47話 爆発オチなんてサイテー
眠い…俺寝るわ
「よし、完了」
という訳で馬車の修理がオワタ。魔改造スキルを駆使された馬車は自律駆動機構が積んであり、もはや馬車ではなく自動車である。ただし、体裁上自律駆動馬車とか目立ちすぎるので、今まで通り四天王に引いてもらう。
因みにこの馬車にはおまけで変形機構とスラスターが搭載されており、時速720キロ程で飛ぶことも可能だ。
木材でどう作ったのかは企業秘密だけどな!
「んじゃ、馬車も出来たしテレミニンへレッツゴーだ」
「うおぉぉぉい待てェい!!」
「誰だァ!!」
俺は声の主に向けて、使いどころが無かったショットガン、絶影を発砲した。
ぷにゅん
違和感しかない発砲音と共に弾丸はその人影に向かって飛んでいき、そして…
カーン
弾かれた。
「なんで撃つんだよ!!」
「いやお前絶対予想してただろ」
俺は馬車を降り、ヴォルーシャを纏った颯太を恨めしげな視線で射抜いた。
「何故わかった」
「用がないなら行くぞ、行け四天王」
「待てェい!!」
馬車をガシッと掴まれた。
「乗せてけよ、あの女に追われてるんだ」
「知らねえよ俺の嫁との時間を奪うな」
朱雀が一瞬、ケンタウルスの姿になって『ねぇわたしはー?』って言おうとしたようだが、自重してくれた。
「リア充爆発しろ」
「了解」
俺は爆発した。
その爆風で馬車は吹き飛び、空の彼方へ消えていった…ように見えるだろう。実際は俺が馬車に積んでおいた無駄機能達が仕事をしてくれている。
「やべ!馬車飛んでった!まってくれぇぇ!!」
俺は人外力を駆使したジャンプで馬車に跳躍した。
ぐんぐん馬車に近づき、ぶつかる直前で馬車の角をつかみ、回転して勢いを逃がす。そして、四天王を馬車の中に抱えて入った。狭い。
「変形させるぞー」
「わかりました」
「んー」
ミーナとエーデラが返事をし、クーは何も言わず頷いた。それを確認して、俺は馬車の奥にあるレバーをぐいっと引いた。
「ご主人様…?」
そして俺は正座させられていた。うん、まさか爆発するとは思わなかった。
レバーを引くと馬車は爆発し、俺は人外力を駆使して創り出した浮遊魔法で嫁と四天王、そして自分をゆっくりと減速してなんとか着地した。結構MPが減ったっぽい。
「本当に、ミキ、気をつけて」
「僕…怖かった…」
クーが高所恐怖症になってしまった…いや、怖かったのも本当だけど、こいつ精神的ダメージに興奮してやがる!
「このドMが」
「うぅっ、ひどいよぉ…」
と言ってはいるが、実際は喜んでいるのがお見通しだ。あ、そう言えば嫁に感情把握先生の紹介をしてなかった。
「そう言えば言ってなかったが、俺には感情把握というスキルがあってだな…俺の前で隠し事は基本通用しないからな?」
「ふえ?」
ほけーとした顔をしていたクーだったが、みるみるうちに赤くなっていく。水色だったスライムボディがピンク色になり、湯気が立ち始めた。
もうちょい虐めてやろう。
「大丈夫、そんなクーも俺は好きだよ」
俺は俺ができる最上級のイケボで言った。卒倒したクーを見て、エーデラが何を言ったのか聞いてきたのは言うまでもない。
因みにミーナは大体察したのか、自分も赤くなっていた。
「リア充爆発しろ」
「絶雪牙!!」
現れた白い人型機動兵器に、俺は反射的に絶雪を抜いて突きを放つ。
「ふおぉぁぁぁぁああ!?」
「避けるな!烈牙!!烈牙!!烈牙ァァァ!!」
俺は半狂乱になりながら颯太に刀スキルの突き技、烈牙を連発する。
そして命中した一発の衝撃で颯太は彼方へと吹き飛んでいった。
「えっちょ、ま、ああああぁぁぁぁ…」
「颯太…いいやつだったよ」
「懲りない人ですね」
全くだ。
「新しい馬車できたぞー」
俺は人外力で作った馬車に乗る。今回は無駄機能はつけていない、軽くて丈夫で揺れが少ないだけの、普通の馬車だ。
「今度は無駄機能積んでないから安心しろ」
「本当ですね?」
「心配だなぁ…」
ミーナとクーが疑わしげな目を向けてくる。少しは無邪気に飛び乗ってきたエーデラを見習え!
なんだかんだ言って乗ってきたミーナとクーを抱き抱え、やっと馬車の旅が始まった。運良くテレミニンのだいぶ近くに飛ばされたようで、遠くに街明かりが見える。
つーか、もう夜か。はやいなぁ…
「夜………うぁ、煩悩よ、消え去れ!!」
俺は全力で煩悩を振り払う。そう言えば最近やる事やってないなぁ…だが俺は堪える!決して馬車を止めて、ルームクリエイトしたりしないのだ!
「ご主人様、馬車を止めましょうか?」
俺は馬車を止めた。
翌朝、俺はドアを消して馬車を出版させた。あー、両手に花状態もいいけど、膝枕もいいなぁ…
因みに、俺が「誰か膝枕してー」となんとなく言った時はひと騒動あった。結果、俺に膝枕する権利を勝ち取ったのはエーデラだった。最終的な勝負内容はじゃんけんという原始的な方法である。
そして、なんというかこう…肉質的な柔らかさじゃなくて、ふわふわって感覚に近いエーデラの太ももの感触に寝てしまいそうだ。
そしてその寝てしまいそうな俺は、ミーナとクーに枕にされていた。
「ミキ、見えてきた」
お、本当だ。テレミニンが見えてきたぞー…
「そこの馬車、止まれ!」
門番さんに止められた。結構大きい港町みたいだ。
「何だ?」
「貴様ら何者だ!」
「…は?」
なぜ俺は槍を向けられているんだ?まさか門番まで俺のハーレムを…いやそんなわけないか。
…とすると十中八九…
俺は嫁達を見る。
奴隷、魔物、魔物、高そうな馬車…
うん、怪しいね!
「すまないな、これが身分証明だ」
俺はいつものように金級のギルドカードを見せた。ふふふ、金級冒険者の称号は伊達じゃない…
「貴様、これをどこで手に入れた!!」
「いやあの…はい?」
ちょっと待て、ギルドカード見せたらすっと通せよ!!じゃあ何見せたら身分証明になるんだよ!!
「これをどこで手に入れたかと…」
「やめろ馬鹿が」
もう一人の門番から拳骨が下った。
「いってぇ!!」
「下がれ」
そして投げられた。ざまぁみろ。
「悪いな、新入りなんだ」
「あー気にすんな」
もう一人の門番は気の良さげなおっちゃんだった。なんとなくゼリムのおっちゃんを思い出した。覚えてるかわからないけど、絶雪売ってくれた武器商人のおっちゃんな?
「ったく、ギルドが発行するライセンスは全種類に偽造防止と盗難防止の魔法がかかってるって知らねえのか最近の若けぇ奴は」
「取り敢えず通っておk?」
「おう、通っていいぞ」
そんな騒動もあって、俺達はテレミニンの街へ入った。




