4話 社畜、人里へ降り立つ。
美輝のスキル以外の、転生前からのステータスは基本私と一致していると思って下さい。
※金貨、大金貨の価値を修正
俺はゆっくりと門に近づく。門番はこちらに気づき、俺が近づく程に顔色をおかしな事にしている。
「あ、あなたは一体…」
「ん?ああ、転生者って知ってます?」
盗賊が転生者とか知ってたし、この世界では周知の事実かもしれない。
「転生者…話には聞いたことがありますが…ここまでとは…」
やっぱり知ってたか。そして俺はやっぱりちょっと強かったらしい。まあ社畜ですから!!(ドヤ)
「一体何十年修行したんです?」
「俺、そんな老けて見える?」
「人間以外の転生者ならその位に見えますが…え、人間ですか?」
と、答えるのも難しい質問を投げかけられてしまった。俺、人間でいいのだろうか。暇魔神に悩まされる。
「自分でもよく分からん。」
取り敢えずこう答えておいた。
「はぁ…まあいいでしょう。それで、用件は何でしょう。」
門番もそれで納得してくれた。この門番良い奴だな。良い奴というか、何か割り切っただけかもしれないが。
「この兎と盗賊、金にならないかな。あと、町に入りたい。入る時税金は…ああ、かからないのか。」
兎と盗賊の換金について聞き、税金の有無についても聞こうとした。がしかし、探求者先生がマジ有能だった。
「そうですね、まず兎…え、これミミックベアじゃないですか。どうやって狩ったんですか。」
ん?何か不味かっただろうか。もしかして、強キャラだった?
「こちらの盗賊は…ロー・グレゴリーですか…こっちも大分手練の盗賊だと思いますが…」
「…換金、出来る?」
「そうですね、大金貨三枚は下らないでしょう…少し掛け合ってきます。」
大金貨…こんな時の為の探求者先生、貨幣価値を教えて下さいな。
銅貨<大銅貨<銀貨<大銀貨<金貨<大金貨<白金貨の順に大きくなり、銅貨1枚が1クラン、日本円で言えば10円相当の価値になります。大銀貨までは一ずつ単位が上がり、大銅貨は10クラン、銀貨は100クラン、大銀貨は1,000クランとなります。金貨は2桁増え、金貨が10,000、大金貨が1,000,000、白金貨に至っては1,000,000,000クランの価値があります。
つまり、俺が稼いできたのは3億円か。
…いやたけえよ!!宝くじか!!何か序盤から凄い一財産作ってしまったが、社畜とは一体。そりゃあこんだけ稼げたら、仕事への意欲も湧きますわ。
しばらくすると門番が誰か連れて戻ってくる。二人はしばらく会話して、再び奥へ戻っていく。またしばらくして、今度は大勢の衛兵が現れ、兎と盗賊を運び出した。そして、先程の衛兵が袋を持って来た。
「こちらが報奨金の36,800,000クランになります。何より、盗賊がここらで転生者を主に襲い荒稼ぎしていたのですが、強さの余り手が出せずに居たのです。感謝の気持ちも込めて、少し色をつけました。」
…いや、国が対応に困る盗賊倒しちゃったよ俺。マジか。そして、3億円ゲッチュしちゃったよ。もういいよ、もう俺驚かねえよ。
しかしまあ、金は幾らあっても困らない。奴隷とか買ってハーレムするなら、必要だしな。うへへ。
あ、そうだ、太輝にも少し分けてやるか。アイツのスキル、商売の方が向いてそうだ。
「ありがとう。町にはまだ入らないけど…ちょっと待ってくれ。」
俺は太輝の所へ走っていく。太輝は暇だったのか、ボーッとしてる。
「太輝、おい太輝?」
「ん?ああ、何?」
大丈夫だろうか。俺は太輝に30枚程掴ませる。
「ん?何これ?」
「お前、戦闘系スキルじゃねえだろ?鑑定スキルとかで商売できるんじゃね?あとは知らん。」
「お、おう、ありがと。」
これだけあれば、当分は何とかなるだろう。まあコイツの事だし気にする様な事は無いだろうが…
