ばっどおーぷにんぐ
一通り、前作の小説に一区切りつけたので、今回はラブコメ要素の強いお話を書きたいなと思い投稿しました。
時折、マイペースではありますが更新していくつもりなので、お時間のある方はお目汚しにどうぞ。
自分で言うのもなんだが、俺はつくづく運が悪い。子供の頃から高校一年の今まで、かなりの高確率でハズレを引く。特殊能力かと言われればそうとも言える。
今日も苦手な英語の小テストで赤点を採り、一人クラスで担任の宮下茜の補習を受けた。宮下は二十歳そこそこのわりと美人でナイスバディな担任だが、結局はそこ止まり。どこぞの漫画やアニメのような教師と生徒の恋愛なぞあるわけもない。
帰り道、一人悲しく夕焼けの中とぼとぼと土手を歩く。最近は歩く時も自然と視線が下向きになっていて、すれ違う自転車のおばさんにぶつかりそうになる事もざらだ。
(財布でも落ちてればいいのに)
あえて言うが猫ババする訳じゃない。交番に届けて落とし主が見つかれば良い。それだけでも自分がこの世に生を受けて産まれてきた価値観があると思い込めるからだ。
しかし、そんな都合の良いことはなく、歩いている途中に目にしたのはジュースの空き缶。CMで水着姿のグラビアアイドルが若い野郎どもに囲まれて笑顔で飲んでる流行りのドリンク「HAPPYDAY」(ハッピーデイ)。
(俺はアンラッキーデイだっつうの!)
全力を込めた蹴りを食らわした。
カーンッ!
と、小気味良い音と共に蹴り上げた空き缶を目で追う。
「あ」
その先には制服姿の女子の姿が。クラス一の優等生で美少女の如月葉月が頭を抱えてしゃがみこんでいる。
初めて入学し、クラス分けがあった際に見た彼女の名前の第一印象に、お前何月なんだよと一人突っ込みを入れた。が、彼女の姿を見て一目惚れしてしまった。
長い黒髪にピンクのヘアバンド。整った顔立ちに白く透き通るような肌。理想の女子だった。
今この出会いは恋愛ゲームでいうところのフラグだったのではないかと一瞬期待した自分がバカだった。
如月はこちらに振り向くと俺が犯人だということに気付き、冷ややかな視線を送ってくる。
「あら、酒谷くんも遅いご帰宅ですね。最近、物騒な事が多いようですから、早くご帰宅された方がよろしくって…よっ!」
最後の「よっ!」の所で拾い上げた空き缶を俺に向かって投げつけた。空き缶は俺の制服の胸元にポフッと当たり、地面をカランカランと跳ねた後、土手の下に転がり落ちていった。
「あ、あの!如月っ!これはわざとじゃ…」
弁解を聞くのも嫌だという調子でフンッと鼻をならし、彼女はクルリと背を向け走り去っていった。
これが、アニメなら仲良くなれたのかも、いや、半年先には恋人になれたかもしれない。
現実はそう甘くないのだ。
簡単なオープニングと主人公紹介の回です。
ご覧いただきありがとうございました。