6話 マーサさん
ふえぇ…風邪がぶり返したよぉぉ…
ドーモコンニチハ、コナウサギ=デス。今日は一気にどどーんとアップしますね。
「マーサさんってマジ何者よ。」
「私の叔母さん。」
成程、両親が死に、叔母に引き取られた所で両親の死が財産目当ての叔母によるものと発覚、叔母に財産だけ持って行かれて捨てられたのか。という、すげぇ勝手な想像。
「成程、両親が死に、叔母に引き取られた所で両親の死が財産目当ての叔母によるものと発覚、叔母に財産だけ持って行かれて捨てられたのか。」
「なんで分かったの?」
嘘だ!!こっちが聞きたいわ!!何で合ってんだよ。
「まあそんな事はいいじゃないか。兎に角、マーサさんを探して殺せばいいんだな。お前、名前は?」
「…ミーナ」
「ん、よろしくな、ミーナ。」
俺は適当に返事をする。名前聞いといて、どんだけ失礼なんだ。
「んで、居場所は分かるのか?」
「財産にものを言わせて、お母さんとお父さんに代わって領主になってる。」
おうふ、すげえの来たな。なんか、親戚にそんな女が居ましたね。全く、あの女さえ居なければ俺は金持ちのボンボンだったのに…
という前世の事はさておき、領主を暗殺か…リスクは高いが…んー、俺がイラッと来た奴は殺したいな。折角これだけのチートをゲットしたんだ、嫌な奴を殺す位バチは当たらん。ん?そういやあの女神が見てるのか?いや、俺がイライラするのは悪いヤツ相手の時ぐらいだし、自分が悪い時は弁えれるから女神も天罰とかしないだろ。
「んじゃ、ウザイ奴だから殺すわ。」
「え、軽。」
ミーナの口から初めて、まともな言葉が返ってきた気がする。何か機械的だったんだよなー。という辺りで、交渉の余地が出てきた気がするので…
「じゃあ、マーサさんを討伐したら、俺に着いてきてくれるか?」
と言うと、ミーナはサッと身を引いた。え、なんかやばい事言ったっけな?
「このロリコン。」
ぐはぁっ!!…いや、よくあるけどね?異世界モノで、主人公が勘違いされるやつ。変な称号付いたりするやつ。でもね?ロリコンは酷いよね?否定しないけど。
「俺はただ単に、俺に傷をつけた人間が初めてだから敵に回したくないだけだ。」
という建前です。はい、おまわりさん私です。普通に可愛いから仲間にしたいだけです。
…だって、話の流れ的にどう考えてもヒロインじゃん。俺がオバサンの配下倒して「かっこいい…」とかなる奴じゃん。…はい、そういう妄想ですよね。
「それならいい。」
ミーナはそう言ってまた黙ってしまった。うーん、取り敢えずこの娘を笑顔にしよう。オバサン狩りはその後だ。
「じゃあ、まずは情報集めとかも兼ねて市場に行くか。俺、まだ武器揃えてないしな。…いや、無くても大丈夫だったんだよ。」
ミーナの目が軽蔑というか、そんな目に変わったので慌てて弁明する。武器も無いのに依頼受けたアホじゃないから、大抵の依頼は素手でいけるだけだから。
「これ、ちょうだい。」
「おま…あのさ…いや良いけど…」
既に数千クランの出費、つまり、日本円で言う数万円が失われた。しかし、ミーナの笑顔を見ると満たされた気分になるから不思議だ。財布はむしろ空に近づくけどな。
前世もそうだった。小遣いの3分の2は誰かに奢って消えていた気がする。ああそうだ、誰かに奢ろうとしたら皐月がひょいっと出てきて「マジで?ありがと。」とか言ってたな。いかん、行き場のない怒りが沸き起こってきた。
「冒険者さん、これ。」
「ん?ああ、おっけ。」
俺は金貨を1枚…金貨!?金貨とか…もう報酬金額オーバーしてるんですけど…報酬貰っても支出の方が大きいんですけど…
「…依頼の報酬、幾らだったか覚えてるか?」
「私でしょ。」
ぐふ、そう来たか。仲間になれって言ったから依頼の報酬を自分にして、差額分を買わせるという訳だな。まあ誤差の範囲内だがな。
それに、あんなにキラキラした目で買い物をされては断れない。俺は友人に甘いのだ。そして、大損するタイプのアホだ。
さて、初期投資が無駄にならないように、俺は目的を忘れずに情報収集しよう。という訳で、俺は周囲の人に適当に銀貨を握らせて、領主マーサについて聞き込みを始めた。
「普通にいい人だよ。」
「直接町の様子を視察しに来たり、町の中では結構有名さね。」
「このまえねー、あめだまくれたのー。」
…ふむ、領主としての仕事はちゃんとしているらしく、人徳はあるらしい。もう少し聞き込みが必要だ…と思った所で、ふとステータスを開く。
スキル:嘘発見
ふむ、嘘をついている可能性もあるのか…今後も使える可能性があるので、俺は嘘発見スキルを習得する。そして作業再開。
「ちょっとアンタ、聞きたいことがあるんだけどいいか?」
俺は男の肩を掴んで話しかける。
「何だ?」
「マーサという、領主について知りたいんだが…」
「マーサさんか、家もよく世話んなってるよ。」
ピキーン。嘘発見。なんだろう、目の前の男が微妙に目を逸らしたり、落ち着かなのが分かる。物凄く微細な差、しかしながら、俺には分かる。
という訳で俺は更に、金貨を一枚取り出す。どうせすぐ馬鹿みたいに稼げる様になるんだ、このぐらいの支出は平気だろう。
男も俺の意図する所が分かったのか、怪訝そうな目をして言った。
「マーサの奴はどうやら暗殺やら何やらでのし上がってきたらしいと聞くな。色々と怪しい話もあるし、酒の席でマーサへの疑惑を言いふらしてた奴が行方不明になった事案もある。注意しとけ。」
「ありがとな。これは例だ。」
俺は男に金貨を手渡した。マーサへの疑惑を誰かに聞かれれば自分の身も危ないかもしれない、その事を理解していてなお情報を提供してくれたんだ、金貨1枚ぐらいの誠意は見せないとな。
そして丁度いい所で、新しい髪飾りとワンピースを着たミーナが走ってくる。紺色の星柄ワンピか…素晴らしい。見ろ!星がゴミのようだ!!という冗談は置いておき、ミーナの銀髪に星の柄が栄えて幻想的だ。この組み合わせは強い。
「…どう?」
ミーナはくるりとその場で回って見せる。こいつ、態とやってるんじゃないよな?
当然、そんな事口走ればロリコンだと言われるので言えるはずもなく、「よく似合ってるよ」と言った。
…結局「このロリコン。」って言われた。どうしろっつーねん。
さて、おそらく金の力で用心棒でも雇っているんだろうが…こういうのって、チートに奇策を足して敵を陥れるのが鉄板だよね?
「どうかした?」
「ん?何がだ?」
「すごく笑ってる。」
ん?ああ、成程な。俺が笑ってた訳か。だって楽しいじゃん、ねえ?
「ま、そのうち分かるよ。」
俺は俺は自らの作戦を反芻し、更に笑った。