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ミミック大東亜戦争  作者: ボンジャー


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第二十三話 海賊版大氾濫

 1939年6月5日 クレムリンからあの男がやって来た。男の名はゲオルギー・ジューコフ。史実独ソ戦勝利の立役者にして、ソ連型戦闘ドクトリンを完成を完成させた男である。


 実は、突然に戦争が始まって驚いていたのは大日本帝国だけではない。

 

 近いうちに、戦争馬鹿が戦車で、侵攻してくることはソ連とて覚悟していた。


 だからこそ、無理に無理を重ねてまでT32を大量に配備したのだ。

 

 満ソ国境に、航空戦力800機、火砲700門、戦車500両、総兵力10万の大部隊を張り付ける無理をしたのも極東を手薄にして日本が余計なスケベ心を出すのを抑制したい一心から。


 「「これだけの兵力。幾ら日本でも易々と仕掛けてはこないだろう」」


 だが、メーターを振り切るほどの超濃度の名誉馬鹿が日本に居た。


 神出鬼没の迷参謀、辻正信少佐。彼が居たのが日ソ両国に不幸であろう。

 

 モンゴルへの、関東軍主導による干渉作戦にソ連極東軍の危機レベルは急上昇。


 中国共産党は月の彼方まで吹っ飛ばされ、社会主義の同志は、極東の絶滅危惧種に転落しているのだ。


 モンゴルまで失ったら極東の赤いお友達は、ドードー鳥と同じ運命をたどる事になってしまう。


 初戦での大攻勢と、ハルハ河西岸に築かれた塹壕陣地を、ソ連軍が頑として死守する構えを見せているのは。この様な理由があったからなのだ。


 そしてこれだけの大事件、モスクワの鉄の男に隠し通せるわけがない。

 

 「遂に来たかマカク共。かかってこい!相手になってやる!」


 鉄の男スターリンは驚きよりも来るべきものは来たかと言う心境でこの報告を受け入れた。


 日本の異常な建艦能力と、信じたくない程の生産力は、音信途絶えた極東の同志により把握している。

 しかし、弱気は許されない。


 ロシアの大地は弱者を許容しないからだ。


 弱いとみればたちまち食われる蟲毒の如き世界で生き抜いて来た男は、覚悟を決めていた。


 長くなったが、この様な経緯も元にゲオルギー・ジューコフは極東に到着した。彼の後ろからは本気のソ連赤軍がシベリア鉄道に乗り到着予定。


 ソビエト連邦は不退転の決意で大猿討伐に挑むつもりなのだ。

 

 


  悲壮な決意、真に結構であるが、勇者ジューコフの猿討伐は残念な結果になりそうである。


 なった。 


 1939年7月6日 ウラジオストク港に襲来した連合艦隊が、空母艦載機による徹底攻撃と艦砲射撃で市街地ごと、東方征服の名を持つ都市を儚き幻想に変えてしまったのを皮切りに、日本軍は全面攻勢を開始した。


 「「ジュネーブ条約違反?赤が死んだからどうした!相手が仕掛けてきたのだこれは自衛行為!」」

 

 大日本帝国もソ連が本気になった事ぐらいすぐわかる。


 シベリア鉄道が引っ切り無しに行ったり来たり、イルクーツクのスパイからは異常な量の物資集積の情報が届いている。赤い津波が押し寄せるのを黙って待つ馬鹿は居ない。

 

 赤熊がスタンピートするなら鼻先を潰す。


 ウラジオストクとハバロフスクに展開している部隊は無視する。


 満州に侵攻してくるなら空爆と砲撃で追い払う。


 穴に籠らない熊など襲撃機と列車砲の良い餌でしかない。

 

 連日の航空撃滅戦でソ連側の戦闘機は払底しているのだ。制空権無き陸軍など、あえて言うならカスである。


 目指すはイルクーツク。


 先頭に立つは元32、現二式中戦車。

 

 「「ソ連君良いお中元を有り難う。お礼にたっぷり鉛玉をご馳走するね」」


 満州に置いてきた列車砲の代わりは、本土より進出した新鋭機一〇〇式重爆撃機が務める。死ぬがよい。


 


 「嘘だと言ってくれ神様」

 

 一月前の機動戦が嘘のように、ダックインする事を余儀なくされたT32のキューポラで、赤軍戦車兵ウラジミル軍曹は神に祈りを捧げていた。


 憎きマカクの戦車を散々に打ち破り意気揚々と味方に合流したまでは良かったのだ。


 それから先はあれよあれよと言う間に動きが取れなくなってしまった。


 味方の上空援護は日増しに摺りつぶされ。架設橋は何度掛けても爆撃され、近頃は昼夜問わず爆撃機が飛んでくる。


 戦車戦にしてもそうだ。


 始めのうちは余勢をかって盛大にやっていたが。相手は次から次に湧いてくる。


 夏のシベリア名物蚊の大群の如き戦車の群れ。


 味方戦車は一両また一両とやられて行き、今では自分の戦車を含めT32は8両を残すのみとなってしまっていた。

 

 相手も相手だ、簡単に死んでくれない。


 やったと思うと女と思しき戦車兵が中から飛び出してきて負傷者を運びだしてしまう。


 それもとんでもない速さで。


 今でも信じられないがヒラヒラした服の女が撃破された戦車をたった三人で引きずっていくのを見たのは一回や二回ではない。


 (悪夢の中に居る様だ、誰か俺を叩き起こしてくれ)


 極めつけにこれ、いま双眼鏡の向こうに見える景色。砂塵を上げて進撃してくる戦車の群れは、どう見ても自分が乗っているT32ではないか。


 「新鋭戦車のはずだろT32は!何で向こうにいるんだよ畜生!おかしいだろこんな事!機密はどうしたんだよ機密は!」


 「神様お願いです。もう酒はやめます。家の隣のばあさんを密告した事謝ります。だから助けて」


  現実は無慈悲である。新鋭戦車T32の装甲が貫かれ、ウラジミル軍曹が神の御許に旅立つのに9分と43秒かかった。



 

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