お茶会奇想曲--capriccio--・2
仕事が忙しくなって更新止めててすいません!
あと数話で1章分書き終わるのでもう少々お付き合いください
予想以上の長編になりつつあります…
<--ユーリス王子視点-->
アリアのわがままボディに圧迫されながら転がり、通路との境界になる小さな柵、両側とも破壊して逆側の茂みに突っ込む。
余りの衝撃に意識が一瞬飛ぶ、気づけばアリアの下敷きになっていた。
転がり込んだ先は何かの箱のようなものがあり、アリアの尻がそれを見事に粉砕したのだった。
解放された甘い濃密な香りがあたりを包みこむのに気づいたとき、体中ねっとりとした濃い黄金色の蜂蜜にまみれていることにも気づいたのだが……。
「あら、とてもいい匂い。んまぁ、なんて美味しいの!!これはっぺろっ……初めて食べ……んぷっ……こんな、隠してるなんて!べろべろっ」
アリアが体についた蜜を舐めながらしゃべりだす。正直何を言っているのかよくわからないが、確かにこの蜜は美味い。
王宮のティータイムでも味わったことがない、まさに至高の逸品。
「そうだな!べろべろ!これは……!うむ!……美味い!!!ぺろっこんなものを隠し持っているとはけしからんな!ぺろっ!美味すぎて止まらんっ」
「先ほど壊したはハチの巣箱だったのかしら。ぺろぺろ!これは全て王室……いいえ…ユーリ様に献上するよう命じてください!べろぉ!」
「おお、べろっそれは名案………………ん?……ハチ、だと…………??」
……ブブブブ……ブゥゥン…ブゥゥン…ブブ……ブゥゥン…ブ…ン……
……ブゥゥン…ブゥゥン…ブブ…
……ブゥ…ブゥゥン…ブブ…
濃厚な蜜の甘さにうっとりとしていたが、壊したものがハチの巣箱だと理解した時少しだけ理性が戻る。
巣を壊された大きなハチがブゥゥン、ブゥゥンと怪しく低い羽根音を響かせ私たちの周りを取り囲んでいるのに気づいたのだ。
今まで不思議なほど耳に届かなかった羽音が今は恐怖のせいか耳鳴りのようにすら聞こえ頭に響く。
尻もちをついたまま重い体をずるずると後方へハチとの距離を取るように移動しているのに、アリアは血迷ったのかハチに向かって手を振り上げた。
「こ、この蜂蜜は私の物よ!!!おまえらみたいな虫けらにはふさわしくないのよ!!どこかへおいき!」
どう考えてもこの蜜をためていたのはハチのほうだろうと思わず心の中で突っ込んでしまうが、声を出す余裕も笑う余裕も私にはなかった。
アリアが腕を振り上げ大声で怒鳴った直後、それまで距離を開けて警戒の羽音を立てていただけのハチが一斉に攻撃へ転じたのだった。
小指ほどある大きなハチの大群がが一斉に私とアリアに襲い掛かる。
「きゃあああああっ」
「ぐあああああっい、痛いっ痛い……っやめてくれ!」
一回り大きな兵隊ハチが鋭い毒針を露出した肌に刺してくる。そのたびに激痛に襲われ悶絶して転がり込む。温室の草木を押しつぶし、柵を破壊しながらアリアと私は右へ左へと転がり続けた
これだけ声を張り上げているのに扉の向こうの騎士たちはどうして駆けつけないのだ!!
高貴なる私がこんなに苦しんでいるというのに!!
ハチ達が静かに暮らせるよう温室の内外は防音設備が張り巡らされていることを私は知らない。
「いだい!いだいの!やべでぇええ!」
働きハチたちは零れた蜜の回収にかかる。
肌にまとわりついた蜜にたかりあちこちを鋭い牙で噛みつかれる。何百匹ものハチに一斉に噛みつかれ、私もアリアも全身をハチに覆われていく。
アリアも私も涙とよだれまみれになり、刺された痕やかまれた痕がぼこぼこと醜くはれ上がっていった。
温室中を縦横無尽に転がり続けていれば、運が良かったのか転がった先に扉があった。私とアリアは外をめがけて転がり、ハチに覆われた団子とかして扉をぶち抜いたのだ。
◇◇◇
<--扉の前の騎士達視点-->
!!!…! バギッ……バギバキッ……ドゴォオン!!!!
