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働いた事なんて一度も無いのに異世界行ったら社畜だった俺の無双劇。  作者: 粉兎 / パンケーキ
第一章 異世界行ったら社畜になった
8/50

7話 魔性の片鱗

タイトルはマーサの事じゃないです。もうちょい先の、伏線です。((言うな

 「という訳で、今俺は領主館を制圧しています。」

 「誰に報告をしてるの?」

 俺は今、困惑している。猛烈に困惑している。

 俺の作戦だと、まず敵に見つかる必要があった。それで見つかって、しばらく戦って逃げようと思っていた。

 しかし、すげぇあっさり領主館を制圧してしまった。お、すげえな、流石領主館というか、全員気絶させたら経験値がウッハウハだ。レベルが42とかなってる。俺はスキルポイントで交渉術、そして面白そうな大罪魔法というスキルを手に入れた。罪と罰とかいう魔法を覚えた。

 

 今からマーサさんを拷も…質問する時役に立つだろうし、今後も使えそうだ。損は無いだろう。

 という風にスキルを覚えたあとで、ミーナが話しかけてくる。

 

 「何してたの?」

 あ、そうか、はたから見たら俺は何も無いのに「ステータス、オン」とか言ってる変な人だもんな。

 

 「んー…冒険者の奥の手って、人に言うもんじゃねえだろ?」

 「そうなの。」

 ミーナはそれで納得した。俺の場合は奥の手しかないけどね。

 

 さて、そんな話をしているうちに領主館の主の部屋に着いた。つーか領主が女でもいいんだな…いや、差別と偏見はやめるか。

 俺は勢い良くドアを蹴破った。

 

 「マーサさんっているか?殺しに来たぞ。」

 ミーナが顔を青くする。ふふふ、俺の破天荒な行動は誰にも止められん。もう作戦も敵の余りの脆弱さに瓦解したし、もういいだろう。でも、俺一応領主館は殲滅したし、ミーナは俺がクソ強いの知ってるはずだ。今更何を恐れる必要があるのだろう?と思ったが、すぐに理解した。

 

 マーサさんがいない。探求者先生がそう言っている。代わりに、ボールドという洗剤のような名前の男が立っていた。

 

 「ようこそ客人よ、残念だが我が主はもう此処には居ない。隠し通路を通って町の外で待機している。」

 「余裕やなー、俺達が敵だと分かってて情報渡しちゃうとか、馬鹿なの?」

 「どうせ死ぬ人間になにを言おうと変わらんだろう?」

 ボールドは不敵に笑い、テンプレの台詞を言ってくれる。洗剤、お前はもう死んでいる。フラグで。

 

 「俺に勝てると思ってるんだー、ふーん、へー、そう。ソレハスゴイデスネー。」

 「貴様、馬鹿にしているのか?」

 「うんそうだよ?」

 俺は全力で喧嘩を売る。やっぱり、自分の事強いと勘違いしてる野郎を極限まで怒らせて完封するのは素晴らしい甘露だ。完封は無理でも、圧勝なら十分だし。

 

 そして目の前のボールド、ジョブはファースト、セカンド共に暗殺者、レベルは91と、大輝を捕獲した盗賊より高レベルだ。しかし、領主館にいた奴らはLv70平均、俺にとっては誤差の範囲内だ。

 

 と、思っていたのだが、ファーストジョブとセカンドジョブが同じだと、ボーナスが付くらしく、ステータスが盗賊の頭の5倍近くまで跳ね上がっていた。洗剤強い。だがしかし、そのステータスでも今や俺にとっては半分程の数値も無い。ちょっと、スキルの性能検査に役立てるか。

 

 「ほらかかってこいよ。じゃないとお前のご主人を追っかけてっちまうぞ?」

 「クソッ舐めやがって!!」

 よしよしいい感じにキレてくれたな。怒りは思考力を鈍らせ、行動から合理性を奪う。動きを読むのは簡単だ。

 

