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優勝したら賞品はお姫様でした  作者: 熊煮
第五章:結婚式
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15.初夜を終えて

「ん、んん……?」


 シリアは何だか腕の中でモゾモゾとする感覚で目を覚ました。いつの間に寝ていたのだろうとゆっくりと瞳を開ける。


 そしてビシッと石化するように固まった。


「あ、その……おはようございます……」


 柔らかい感触が腕の中にある。しかしそれは枕にしてはあまりには大きいすぎた。


「……ルナ?」

「えっと、そうですけど……」

 

 シリアはそこでようやくルナを抱き締めていたことに気づく。

 しっかりと腕に抱かれたルナはシリアより先に起きていたのだが、シリアがよく眠っていたので無理やり起こすわけにもいかずずっと待っていたのだ。

 ルナは恥ずかしそうに顔を赤らめていたがその理由は明白で、お互いともに着ていたドレスは半脱ぎで乱れに乱れているのだ。そこから昨日の夜に何があったのか誰がどこから見ても察してしまう状態である。


「わぁっ!ご、ごめん!!」


 諸々理解した瞬間、シリアは慌てふためいてベッドから飛び上がった。昨日着ていた新品のドレスは酷いほど皺くちゃであった。


「その、とりあえず朝食までに着替えましょうか……」

「あ、うん……」


 ルナはそう提案してゆっくりとベッドを降りる。シリアはそんな彼女をチラチラと目で追いながら着替え始める。

 普段であれば一応着付けを手伝ってくれるメイドが時間になったら来てくれるのだが流石に今の姿をそのまま見られるのは気まずい。


 別に悪いことをしたわけではないが、そうしたことがあったという事実を他者に知られるのがシリアには恥ずかしすぎた。勿論ルナも同じ気持ちだったからこそとりあえず今すぐにでも着替えたかったのだ。


「あ、あのジッと見られるとその、着替えづらいのですが……」

「えっ、あ、ごごめん!そんなつもりじゃ……!」


 そんな中、白いドレスを脱いでいく姿と衣擦れの音が気になり、ついついシリアはルナを見つめてしまっていた。それを指摘されて慌てて視線を逸らす。

 しかし、そうしたらそうしたで布擦れの音だけが耳に響き、それはそれで何だか非常に緊張してしまうシリアだった。


(前まではこんなことなかったのに……)


 自身も着替えを再開しながら昨日のことを想起する。バルコニーでキスをしてから色々と気持ちが収まらなくなり、たまらずルナを抱いてベッドまで行ってしまったが、今考えてみると感情に素直過ぎてやらかしてしまったという思いもある。


(まさか師匠に言われた通りになるとは……)


 あの時はアイリの言葉を否定して逃げ出すように別れたが結局は彼女の思惑通りになってしまったと考えると見透かされているようで悔し恥ずかしい。


(でも、しょうがないよね。あんな感触知ったら誰だってそうなるよ……うん)


 無意識に自分の唇を人差し指で撫でる。何となくルナの柔らかい感触が残っているような気がして体に熱が籠る。


「シリア?」

「ひゃいっ!?」


 そんな時に急に後ろから話しかけられては、飛び上がるのもしょうがない。早朝から既に二回飛び上がったシリアを見て着替え終わったルナはどうしたのかと訝し気な表情になっていた。


「あの、大丈夫ですか?何だかボーっとして着替えが止まっているようでしたが」


 ルナを心配させてはいけないとシリアは慌てて答える。


「あ、大丈夫大丈夫!ちょっと考え事してただけだから!すぐ着替えるね」

「ならいいのですが……でも考え事ってなんですか?」

「えっ、あ、いや、その……」


 そこで適当に誤魔化せればよかったのだが、シリアはそういうのを得意とはしていない。もしかしたら傭兵時代のように何事にも警戒していた頃だったら出来たかもしれないが、今いるこの場所はそういうものではない。目の前には全てを曝け出した信頼と愛情を寄せる相手がいるだけなのだ。嘘をつこうとも思えなかった。