「うわっなんだ!?」
余りの音に騎士たちが警戒に剣を手に身構えながら叫ぶ。
温室の中からかすかな音が聞こえ始める、それが大きくなりながら近づいてくる。
外で待っていろと言う王子の厳命に従い続けるか温室の中に入るかと護衛達が葛藤している中、巨大な塊が扉から転がり出てきた。
温室から出てきたハチ達は解放されたのを知れば仲良く伸びている王子達から離れ四方八方の空に飛び去って行った。
◇◇◇
<--ヴィクトリア視点-->
温室の中からでも届いた轟音に驚き、令嬢たちをアリーに任せると私は様子を確認するために外へと向かう。
「どうしたんだ!?」
「何の音ですの??」
扉を開けるとちょうど中庭からお兄様たちが走ってきた所に出くわしたので合流する。温室の中にまで届いた轟音の正体を確認すべく私も温室の外へ出て大きな音の下方向へと向かって行く。
確か向こうには研究用の温室が……
そして私達の目の前に破壊された温室の扉と、ほぼ破壊つくされた温室の内部が映り込んだ。
あまりの出来事に夢じゃないのかと兄妹3人そろって仲良く目を丸くしたまま固まってしまった。理解に脳が追い付かない……。
「何があった、報告!」
騎士たちの上司でもあるトーマお兄様が命じれば、混乱の中でも訓練された体は号令に従い敬礼をして背筋を伸ばす。
「はっ巨大な塊がハチの大群とともに突然温室の中から転がり出てきました!!ハチは塊から離れると四方へと空へ向かい飛び去りました!以上!」
「ハチですって!?……ああっ、うそ……ッ」
少しだけ壊れた扉に近づき、中を覗き込む。
無残に押しつぶされた植物の残骸の中に壊された巣箱を見つけた。
「隣国との共同研究で預かっていた貴重なハチなのに……」
万能薬の材料になる希少な薬草の花の蜜だけを集める特殊なハチで、そのハチの行動での受粉でしか種をつけない完全に共生関係にある薬草の培養研究をしている温室だったのだ。
温度と水の管理以外は出来る限り自然な環境で育てていたため、人を外にしか配置していなかったことも騒ぎの一因かしら……いったい何が起きたの?
見せるための花はなく、薬草やハーブなど薬効成分のある植物を集めていた温室なので見た目は地味だが、素朴で味わいのある小さな花たちも私のお気に入りだった。
それをどこまで復旧できるかわからないほど破壊されたことを理解すると足の力が抜けてドレスが汚れるのにも気を止められず思わずへたり込んでしまった。
「大丈夫か?トリア」
ギルベルトお兄様がすぐに駆け寄ってきて下さり手を差し出してくれたので、支えられながら身を起こす。
「はい、大丈夫ですわ……突然のことだったのでびっくりして……いったい何が…」
「まあ何というか……アレだとは思うが」
アレと言われて破壊された扉のそばに転がる塊に視線を向けじっと見てみる。あちこちが腫れ上がり肌が赤黒くなっているが見覚えのある品の無いドレスが目に入る。
「アレって……ええ?ユーリス第二王子殿下と、男爵令嬢!!??」
はしたないレベルで声を上げてしまい、はっと我に返って手で口元を覆った。
腫れあがり変色した肌に蜂蜜やらよだれやら涙他もろもろの体液にまみれて異臭すら放つ塊の正体を口にすれば周りにいる皆がその変わり果てた姿に私と同じように声を上げたのだった。
あれは仕方ないでしょ……。人間、あんなのになれるものなの……。
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『夫に裏切られ絶望の淵に投げ込まれたボロボロ令嬢でしたが巻き戻った世界では離婚一択で生き抜きます!……あれ?幼馴染の大公閣下がなぜか溺愛モードになっていくんですけどぉ!?』
異世界恋愛ハピエン物です。こちらもよろしくお願いします。