3
ホルン村に向けて特に急ぐ事なく、タローに吸収スキルを使わせながらそこら辺の石ころや、土を吸収させ歩いている。
「タロー?取り敢えず、マッピングにあるホルン村に着いてからこの辺の事とか、色々、情報を得ようと思うんだけどいいよな?」
『わざわざ、ぼきゅに、うかがいたてなくてもいいでちよ。ぼきゅはあるじのちゅかいまでちからね』
「いや、お前ほら見た目、ちょっとあれじゃん?キモいじゃん?」
『しゅらいむを、こわぎゃるにんげんなんちぇ、たぶんいないれちよ…ありゅじくらいでち』
「……………………。」
土や、石ころを吸収しながら左右に揺れて、会話をするタロー。
なんとなくだが、会話が聞き取りやすくなってる気がする。
「タロー、お前レベル上がった?」
『ちゅてーたしゅをみるきょかちてくれたら、じぶんでみえりゅでち』
「あ、初めから自分で見える訳じゃないの?」
『ちゅかいまでちからね、いろいりょせいげんちゃれまちゅね。ちょのかわり、れべりゅせいげんがなくなっちゃり、ぼきゅみたいなよわいまものは、まもってもらえるでち!』
顔が無いから、感情が読み取れないが、声の感じは、とてもイキイキしてる…と思う。
正直、最後の守ってあげれるかは、約束しかねるけど…。
「そうなのか…取り敢えず、ステータスの閲覧を許可するよ、いちいち確認するのも面倒くさいから、何か新しいスキルとか覚えたら教えてくれよ」
『わきゃったでち!あ、ちにゃみに、れべるは、3でち』
「お、いい感じじゃん」
使い魔も色々まだわからない事がありそうだ…。
そもそも、村で情報収集するとはいえ俺はこの世界の事、よくわかっていない。
村に着く前に鑑定ちゃんに話を聞こうかな。
「(鑑定ちゃん、この世界の名前とか、どんな人種がいるのとか教えてよ)」
---------------------
《ゼロ》
この世界の創造神、サイオンジミコトが創造した世界。
人間達の殆どは、このサイオンジミコトを信仰している。
人間の他に、亜人と言われる種族達がいる。
エルフ ドワーフ 獣人 が存在している。
ひっくるめて亜人。
ざっくり説明だなまた。
…はて?サイオンジミコトって、どう考えてもこれ日本人の名前じゃね?
「(てゆーか、ミコって神様って言ってたよな?サイオンジミコトってミコのフルネーム?)」
[はイ]
「(じゃあ、ミコって元々、俺と同じ転生した感じ?)」
[はイ、真ノ名前は西園寺 命でス]
「(意外とあっさり答えてくれるのな)」
[別にミコ様が困ル内容でハありませンので、神となリ、この世界ヲ創造し導くのが、ミコ様の仕事でス]
「(ふーん…じゃあ俺を転生させたのって実は意味あったり?)」
[…気紛レでス]
「(気紛れかよ!)」
[はイ]
「……。」
はぁ…。
まぁ、勇者になって世界救えとか言われても性に合わないんだけどさー。
だからって、この微妙な感じもなぁ。
『ありゅじー!さっきから、かおがいろいりょ、かわって、きみょちわるいでち』
「…うるせー!ってかタローお前、目無いのに俺の表情とか周りちゃんと見えてんの?」
『ふぅー…あたりまえでちよ…』
何か凄いバカにされた気がする。
『ぼきゅたちは、どうぶちゅてきな、まものとちぎゃうでちからねー…まさんそ、をあやちゅってまわりをみてるんでち』
「まさんそ?」
そういや、タローを鑑定した時に書いてあったような、ないような。
「(魔酸素って何?)」
《魔酸素》
魔法を使う為の必要な素
微精霊達の呼吸。
目のない魔物は、漂う魔酸素を纏わせ周りを感知し、情報を得ている。
へー…超便利じゃん、俺も魔法とか使えるようになればー。
[因み二、啓太様は、魔力が無イので、操レませン]
…念話もしてないのに鑑定ちゃんに、はっきりズバッと切り捨てられた。
まぁ、ステータスにもあるけど俺、魔力0だからなっ!