「んじゃ、俺は王道でチートしてくるから、強く生きろよ。」
「チートなのに王道かよ!くっそー、何でお前そんないいスキルなんだよ…」
「ドヤァ」
俺はいつも通りにドヤ顔をしておいた。恩は売っておいて損は無い、いつ売っておいた恩が役に立つか、分からないしな。情けは人の為ならず。
俺は太輝を背に、街へ向かって歩き出した。
「そして、この有様である。」
俺は武器を持った屈強な男達に囲まれていた。何でだよ。
さて、簡単にこれまでの経緯を説明しますか。俺はこのスタリアの町に入り、収入を得る為に異世界モノでは王道である冒険者を選ぼうとしていた。道行く人達にチップとして銀貨を掴ませてついでに町の地形を把握しつつ、俺は冒険者ギルドに辿り着く。
そして、この有様である。
冒険者ギルドに入り、受付?のカウンターに歩いていき、「すみません、冒険者登録ってここで出来ます?」と聞いたところだ。「ちょっと待ちな」と言ってスキンヘッドの邪悪版エ〇ルみたいな奴が現れた。彼の言うことには、「俺の様なヒョロガリには冒険者は無理だから帰れ」って事らしい。でも、研究者先生が男の強さを測定したところ、ksだった。いや、俺が強過ぎるだけなんだけどね?
「んで、煽ったらこうなったと。」
「悪いな、こちとらてめぇみてぇな野郎に雑魚って言われて黙ってられる程お人好しじゃねぇんだよ。」
男の仲間たちはもはや剣を抜いている。あー…確かにテンプレだけどさー、ここで能力バレすんのはちょっと美味しくないな〜…。でも、こういう奴らの鼻っ柱をへし折るの楽しいんだよな。
「お前ら、コイツに冒険者の厳しさを教えてやれ!!」
「「「おう!!」」」
その言葉と同時に、冒険者達が一斉に襲いかかってくる。あーめんどい。
俺は最初の冒険者の剣を回避し、そこを狙ってきた斧を回避、魔術師っぽい奴の魔法に至っては掻き消した。
「なっ!!」
いや、こっちの台詞だ。ギルドの中で火属性魔法を使うな。燃える。そこにスキンヘッドの拳が飛んでくる。どうやら拳闘士とか、そんなのらしい。でも、君主に勝てるスキルは無いんだよなぁ。いや、ホントに強いのは社畜だけどな。
俺はスキンヘッドの拳を躱して腕を掴み、適当に背負投して残る冒険者達を巻き込む。あ、倒しちゃった?
と思ったら、スキンヘッドだけはゆっくり立ち上がる。
「てめぇ、やるじゃねえか…」
そう言ってスキンヘッドは鞄?からグローブを取り出す。金属光沢を放つ灰色のグローブは、おそらく鉄製だろう。けどまあ、鉄のグローブ如き、俺の強度には勝てないだろう。しかし、武器一つ持たない俺を相手にするスキンヘッドからすれば、有利に見えるのだろう。
「これで終わりだぁッ!!」
「と、思うじゃん?」
俺は体を一切動かさず、腕だけでグローブに裏拳を入れる。バキン。あ、あっさり割れたな。
「んな、なんだと!?」
「すみません冒険者登録お願いします。」
俺は完全にスルーして、カウンターに向き直る。今思ったけど、めちゃくちゃ馬鹿にしてるよな。
「ふざけんじゃねぇ!!」
スキンヘッドはギラッと光るものを懐から取り出し、俺に背後から襲いかかる…が、何でだろうか、気配とかが分かる。
「往生際が-悪いッ!!」
俺は後ろも向かず、裏拳で短剣を吹き飛ばした。おぉう、俺TUEEEE。短剣を先端から素手で突き返したぞ。
「な、何をした!?」
「フッ、気の流れを掴み、己の真の力を見極めればこの程度の事造作もない。」
俺はここでイケボを使う。低音ボイスで重厚感を出し、本当に修行を積んだ何かの覚醒者…の様な雰囲気を出す。中二病が生きた。
「という訳で、冒険者登録をお願いします。」
「え?あ、はい。」
俺は何事もなかったかのようにギルド職員に冒険者登録を頼んだ。