「あ、えっと……すいません。変なこと聞いて……」


 結果的にシリアの思考はルナに筒抜けで何を考えていたのか察したルナは少しだけ顔を赤くして背を向けた。


「る、ルナ?」


 シリアはふと心配なった。


 昨日、身を重ねたことは間違ったことだとは思っていない。二人ともお互いに昂っていたし何度も何度も愛を伝え合ったことは人生でも最高潮の快感であったことは違いない。


 ただ、今になってみれば少し伽を外し過ぎたかもしれないとシリアは思う。最後にはお互いともに地に足がつかないほど浮かび上がっていたし、シリア自身に至っては一晩中抱き続けるような気持ちだった。(結局疲れて寝てしまったが)


(もしかして、がっつき過ぎた!?)


『いくら初夜だからって羽目を外し過ぎたらダメよ。一応ルナちゃんは13歳なんだから優しく愛しなさいね。激し過ぎて怖かったり痛いとトラウマになったりするんだから』


 嫌なぐらいアイリの言葉が脳を何度も巡る。シリアはさっきとは打って変わってサッと顔を青くすると、殆ど脱いでいる状態にも関わらずルナに詰め寄った。


「る、ルナ!」

「え?な、なんです、きゃあ!」


 急に呼ばれたルナが振り返るとそこには思いつめた表情のシリアがいて、しかも急に肩を掴んでくるものだから思わず悲鳴をあげてしまう。

 しかしそんなことはお構いなしにシリアは直角に頭を下げた。


「ご、ごめんなさい!もしかして、あの、昨日の、その……全然抑えられなくなって、ルナがあんまり可愛かったから暴走しちゃって、い、嫌じゃなかった!?大丈夫だった!?」


 シリアは慌てていたせいで自分が何を言っているのか殆どわかっていなかったが、ルナにとってはそうじゃない。


(な、なんてことを聞いてくるんですか!?)


 ルナだって昨日のことを覚えてないわけがない。記念すべき大事な日、愛を囁いたこと全てはっきりと記憶にある。

 しかし、シリアの問いに正直に答えるのは至難の業であった。


「ごめん……本当に、出来るだけ優しくゆっくりするつもりだったんだけど」


 ルナがどう答えたものかと必死に考えている前でシリアは懺悔している。少なくとも「凄く良かったですよ」なんて言うのは恥ずかしすぎて死んでしまうかもしれないし、しかし逆に否定してしまえばそれは嘘になってしまう。


「……もう」

「ルナ……?」


 一度大きくため息をついたルナはシリアの頭をゆっくり上げさせた。シリアは今にも泣きそうな顔をしているが、これもルナのことを思ってそうなっているのなら彼女自身、悪い気はしなかった。


「そういう答えにくいことは聞かないでください」

「んっ──!?」


 突然、ルナはシリアに唇を重ねた。昨日みたいに情欲を称えた深いのではなく至って普通の愛を伝える接吻だ。


 短い接触を終えて、お互いに見つめあう。


「これで、伝わりますよね」

「ルナぁ!」

「きゃっ、ちょっと、もう……いつものシリアらしくないですよ」


 いつもの何事にも冷静で凛としていた彼女の姿はそこにはない。それはそれで関係が深くなったのかなと、下着姿で抱き着いてきたシリアを支えながらルナも満更ではなかった。


「おはようございます。もう起きていらっしゃいますか?」


 ただ、あまりにも無警戒過ぎてドアのノックされる音と共に、今度はルナもシリアと一緒に飛び上がることになった。

ブックマークや評価、感想などありがとうございます!


最終話の投稿は3/22を予定しております!

最後までどうぞよろしくお願いいたします!


※体調不良のため更新を3/24に延期致します。申し訳ありませんorz

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