本当に大丈夫なのかな俺。
『…ふぃー、ちょっと、つちとかくさばっきゃりで、あきてきたでちね』
「文句言うなよー…ホルン村についたら何か違うのやるから」
『えー、ほんちょでちかー…?』
本当コイツ、表情なんて無いくせに言葉が何か皮肉っぽいというか、ふてぶてしいというか…。
感情豊かなスライムだな。
でも、違うのやるって言ったけどお金ないんだよなぁ…どーしよ★
本当、取り敢えず、人の居る所に行くってだけで、あんま次考えてなかったわー…。
こういう行き当たりばったりな感じだから、二股して刺されちゃったんだろうな俺、てへぺろ。
「なぁ、タロー…吸収するとしたら何、吸収したい?」
『なにか、しゅてーたしゅになるのがいいでち』
「例えば?」
『たんじゅんに、やくそうとか…どくがありゅのでも、ありゅていど、へいきでちよ!』
「スライムって割とスゲーのな」
『ふふーん!』
スゲー、どやぁ感が凄い。
現状、俺より使えるかもしれないのが地味に今の態度ど合間って腹立つ。
そうこう、タローとやり取りしながら、歩いていたら二人、人の姿が見えた。
門番的な人だろうか?後ろの方にちらほら民家が見える。
よし…!
「あ、あの~」
「…ん?…!…女?こんな所に女一人で旅か?」
「あ、そんな感じです…えっと、お…じゃない、私、道に迷ってしまって~」
「ほう?」
ージトリー
なんだろう、スゲー怪しまれてるー。
そうだよな、女一人、しかもこんな部屋着…怪しい服着たやつ怪しまずしてどうするよ。
「わ、私、そのテイマーなんです!そ、それで、修行の旅っていうか~…」
「へー!俺、テイマー初めて見たよ!」
「こら、セリト真面目にしろ!」
俺を、睨んだ門番とは違い、もう一人の門番の人は若い青年で、凄い人懐っこい感じで俺をマジマジ見ている。
「あ、えっと、使い魔もいますよ!」
そう言うと俺は足元に居る、タローを両手に乗せ二人に見せる。
…あれ?心なしかタロー、ちょっとおっきくなったか?
タローはプルプル二人の前で揺れている。
「「………………………」」
タローを見せた二人は、固まって、タローを見ている。
「スライムが、使い魔か…なんとも…」
「しかも普通のより小さい…ぷっ!」
『こいちゅ、いま、わらいやがったでち…チッ』
「こら!」
「「ん?」」
「あ、えっと!す、すいません」
「あぁ、テイマーは、使い魔とある程度、意思疎通が出来ると聞いたことがある」
「へー!凄いな!それ…でも何でスライム?」
『しゅらいむの、なにが、わりゃいんでち!くしょがっ!』
口悪すぎねコイツ。
「ハイル~、別に危険な人じゃなさそうだし、入れてやろうよー!」
「いや、しかしなぁ…」
「女の子が道に迷って此処まで来たんだぜー?追い返して、夜になったらすぐ魔物にやられちゃうぞ!」
「……………」
ハイルと言われた門番が俺とタローを交互に見る。
「まぁ…小さいスライムに何か出来る訳もないしな…いいだろう、追い返して、魔物に殺されても後味悪いしな。村に入る事を許可する」
「ありがとうございます!」
「もーハイルは素直じゃないなぁ~」
「五月蝿い。…ところでお前名前は?」
「あ、けいー…です!」
啓太は流石に女っぽくないよなー…。
「ケイ?へー、可愛い名前だね!俺はセリト、んで、むっつりしてるのがハイルだよ!」
「あ、はい、宜しくです…」
「取り敢えず、村長に挨拶してくれ」
「わ、わかりました」
『チッ、せりと…こいちゅ…ありゅじに、なれなれちいでち…』
「こら!お前さっきから態度わるい!」
「「ん?」」
「あ、あははは…気にしないで下さい」
かくして俺は、なんとか、ホルン村に入れてもらえた。
良くも悪くも、タローという最弱な使い魔のお陰で、怪しい危険な奴とは思われなかったみたい。
タローはちょっと機嫌が悪いが……ほっとこう。
もうすぐクリスマス~
寒いなぁ。