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第壱夜 悪魔が来たりて

拙い文章ですみません。かなりアクの強い主人公ですが、こんなぶっきらぼうなまの抜けたキャラクター好きなんです。


今回もお暇であればお目汚しください。

鬱だ。こんな清々しいよく晴れた朝なのに気分は最悪。昨晩は、夕方のあの出来事があってか布団を頭からかぶり、早くに眠るつもりだった。が、夜中に六度も目が覚めた。レム睡眠というやつか。浅い眠りのせいで体の疲れがとれた気がしない。


「大輝ぃ!まだ寝てるの?もう起きないと遅刻するわよ!」


一階の居間から母の声がする。枕元の目覚まし時計を見ると時刻は既に8時半を差していた。


(や、ヤバい!)


すかさず飛び起き、制服に着替えると二階の部屋から階段を二段飛ばしで降りて行く。


グキィ!


足首をひねってしまった。これでは全力で走って登校する事もままならないだろう。


「行ってきます」


気まずい雰囲気の中、足を引きずりながら歩く息子を心配そうに見つめる母の目を避け、家を出た。


(眩しいなぁ)


朝日が腫れぼったくくまが出来ているだろう両目を刺激する。


「あら、大輝くんおはよう!今日は遅いのね」


隣の家のおばさんがゴミ出しをしながら不思議そうに挨拶を交わしてくる。いつもは30分程早く家を出るのでなかなか顔を合わす機会はないが。


「おはようございます。ちょっと、寝坊しちゃいまして。行ってきます」


軽く会釈をし、いそぎ足で学校へ向かう。


私立明勇学園。中学高校の一貫した学校だが、自分は中学卒業後、遠方から引っ越して来た事もあり高校から通っている。幸い中学時代の自分を知る者はいない。


「だから、案外このバッドラックは隠し通している。と、思ってるでしょ?」


「ってか、心読むなよ。お前の事がバレたら不味いんじゃないのか?」


勝手に会話に入ってきたのは自称俺の使い魔であるサキュバスだ。俺の横にピッタリとくっついて歩いている。名前はまだない。寝坊したのもこいつのせいだ。


「大丈夫。あたしの声はあんたの心の中に直接話しかけてるから、他の人間には聞こえないよ。この姿もあんたにしか見えないし」


使い魔のクセにやたらとおしゃべりで生意気である。二本の角と矢印みたいな尻尾、漆黒の黒い羽がなければ、なかなか美人なお姉さん風なのだが。


「あら、ありがと。褒めても何もあげないけどね」


長く美しいエメラルドグリーンの髪を片手で弄りながら色っぽく笑みを浮かべる。


「だけど、気になるから学校では話しかけないこと。回りから見れば一人ごと呟いてる危ない奴だと思われるからな」


「はぁい」


こいつとの出会いは昨晩の事だった。




あまりに寝付けない俺が三度目に目を覚ました午前二時。部屋の隅にぼんやりと光る物がある。目を擦りながら、しかめっ面で見てみると漫画などでよく目にする小さな魔方陣らしきものが床に浮かび上がっている。


(ついに俺も悪魔に魂を奪われる時が来たか。思い返せば15年、儚い運命だったな…なぁんてな。まぁ、夢の中だろうからいつか目が覚めると思うけど)


なんて考えていると、 魔方陣から風が舞い上がりと同時に光の渦が巻き、小さなフィギュア程の大きさの悪魔が現れた。


「こんばんは、マスター。今日からあたしサキュバスはあなたの使い魔でぇす。よ、ろ、し、く!」


「はぁっ?」


思わずすっとんきょうな声を上げてしまった。


「だぁかぁらっ!あたしを呼んだのはあなたでしょ?とぼけないでよ」


勝手な言い分だ。そもそも俺は悪魔の呼び出し方なんて知らないぞ。


サキュバスと名乗る悪魔は腕組みし何やら考える素振りを見せた。途端、何かを思いついたのかパタパタと羽を動かし空中を舞うと、テーブルにあったテレビのリモコンを両手で抱えて持ってきた。


「えっとぉ、これでテレビ…だっけ?つけてみて?」


訝しげに悪魔を見つめる。彼女はしきりに尻尾を振りながら早く早くと急かしてきた。仕方なくリモコンのスイッチを入れると、深夜番組が流れるはずのディスプレイには、この部屋、俺がベッドで布団を抱き抱える光景が映し出された。


(な、なんだよ?もしや盗撮されてた?)


なんて検討違いな事を考えてた思考を読まれたのか、サキュバスはかぶりを振った。


「違う違うっ!ほら、よく聞いてよ…ほらここっ!」


ディスプレイの自分の姿を見てみる。はたから自分の姿をテレビで見るなんて、芸能人じゃなきゃないだろうと思っていたので変に違和感を感じてしまった。


「ん…む…にゃ、にゃ…こん…ぐらちゅ…れぇ…しょん」


そうテレビに映る俺は確かに言った。寝言を。


「ほら、悪魔召喚の言葉を唱えているわ」


「いや、寝言だろ?これ?しかも、コングラチュレーションなんて言うか普通?」


俺の否定もものとはせず、サキュバスは頑なに言った。


「偶然だとしてもあなたは召喚を行ったの。その結果、あたしがここにいる。これは紛れもない事実なの。受け入れなさいよ」


(とんでもない押し掛け悪魔だ)


「はいそうですよ。押し掛け悪魔で失礼しますマスター」


本当に心を読まれている事に驚きつつも、一つの疑問が生まれた。


「んで、お前はどうすんの?こういうのって、大抵悪魔が召喚した人間の願いを叶えて、代償として魂を頂くって寸法じゃなかったっけ?」


サキュバスはあーっと呆れ顔で俺を見た。


「そんな古い人間の妄想を信じてたの?そんなの要らないわよ、大して美味しくないし。あたしが欲しいのは…」


突如、サキュバスは艶っぽく吐息を漏らし、俺の右肩に飛び降り耳元で囁いた。


「あなたの運気をいただきたいの。あなたの運気が全てなくなった時にあたしはあなたの魂を刈り取るの。まぁ、結果的には死ぬんだけど。それまで、あなたの為に使い魔として側にいるわ。それが契約よ」


(いやいや、元からないから。俺の運気。)


サキュバスは怪訝な顔をし、俺の顔をマジマジと見つめ、はっと驚きの表情を見せた。


「あら…あらあらあら、ないわ。運気が一つもないわ!」


俺はガッツポーズをとる。


(やったぜ!悪魔との勝負に勝った。すげぇな俺。不戦勝じゃないか!……寂しい)


「ま、いっか。どうせ魔界に帰ろうにも契約達成しなきゃ帰れないんだし。久しぶりの人間世界を楽しんじゃおっと」


「え…帰らないの?」



そして、こいつとの奇妙な関係が始まるのであった。


サキュバスって人間の性を奪うんですよ。本当はね。

でも、ちょっとはぐらかした方が面白い話になりそうなので。

悪魔でも…いや、あくまでもオリジナルのサキュバスとして見守って頂ければ幸いです。


今回もありがとうございました。

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