目覚めました
初めての投稿です
死んだら魂はなくなるのかと思っていました。
死んだ記憶はある、確かに私は事故に巻き込まれて死んだ。
私の名は天見さやか。享年は多分39歳。
いわゆるキャリア官僚と言われる職に就いていた
最短で事務次官へ上り詰めるかと昇進人事の話を上司から聞かされた矢先の事故だった
今、私はここで眠り続けている。
誰かの魂の片隅に置いてもらいながら昏々と眠り続ける。
いつか寄り添っている魂に畑の肥料のように養分となって混ざり合うのだろうかとそんなことを考えながら、ふと微睡のように意識が浮いたとき……
「この、泥棒猫!!!」
寄り添う魂の片隅にまではっきりと響いた彼女の悲鳴のような声
生前、昼メロにすら出てこないだろうサ〇エさんのオープニングにちらりと出てくるおさかな咥えたドラ猫くらいかととりとめもなくその単語に関する記憶を探っている間に
私は完全に目覚めていた。
目の前には赤く泣きはらした薄桃色の瞳にピンク色のふわふわヘアないかにも守ってあげたくなるような弱さを強調しまくった女の子と、その子を守るように肩に腕を回し抱き寄せながら私をにらむ金髪碧眼のイケメン。
周りはどうやら学校?…その廊下の一角っぽい
同じ制服を着た生徒がちらほらいるから間違いなくどこかの学校なのだろう
「ヴィクトリア!」
黙ったまま立ち竦んでいれば苛ついた声で目の前の金髪イケメンが叫ぶ。
ヴィクトリア…?
私の名前。……ちがう、この体と魂の持ち主の名。
ヴィクトリア・レビィ・カロッティーニ公爵令嬢
そう、それがこの体…寄り添っていた魂の名前
突然の交代劇に混乱して目を白黒(比喩ですよ)させていれば名を思い出したことが弾みとなったように小さな”私”という魂のすき間を埋めるようにこの体の持ち主の記憶が洪水のように流れ込んできた
その記憶の濁流にのみこまれ、目覚めたばかりの私は再び暗闇の中に意識を落ちていく
目覚めるのにそれから3日かかったらしい。
目を開ければ見知らぬ天井……ではなく天蓋
さやかだった頃住んでいた部屋がすっぽり入りそうなサイズの天蓋付きのベッド、自室なのだろうか応接セットのあるリビングエリアと簡易的に仕切られた寝室……この部屋だけで私の部屋何個分になるか、考えるだけでへこみそうだ。
体を起こしてみる。
3日ぶりに動かしたせいか体が重く感じる、節々も痛い。どうにか起き上がって目に入ったのは背からこぼれた蜂蜜色の綺麗な髪が掛け布団の上に広がっていた。
「……夢じゃ、ないのね」
耳へ届く声も私のものじゃない
ヴィクトリアとしての記憶も3日の間私と混ざり合うように馴染み、生まれてから私が目覚めるまでの記憶が駆け足で走り抜けた。まだ知人の名前や顔を思い出すのに多少時間はかかるがそれも慣れてくれば今までのヴィクトリアのように自然にこなせるようになるだろう
「お嬢様、お目覚めになったのですね!!!」
突然かけられた声に顔を向ければ明るい栗色と空色の瞳を持つ若い侍女、アリーが驚きとうれしさを混ぜたような顔をしてうっかり叫んでしまった口をふさぐように手を添えながら寝室の仕切りの前で立っていた。
私と目が合うと、はっと我に返ったように腕を下げ
「旦那様や奥様達に知らせてまいります」と告げてパタパタと忙しない足音を立てながら出て行ってしまった。
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