なろう系テンプレを否定してみる
こんばんは、でもんです。
ご無沙汰しております……という程、名も知れていませんので、初めまして! という方がしっくりくるでしょうか。
さて、タイトルで釣る気満々の使い古されたネタをぶっこんでみましたが、久しぶりのエッセイで、いわゆる「なろう系」と呼ばれるテンプレを否定してみたいと思います。
まず重要なのは定義ですね。
何をもって「なろう系」テンプレとするかですが、一旦、以下のものを狭義のテンプレと勝手に定めさせていただきます。
・異世界転移転生からのチート無双
・追放系ざまぁからのチート無双
そして、大きな理由があって、以下は今回の否定対象外とします。
・婚約破棄/悪役令嬢
対象外とした理由も後述します。
ではさっそく、定義した狭義のなろう系テンプレを否定してしまいましょう。
なろう系テンプレは駄目だ!
なぜなら――
……難しいんです。
はい。
いきなり弱腰にいきましたが、実はこのチート無双や追放ざまぁのテンプレの構成。
非常に難しいのです。
序盤のテンプレとしては、作家に優しく「トラック転生」という言葉が揶揄されるくらい、様式化されているのですが、序盤から終盤までの構造化がされておらず、とにかく序盤は長編用の素材のように見えるくせに長編には全く向いていないのです。
実際、ストーリーを組み立てたり、キャラクターを立てる突出した能力が無いと、すぐに息切れします。
断言してしまいますが、「なろう系テンプレ」は「テンプレ」としては未完成なのです。
そもそも異世界転移転生は、出オチですし、追放系ざまぁも、復讐が終わる第1章終盤あたりで物語の一番大きな魅力は終わります。
チートを極めれば、主人公のスキルがインフレするほど展開は単調となり、一方でインフレをさせないと序盤が単調となるか、非常に重いものになる。
序盤の盛り上がりを見込めるために多用しやすいテンプレでありながら、序盤以降の構造が未提示なために、生半可な作家としてのスキルでは、本来手をだすべきテーマではないのです。
色々な作品を読ませていただきましたが、なぜ主人公が戦い続けなければいけないのかを読者に提示できない作品は、気が付けば単調なレベル上げのRPGのようなループに入ってしまいます。
そして作家は手を出してしまうのです。
エロ要素の無い禁断のハーレムルートへ。
チートからのハーレムは、もはや様式美すら感じられる定番ですが、これもまた難しいのです。
キャラが乱立し、各々のキャラを立てるためのエピソードは数が増える上に長く、また鈍感キャラになろうと絶倫キャラになろうと、男女ともにキャラの賢さは減ります。
なにせ深く考えたらハーレムなんて維持できませんからね。
主人公は好きな異性の順位付けをできず、またハーレムファミリーは、なぜか独占欲といった人の機微を失うため、複雑な人間模様が描けず、短絡的な思考を持つ平坦なキャラになっていくのです。
思いません?
現代社会から転移転生した主人公が何の罪悪感もなく奴隷を買ったり、奴隷として買われたエルフが購入した主人公をさしたる理由無く好きになった上に超優秀だったり……
登場人物、おつむが弱いですよね(暴論)
これもテンプレを使うがゆえの難しさなのです(飛躍)
さて、一歩進めてハーレム整理のために一度、学院に入学してみましょう。
はい。
巷で非常に評判の悪い学園物のできあがりです。
そもそも主人公が成長していく物語を描くはずが、序盤でインフレを起こし、完成してしまった主人公の物語です。それが学校に入って圧倒的な無双するわけです。もうイジメですよね。
そして虐げられたニューヒロインに言うのです。
「立ち上がってみろ」……と。
もちろんそんな作品ばかりでは無いのですが、とにもかくにもテンプレが提示した序盤から「もうちっとだけ続くんじゃ」がいつまで続くんだって思ってしまいますよね。
ここまで来たら、後は世界が敵に回ったり、神が敵に回るしかありません。
そして互角の勝負を繰り広げた上で、これまでの出会いの力が結集した大団円。
その後、延々と続く日常回の後日談。
もちろん先鞭を付けた諸先輩方や、これほど難しいテンプレを易々と乗りこなす天才諸氏はおられます。
私自身、滅茶苦茶面白いと感じた作品に沢山出会っています。
ですが二番煎じ、三番煎じ、出がらしといった後発組がテンプレとして採用するには苦しすぎるのです。
書籍化までされた作品にも関わらず、途中で失速するケースも多く、最近では作家が一番手を出してはいけないテンプレなんじゃないだろうかくらい思ってしまいます。
さて。
最近のなろうの主流になりつつある「婚約破棄/悪役令嬢」。
私はこのテンプレだけは今回の否定対象から外しました。
あちこちで書いてきましたが、このテンプレはテンプレとして非常に秀逸です。
異世界チートのような主人公がインフレを起こして、あっさりと最初の敵を倒して、その後ダラダラと強くなる必要が全くなく、破棄をした相手を見下ろしつつ、別の恋愛相手をみつけてハッピーエンド。
ここまでがテンプレとして組立られているのです。
恋愛物である以上、恋の成就で完成であり、綺麗に終わることができます。
派生形や応用は多々ありますが、序盤から終わりまでのテンプレとして構造化されており、短編から書籍1冊程度の長編くらいにすっぽりと収まりやすいのです。
私も何本も書きましたが数千字程度の短編との親和性も非常に高く、女性主人公が多いため忌避してしまう作家の方もいるでしょうが、お題として書いてみることを私はお薦めします。
そして、書きやすいように見える狭義のテンプレは、特に初心者にはお薦めしません。
本当に難しいです。
激むずです。
私にはまじで無理です。
いわゆる「なろう系」と一括りに批判をする方もいますが、そもそも難しいテンプレに手を出した序盤だけ面白い作品の残骸が非常に多く、また序盤のスタートダッシュ力はあるため、まだ2、3万字の段階でランキングに載ったりもするので、辟易してしまう人が一定数いるんだろうなと思っています。
でも、私はあえて言いたい。
テンプレ作品がつまらないんじゃない。
なろう系のテンプレが構造的に難しいのだ……と。
私はいわゆる「なろう系テンプレ」を否定します。
そしてこの難しいテンプレを踏み台にした素晴らしい作品を提供していただける勇者を鋭意募集しています。
だって序盤は本当に面白いですからね。
これで終盤まで面白い作品だったら、打ち震えて喜んじゃいますよ。
ではでは!
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