カフェテリア事件・2--胡麻--
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始めて書いている小説ですがたくさんの人に読んでいただけて嬉しいです
『…………さあ…おいで……』
『……うふ…くすぐったぁい』
おしゃべりをやめて静かにすれば確かに扉の奥から漏れ聞こえる聞きなれた声。
今日、顔を合わせないよう学園中移動して歩いた努力を無に帰してくれる第二王子と男爵令嬢の秘めやかな状況を匂わせる声が届く。
少しの間三人とも扉へ視線を向けたまま固まっていたが、見えているのが扉なのに、どうにも汚らわしい気持ちが沸き上がります。
ジョアンナ様もアンジュ様も同じ気持ちなのか似たようなタイミングで視線を外し……。
「もしかしなくても、もしやですね……」
三人顔を寄せたまま、小声で私が少し眉を寄せながら飽きれた口調で言葉を漏らすとジョアンナ様が私に続き
「言葉が見つからないですわ……どんな高位貴族であれ王族であれ規律は規律です」
「それ以前に昼間ですわよ……いえ、流石に…さすがにそこまでは…仮にも王族ですし…ヴィクトリア様がいらっしゃるのに……あ…ええと…」
アンジュ様が狼狽えた声で呟くが、ジョアンナ様も私も“そこまで”の苦情が生徒会に舞い込んでいることは知っている。
レオナード様もアッシュ様も「淑女に見せられるものじゃない」と苦情の詳細は私やジョアンナ様に教えては下さらないが苦情を隠されても人目を気にせずにはしたなく胸や体を押し付けるようにして王子に侍る男爵令嬢とにやけた顔だけイケメンは学園に居れば嫌でも目撃してしまうのですが……まあ、本当にまずい最後の一線だけは辛うじて飛び越えてはいないらしい。
生前アラフォーだった私はすっかり男女関係には枯れている。王子と男爵令嬢が軽々と第一線でも二線でも飛び越えていても何も感情は動かない。当たり前に超えてるとも思うし……。
どうしてレオナード様やアッシュ様もお昼をご一緒に誘わなかったのか。
まさかこんなフラグ回収が待っているなんて思いもよらなかった、は言い訳にしかならないけど、せめてお二人を巻き込まないようにしなければ……まずはこの場から離れていただかないと……。
「……さて、こうしていても埒が明きませんね。お世話係を外れたとはいえまだ婚約者ではありますから……私が確認致します。もしもまた揉めるようなことになっては皆様に迷惑をかけてしまうのでジョアンナ様、アンジュ様、下に降りてカフェテリアの責任者を連れてきていただけますか?」
そしてお二人が下のフロアへ降りたら現場を押さえよう。
出来ればあからさまな状態でいてくれるといろいろなことが一気に解決できそうな気がするので、部屋の中の二人は盛り上がるだけ盛り上がってもらいたい。
「ヴィクトリア様をお一人にすることは出来ませんわ。私も学園では立場の有る者なのですから、ご一緒させて戴きます」
と、ジョアンナ様が首を横に振る。そう言われてしまうと無下にも出来ない。
部屋の中の二人、きちんと服を着ておとなしくしててほしい。盛り上がるな。
一瞬にして正反対な言葉を心の中で扉向こうに告げながら、どうしようかと視線を下げる。
その動きをアンジュ様一人にお願いすることになってしまうことの戸惑いと感じてくれたのか、アンジュ様が意を決したようにまっすぐな瞳をこちらへと向け。
「フロアに降りて人を呼ぶだけですもの、私一人で大丈夫です。出来れば戻るまでここにいて欲しいのです、約束してくださいませ…あ……あの……はしたない姿をお見せしますがお怒りにならないでくださいね」
とアンジュ様が私たちにぺこりと頭を下げ「行ってまいります」と告げるとそのまま廊下を小走りにかけて階段へと走り去った。
「可愛らしい方ね」
“はしたない姿”が廊下を走る姿なのか。かわいいが過ぎる。
扉の向こうの馬鹿に煎じて飲ませてやり……いや、もったいないからやめよう。
漏らしたつぶやきにジョアンナ様が同意するように頷き、小さく笑う。
「こういう場では時間がたてばたつほど事態が悪化するものですし、踏み込むでも放置するでもとりあえず扉は開けておきましょうか」
「そうね、…でも食事は出来れば違う部屋を借りなおしたいわ」
「同感です」
ドアノブに手をかけるがドアが閉まっている。合鍵でも使って入ったのか知れば知るだけ不正が湧き出てきそうだ。深く考えることをしない浅はかなユーリス王子が情けなさ過ぎてため息が出るがここで考えても仕方ない。
扉の前にジョアンナ様と並びたち、息を一度大きく吐いてから借りてきた鍵をドアの鍵穴へ差し込みまわした。
““ カチャ ””
――さあ、開けゴマ脱衣か着衣か、それだけが問題です。
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