが、怪しい動きをしている国は多いのだ。
おい!メキシコ!お前の事だぞ!何だその目は!第二次米墨戦争を始めても良いんだぞこちらは!たく、どいつもこいつも。
この日、西海岸海上を警備していたB29は、上空を飛ぶ黒点の群れを発見した。
黒点は、みるみる増えていき黒雲の如き一群を形成する。
あれは何だ?鳥か?飛行機か?
いや気球だ!後から後から雲海の如く群れを成し、気球の群れはやって来た。
空を行く初夏の贈り物。
お元気ですか風船爆弾。
ジェット気流でただいま推参。
史実ではたいして効果を上げなかったが、米国政府はこいつの事を軍機に指定し国民には知らせなかった、ビックリドッキリ兵器だ。
効果を上げなかった原因は数が少ないからだ。
コンニャク糊の生産には限度があるから仕方がないね。
だが今のこいつは違う!メイド工業が総力を挙げて生産し、陸海空特にやる事の少ない海軍から人員を徴発して飛ばし続けているのだ!
バイト募集もこの為だ。
行け!ふ号兵器!突如脳内に溢れた忌まわしき記憶と共に!
その様な事知らない米国さんは大混乱。
史実と違い今回は秘匿どころではない。
ボカンボカンと不規則に爆弾を落とす風船が、ユーラユーラと本土に迫る。
全米驚愕死のバルーン。
落とせ!今すぐ!飛べる物なら何ででも良い!
機銃が付いてるならそれで構わん!落とせ!落とすんだ!
ええい!数が多すぎる。どれだけ来るんだ。
撃てるなら何でも良い撃ち落とせ!ブローニングは腐るほどある。
弾だって幾らでもある。撃て兎に角撃て!
ピクニックに出かけた家族が吹っ飛ぶ、教会が燃える、送電線が千切れる。
ロスアラモスにも落ちた!
シカゴは止めてシカゴは!誰かー止めて!あー焼夷弾が混じってる!森が森が燃えるー。
さてどれだけ送り込んだんですか?日本軍の皆さん?
因みに史実は計九千発だそうですが。
五万?違う。十万?
もっと多いの。三十万位?
えっ?もっと多い。もっともっーと多い?良し五十万これでどうだ!違う。、、、、答えは?
「百五十万です」
Way?耳が遠いものでもっかい言って?
「百五十万です」
風船爆弾には十五キロ爆弾が一発搭載できる。
百五十万×十五だから、、、二万二千五百トンだね。
焼夷弾があるにしても、スゲー数だ。
打ち上げる人間がヘトヘトになるので一日送り込める量は限りがある。
だが戦争続く限り幾らでも行くぞ覚悟しろ!
しかし、全てが米国本土に落ちてくれるわけではない。
物が気球だあっちへフラフラこっちへフラフラ。
あっカナダの方へ飛んでいく!落ちた、、、あーあしーらない。
「おいコラぁ!どこ見て飛ばしてんだ!」
怖いお兄さんだ!怖いお兄さんが来た。
ふざけるのもこれくらいにしよう。
悲しいかな、ふ号兵器の活躍もカナダに落ちてはこれまで。
カナダ如き無視しろよ。
とお思いだろうが、英連邦諸国がもし敵に回ると厄介なのは日本とて同じなのだ。
B29がインドなり香港なりで活動し始めてらどうだろう。
根拠地を踏みつぶす前に、支那なりシベリアなりに核を投下したとすれば大日本帝国のメンツは丸つぶれだ。
勝ちに勝ち勝利しか知らない国民様が黙っているかしらん。
甘やかされ、権利の味を知り、好き勝手言える日本だからこそ世論には弱い。
米国は日本を未だ全体主義国家と思っているが、それは違う。
付き合いの長いイギリスはそこん所、良ーくご存じだ。
だからこそ強気に抗議してきた。
持てる者の弱さを付付け、痩せても枯れても大英帝国、隙を見せた方が悪い。
当事者カナダと仲介のヤクザ者は金を脅し取り、
「上空飛行禁止だからな守れよ!」
と言って去っていった。
御免さい、御免なさい、すいません許してください、、、行ったな?へっ甘ちゃんが!
次行くぞ!空が駄目なら次の手だ。
ふ号には悪いがアイツは頓智機四天王の面汚しよ。
おーいメイドさん、例の計画進捗いかが?
海の戦艦爆弾、空の風船爆弾、次なる四天王の正体や如何に。
枢軸国陸上部隊は此処の所暇をしている。
激戦の海、緊張の日々を送る空に比べ、米国上陸の危険性は少ない。
勿論ただダラダラしている訳ではない。
日本より供与されたレーダー網の配備や凄まじい勢いで発展する対空兵器の習熟には力を入れている。
だが陸戦はなぁ。
ナイナイそれは無い。
アメちゃん如何やら核に御熱心で本土防衛に力は注いでも外征軍編成は遅々としている。
国民には悪いが暇だ。
暇が一番、平和が一番、あっ其処のパルチザンは吊って置いてね。
チトーとか言う奴、まだしぶとく逃げ回りやがって困るねしかし。
ああ、そこの村は焼くから。
ロシア系住民、、、、、?、、、埋めろ。
そんな日々も終わりを告げる。
本格的な夏も始まる七月初旬、枢軸各国は移動命令を陸軍に発する。
目的地は日本本土。
シベリア鉄道二週間の旅だ。
尻の肉が落ちない様にクッションは持って行きなさいよ。
「マジか遠いね日本とは」
「俺海外行くの初めて」
「日本軍には女がいるんだろ、俺ワクワクして来た」
「二日酔いの薬は必ず持って行け?何で?行けば分かる?はい」
米国もこれは察知する、あいつ等何を企んでいる?
だがその疑念も直ぐに喫緊の課題の前に消えてしまう。
なにせあいつ等は、着の身着のまま、小銃一つ持たないで移動すると確認されたからだ。
なに考えてんだ馬鹿か?
うん、そうだね馬鹿だね。
普通に考えれば馬鹿の所業だね。
演習一つするんだって小銃一つ持たないでどうするんだ、だよね。
英国は気づいている。
先行する将兵は戦車兵ばかり、次に運転技能持ち、戦闘機乗り、怪しい怪し過ぎる。
だが言わない、米国には言わない。
滅びるなら勝手に滅びろ。
米国はあいつ等特に日本を甘く見過ぎだ。
まだ講和出来ると考えている。
甘いんだよ植民地人。
核が有るから勝てます?馬鹿が。
湯川とハイゼンベルクが何処に行ったか気づいてないのか?
まだ温かい内に死体をあさる手立てを考えなくてはな。
核は独り占めして良い物ではない。
皆の物だよ、元植民、、、、、これから植民地に落ちる国家よ。
秘密裏に、亡命希望を出している科学者のリストを手にした英国の思考は。概ねそんな処である。




