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第五夜 まち針はもう嫌だ

「最初からそう言えばいいんですの。ぷんぷんですわ」


針を持った凶悪美少女、天ヶ瀬すみれ(あまがせすみれ)はぷんすかと腹を立てているようだ。いや、被害者は俺なんだが。


赤い斑点が体中に目立つ。正直、痛い。


正義感よりほんの少し己の欲望が強かっただけなのにこの仕打ちはなんたることだ。


「マスター、因果応報です」


毎度の事ながら、人前ではサキュバスは空気として扱う事にしている。とりあえず、俺はポケットから封筒を取り出して見せた。


「とりあえず、天ヶ瀬さんだよね。俺の下駄箱にこれ入れたの?」


「もちろんですわ。人助けですもの」


えっへんと上から目線でモノを言う女の子だ。にしても、人助けってそれほど女子にモテないか、俺は。


「現実をしっかり見てくださいね、マスター」


額に青筋が立ちそうなのを抑え、天ヶ瀬に問い直す。


「助けるって?君が俺を?」


「決まってますわ。ずうっと昔のおじいちゃんおばあちゃんから子々孫々、悪魔払い(エクソシスト)の助手を努めて来た私が、貴方に取り憑かれた悪魔を払って差し上げますわ」


(な、何だって!?)


その会話を聞いたサキュバスの反応は…ネイルアートに集中していた。


「悪魔がネイルアートすなっ!」


しまった。つい口に出してしまった。


「悪魔ですって!やはり近くにいるのですね!正体を現しなさい!」


天ヶ瀬は叫びながら、目深にかぶっていた黒のフードを外した。


「あら。すみれちゃんじゃない!おひさぁ!」


「え?その声はさっきゅん!?さっきゅんだ!」


すみれの前に姿を現したらしいサキュバスは笑顔ですみれと抱擁している。すみれの顔は子供のように(元から幼い口調と顔立ちなのだが)はしゃいでいる。


「うっわぁ、おっきくなったねぇ。8年ぶりかしら」


「うんうん、小学生だったからそんなぐらい。にしても、さっきゅんいきなりいなくなっちゃうんだもん。私、あの日一日中泣いてたんだからね」


天ヶ瀬が甘えるような口調でサキュバスの顔を見上げる。サキュバス、場所変わってくれないかなぁ。


「マスターのご命令でも、元マスターのすみれ様…いや、すみみんにご迷惑はおかけできません」


「あぁ、何となく分かってきた。天ヶ瀬は小さい時にコイツのマスターやってたんだな」


エクソシストの助手が悪魔憑きってのも笑えるが。突然、天ヶ瀬の目がつり上がる。


「さっきゅんをコイツ扱いしたわね。あんたが今のさっきゅんのマスターだとしても許せない。えいっ!えいえいえい!」


「だあっ!」


再びまち針の強襲。もう嫌だ。


なんとかサキュバスの休戦申し建ての仲裁で、まち針攻撃は止んだのだった。


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