 「まずは大罪魔法、咎人の断罪。」

 俺の詠唱によってMPが術式を作り上げ、歯車の様な何かがボールドの体の周辺を回り始める。

 

 「チッ、何だよ!!」

 ボールドが破壊しようとして歯車に触れる。すると…

 

 「うぐぁあああああッ!!」

 ボールドの罪が精算され、地獄の様な苦痛が訪れる。それは決して肉体を傷つけず、脳に直接苦痛を流し込む。被術者が犯してきた罪の数だけ。拷問に耐える訓練をしているであろう暗殺者でも、耐えきれまい。いや、暗殺者だからこそだ。

 

 「お前暗殺者だろ?暗殺者が人を殺してない訳が無いからな。今、お前は殺された人の苦痛を全てその身に受けている。同じだけな。」

 実の所、この魔法はクソ強い。拷問としては最強クラスかもしれない。なんせ何度も死ねるのだから。

 何も殺さず生きている生物などいない、殺した生物が魚など、痛覚が無ければこの魔法で苦痛は与えられないが…しかし、溺死させたとか、嬲り殺しだとか、そんなのをした事のある人間なら、これは絶大な効果を持つ。

 

 と、探求者先生が教えてくださった。

 

 「…何したの?」

 「ああ、ちょっと自分がやった事を教えてやってるんだよ。」

 ミーナが疑り深い目で見てくるが、今の所説明しようが無い。仲間になったらゆっくり説明しよう。

 

 「さてと洗ざ…ボールド君、君の雇い主さんは何処かな?教えてくれたら、君の事は見逃してやってもいいけど。」

 「暗殺者には暗殺者の矜恃って物があるんだよ…」

 成程、依頼主の情報は死んでも吐けないと。嘘をついている訳では無いので嘘発見も使えないし、咎人の断罪も堪えるんなら今の所手は無い。

 

 だがしかし、大罪魔法で20ポイント、交渉術で3ポイント使っても、SPはまだ25も残っている。こういう手詰まりの時に使えるスキルがあるかもしれない。

 

 おっ、ボールドが動いた。肉体はノーダメって事に気付かれたらしい。ボールドはどこからともなく短剣を取り出し斬りかかってくる…が、

 

 「ミーナのが速かったぞ!!」

 俺は先程武器露店商で見つけた掘り出し物の妖刀『絶雪』を振り抜く。蒼白い刀身がその軌跡に白い靄を残しながら、ボールドの短剣を切り裂いた。

 

 「なっ!!竜鱗製の特注品だぞ!?」

 うお、マジか。露天商で二束三文で売られてたんだが…使い手が居ないし、仮に買った人がいても装備した瞬間発狂するとかで…

 そんな事も無いしな…俺が強いのか、元から発狂してるからなのか…ま、どっちでもいいや。そういや露天商は女神ルナティックが作った刀とか言ってたな。なんつー女神だ。

 

 さて、そんな裏話はともかくとして、性能は確約された。少なくともドラゴンの鱗ぐらいは斬れるという事が分かったのでOKだ。

 

 「そぉい」

 俺は雑すぎる掛け声と共に、更に一歩踏み込んで絶雪を振る。ボールドの腹がぱっくりと裂け、血が吹き出す。そして床が真っ赤に染まる…と思いきや、傷口から吹き出した血液が不自然に全て絶雪の刀身に吸い込まれ、妖刀は真っ赤に変色する。

 

 「おっとっと、死ぬ死ぬ。」

 俺はボールドに適当に回復魔法をかけておく。正直面倒くさい。もう死にかけてたんだし、マーサの居場所とかもある程度わかってたんだから殺して良かったのでは無かろうか。そうだこの絶雪の錆に…

 …もしかして発狂ってこれか?何かの血を吸うと殺戮衝動に駆られるとかそんなのか?だとすると、女神ルナティックって相当やべえ神様だな。下手すりゃ邪神だ。

 

 …失礼な、って声が聴こえた気がする。聞いた事ある声で。

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