第弐夜 男って単純よねぇ
2話目です。親友の登場となりました。彼は別の作品に登場している人物の弟です。しかも、忍者です(笑)
今回も、お暇ならお目汚しくださいませ。
(な、なんとか間に合ったな)
校門をくぐった所で朝礼時間まで五分ジャスト。他人から見たら、肩で呼吸しているのかってくらい上下させてるんだろうなと思いながら、下駄箱に到着するなり背後に目を向けてみた。
(だよなぁ)
「ん?何か御用ですかマスター?」
涼しげな様子で羽をパタつかせているサキュバスがいた。昨晩とは違い、俺より頭一つ低いぐらいの人の大きさになっている。何でも体の大きさをある程度変えられるとか。
ふと周りを見渡すと同じく登校中の生徒達が多数いる。本当に回りから見えてないのか心配になってきた。
「だぁいじょうぶですってマスター!ほら、見て見て!」
サキュバスは下駄箱付近で上履きに履き替えている女子生徒のスカートの下から覗きこむように、いきなり顔を差し込んだ。
(な、なんて事すんだよっ!)
思わず声が漏れてしまいそうになるぐらい動揺していただろう。合わせて両手をバタつかせる俺を、女子生徒は朝から嫌なモノ(例えば車に轢かれた猫の死骸とか)を見てしまったような顔で走り去っていった。確かにサキュバスには気付いていないらしい。
「ほらね。大丈夫だったでしょ?」
「俺の心が大丈夫じゃねぇよ」
心にダメージを負ったまま、俺も上履きに履き替えようと靴箱を開いた。
(!?)
体が硬直する。
「マスター、どしたぁ?」
サキュバスは俺と靴箱の間に体を差し入れ、頭を突っ込むのではないかと心配しそうになるぐらい中を覗き込む。というか、サキュバスの体からえもいわれぬ良い匂いと、柔らかいお尻が俺の太腿付近を刺激している。朝から止めてくれ。
「ん、夜ならいいのかな?はい、お手紙!」
慌てて体を離し、手紙をひったくった。ピンクで花柄の封筒に可愛らしいリボンで封をされているそれは明らかに。
(ラヴレターではないかっ!)
すぐさま胸元にしまいこみ、誰かに見られていないか周囲を見渡す。幸い、一番近い生徒でまだ校門付近だ。
(助かったぁ…)
と、油断したのが運のツキ。突然、天井から黒い影が降ってきて両肩にのし掛かる。
「いよっ!朝から競歩で通学お疲れさん!」
同じクラスで、親友の須藤虎だ。
「お前な、いきなり天井から降ってくんなよっ!」
「ちょっとしたジャパニーズジョークだって!忍者嘘つきません!」
そう。こいつは生粋の忍者家系に生まれた現代稀にみる本物の伊賀の忍びらしい。(本人いわく)
「忍者!あたし初めて見たぁ!サインもらおっかなぁ!」
と、隣でうるさいサキュバスには目もくれぬ、小声で虎に話しかける。
「見たか?」
「あぁ、ピンクに花柄でリボンだった」
なんか別のモノを想像させる会話だが、それはさておき。
「見せろぉ!親友だろぉ!」
「バカ野郎っ、親友でもプライベートは秘密だぁ!」
手紙を奪い盗ろうと遅い来る虎から逃げるように教室へ駆け出した。
「ふぅ、男って単純よねぇ。中身も見てないのに…」
サキュバスの性格を出そうとしたのですが、お姉さん風から小生意気で可愛らしい娘風になってしまいました。出来るだけキャラクターの性格固定しなきゃ。
今回もご覧いただきありがとうございました。