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第参夜 氷目登場

忍者妹(姉?)登場回です。この学園、変な人多いんです。


今回もお目汚しにいかがでしょうか。

始業のチャイムが鳴る。

一時限目は老教師今岡の歴史の授業だが、今の自分はそれどころではない。


机の上に立てた教科書の絶対障壁の裏で先程の封筒を改めて見直した。背後から俺の肩に顎を乗せて覗きこむサキュバスの視線と背中に当たるおっぱいの感触が気になるが、そんなことはどうでもよい。


生まれて初めて手にしたラブレターだ。封筒の表裏ひっくり返して見てみたが差出人の名前はない。きっと気恥ずかしかったのだろうと勝手に納得してみる。


ほんのりラベンダーの香りがする。引っ込み思案でおとなしめの可愛い美少女像が脳内で出来上がってゆく。




以下、脳内。


「あの、酒谷くん。突然、呼び出しちゃってゴメンね」


「あぁ、気にしないで。女の子から告白なんて勇気がいることだよね。君のその勇気に応えないなんて俺には出来ないよ」


「ありがとう。実はずっと前から気になってて」


「そうだったんだ。実は俺も君の事が…」


はい、ここで壁ドン入ります。


「あ!……酒谷くん」


「○○さん、好きだよ」


熱い抱擁とキスを交わす。



よし、シミュレーション完了。


「妄想の中のマスターの顔変わってませんでした?別人でしたよ」


サキュバスの白けた声が聞こえた気がするが、気にしない。



胸の高鳴りを押さえ、いざ封を開ける。手の震えが止まらない。慎重にかつ丁寧にはがす。これは液体のりか?案外、綺麗に開く事が出来た。早速、封筒の中に手を差し込む。


(いっ!)


痛みに思わず手を抜いた。人差し指の腹から、小さな赤い血が滲んでいる。封筒を逆さにして見ると一枚の便箋に、黒いまち針のようなモノが姿を現した。


(いたずらか…)


痛みによる腹立たしさより、ありもしない妄想に期待した俺がバカだった。


「マスターはついてない人間だけどバカじゃないよ」


サキュバスの慰めの一言に涙が出てくる。


とりあえず、いたずらにしても犯人を追及しなくては俺の気がすまない。自分で言うのは何だが執念深い人間なのだ。


折り畳まれた便箋を開いて見ると、こう書かれていた。



『酒谷くんへ。最近、あなたの事が気になります。お話したいことがありますので、昼休みに屋上で待ってます。同封している針を必ず持参してくださいね。』



これは…。


(やっぱりラヴ…ラヴレターぁじゃないか)


最近、人を疑いすぎていたのかもなと言い聞かせる。


「マスターが疑われ易いことするからですよ」


とりあえず昼休みが待ち遠しい。



んで、昼休み。


四時限目の終了を告げるチャイムが鳴る。教師が出ていくと教室内はたちまち慌ただしくなる。弁当を持参しているグループ。連れ立って学食へ行く者たち。


ふと俺の2つ隣に座っている須藤に視線を移す。


「あれ?まさか弁当忘れちまったのかよ?」


机の上で通学用のリュックをがさごそとあさっている。そこまで引っ掻き回さずとも弁当のあるなしはすぐに分かりそうなものだが、俺は虎の極度の腹減り状態の危うさをよく知っている。


以前、弁当と財布を忘れて6時限目に挑んだ時、虎はあろうことか消しゴムを食っていた。ここまではよくある話だ。


二回目はさらにひどく、体育の授業中に校庭の鉄棒にしゃぶりついていたのをクラスの男子生徒が教師と共に数人かかってやっと引き剥がせたほどだ。


(すまん、虎。今日は大事な用事があるのだ。俺はドロンする)


虎が夢中でカバンをかき回している内に席を立とうとした矢先。


ガラッ!


おかっぱ…いや、ボブカットの見知った女子が弁当袋を片手に教室に入ってくる。


「虎。弁当忘れてた」


この女子生徒は三組の須藤氷目すどうひめ。虎とは双子の兄妹いや姉弟、どっちでもいいか。まさしく氷のような無表情と冷たい視線。あまりの口数の少なさに『雪姫』の異名がある。虎と似つかず可愛いのだが。


「お!氷目!ナイスタイミング助かった…よ!?」


突然、氷目は弁当箱を虎に投げつけ身構える。


「虎。この教室に妖魔がいるよ。気付かなかったの?」


「んにゃ、全然」


「最近、修行怠けてる証拠。後で兄様に報告」


途端、虎の顔が青くなる。忍者の家系も大変だ。


なぁんて、悠長な事は言ってられない。恐らく妖魔とはサキュバスの事だろう。


「ですよねぇ。まだ、姿は見えてないようですが。あたしの気配に気付く人間がいるなんてお見それしました」


俺はそそくさと廊下へ足を運ぶ。サキュバスも黙って着いてきているみたいだ。


「おぉい、酒谷は学食かぁ」


ドキッ!


「は、は、は。今日は弁当忘れたんで。じゃ、あっしはお先に」


虎に呼び掛けられ一瞬心臓が口から飛び出そうになった。


「マスター話し方おかしい」


(お前は黙ってろ)


なんとか教室を脱出。


「虎。妖魔の気配なくなった」


「お前が修行のやり過ぎなんじゃないのか?気のせい気のせい」


との声をあとに屋上へ向かう。


(待っててね、今往くよ!)


「マスター、やっぱりおかしい」

ご覧頂きありがとうございます。


毎日一話書いて行こうと思ってますので明日もよろしくお願いいたします。

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