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働いた事なんて一度も無いのに異世界行ったら社畜だった俺の無双劇。  作者: 粉兎 / パンケーキ
第三章 広がるハーレムとロリコンの異名
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42話 鉄の胃 実績解除

いつから1話だけ投稿すると錯覚していた?

 「…え?」

 リオンママは動揺を顕にする。同時に何か得体の知れないものへの憎悪と恐怖が噴き出すのを感情把握スキルは感じ取った。

 そしてその得体の知れない何かは形を成し…

 

 「!?」

 感情把握スキルとリオンママの繋がりを断ち切った!うわぁ…これ相当強い奴だなぁ…

 かろうじて何かの姿は確認できた、その姿は恐らく…

 

 「黄金の竜、ですね」

 「ッ…何故それを!?」

 「その呪いを読み解いただけですよ」

 「そんな事まで…」

 そう、今俺のスキルを断ち切ったのはその黄金の竜の呪い…というか、スキルだ。予測するに、寄生に近いスキルなのではないだろうか。

 

 宿主の身を守る代わりに生命力を吸い取る…そんなスキルがあったはずだ。俺のスキルリストにもあった。

 

 「ご主人様、黄金の竜でしたら…」

 「ん?知ってるのか?」

 突如ミーナが口を挟む。黄金の竜に心当たりがあるのか?

 

 「東に金竜西に黄龍が封印されたという逸話があります。今回は金竜レヴナントの方でしょう」

 「んー…俺のスキルを弾くぐらいの強さだ、その線が強いだろうな」

 「ご主人様のスキルを!?」

 「ミキ、逃げよ?」

 「そうだよ、考え直そうよ!!」

 うちの嫁が一斉に騒ぎ出す。

 

 「まあ落ち着けよ、俺だって策もなしに突っ込むつもりは無い」

 「「「え?」」」

 騒いでいた嫁は一斉に静まり返った。個性が死んでる…うん、注意しよう。

 

 「実はまだ一度も使った事が無いスキルがあってだな…それに、これがあるしな」

 俺は背中から触手を生やしてうにょうにょさせる。サタナテンタクラと名づけよう…ん?

 

 「あなたは…一体…」

 リオンママが口を開いた。あー…確かに傍から見ればただの化け物だよな。ちょっと反省。

 

 「改めて俺はミキ・オオシタ、普通の人間の男だ」

 「「「嘘だ!!」」」

 嫁から否定されました、はい。

 

 

 

 「取り敢えず、レヴナント討伐は明日でいいよな?今日は色々あって疲れた」

 「事の発端はご主人様がクーに作った武器だということを忘れないでくださいね?」

 「…獣人族の料理はどんなのかなー?楽しみだなー」

 これ以上無いくらいあからさまに話をそらし、俺は席についた。隣ではムスっとしたリオンが腕組みをしている。

 

 「今晩はシチューよ」

 「すこぶる普通でした」

 いやまあ美味しいからいいんだけどね?シチュー。と思っていたのだが…

 

 「何だこのジャ〇アンシチューは…」

 見た目は美しいシチュー、一流の料理人が作り出すような日の打ちどころのない完璧なとろみに具材の切り方までは100点以上だ。

 

 しかし、口に入れた瞬間、醤油にお好みソースを混ぜこみ、更に蜂蜜を掛けて挙句の果てには木屑を放り込んだようなえも言われない味わいが広がる…!!

 

 「な…おい、しい…ですね…」

 ミーナが苦悶の表情を浮かべながらもリオンママに遠慮しているが…

 

 「う…何これ…」

 「…僕の口には合わないかな…」

 エーデラとクーは普通に嫌がっていた。まあ、こんな人間が食べる事を前提としていない味付けの料理を食べたらそうなるだろう。そんな嫁たちの様子を横目に見ながら俺は…

 

 「うん、イケるわ」

 そう言って残ったシチューを飲み干した。

 

 瞬間、嫁たちどころかリオンママまで戦慄の表情を浮かべる。

 

 「…驚いたわ、人間と私達の味覚って相当違うって聞いていたのだけれど…」

 「いやコレは俺がおかしいだけだから」

 それに、ミーナはギリギリセーフとして、エーデラとクーは人間ではない。

 

 「ん?お前ら要らないのか?貰うぞー」

 そう言って俺は嫁たちに救いの手を差し伸べた。五分で食べた。

 

 さて、ここでタネ明かしをしよう、タネは単純、俺は大食いで尚且つ苦手が無い。以上。

 

 紙だろうがプラスチックだろうが木だろうが普通に食べるし、妹のせいで異様に濃い味付けにも薄い味付けにも、辛味甘味渋味苦味酸味…そのどれが暴走していても、例え焦げて炭化していたり、乾ききってガチガチに固まっていたりしても俺の前では同じ『食料』に過ぎないのだ。

 

 例えば、魚の骨は当然の様に飲み込むし(わざわざ出すのがめんどい)、1日ぐらい放置されたおにぎりとか月2回は食べている。

 

 食事の量だって、テレビに出ている大食いタレント程ではないが、お腹がすいていれば成人の4人前ぐらいは普通に食べるし、三時間後には再び空腹になっている。

 

 その上に幼少期からの母親による『1日ご飯抜き』や『2日ご飯抜き』をくらい続けてきたので断食も苦ではない。

 

 長くなったが、そういう理由で俺にとって獣人族のシチューはただのシチューであり、嫁3人の分平らげるなど造作もないことなのだ。

 

 と、そんな長い説明を現実でする訳にも行かない、現実では何と言おうか…

 

 「成長期だから」

 「ご主人様、それは流石に…」

 「誤魔化せないから…」

 「僕達も成長期だし…」

 ダメでした。

 

 「ま、まあ、そんな事はどうでもいいじゃないか」

 ジトーっとした視線が俺に突き刺さる。これは精神衛生上まずい、俺は立ち上がり撤退を試みた。

 

 「……味覚障害」

 エーデラにボソッと呟かれた言葉に、俺のメンタルはあっさりと砕かれた。

 

 「大丈夫ですよ、ご主人様が味覚障害でも私は捨てたりしませんから」

 「ぼ、僕もだよ!!」

 それはフォローのつもりなのだろうか。それは二人も俺の事を味覚障害だと思っている事を示唆しており、結果としては追い打ちをかけていた。

 

 「ま、いいか」

 まあ気にはしなかったが。そもそも俺に対して変人認定など褒め言葉だった。常人より変人でありたい。

 

 「取り敢えず今日は眠いからどこで寝ればいいか言ってくれ」

 「あ、ああ、それならその廊下を手前から3番目の部屋が皆さんの部屋ね」

 今までぽかんとしていたリオンママがハッと意識を取り戻し(?)こちらの世界へ戻ってくる。

 ってか手前から3番目とか廊下とか…結構広いのでは?と思ったが、その3番目で廊下は終わりだし廊下自体も一つしかなかった。

 

 行ってなかったが獣人族の里は何本も巨大な木が立っており、その中に幾つもの家がある。借家みたいな?

 その都合で丸いリビングダイニングキッチンから横に1本廊下が出ており、そこに三つ部屋がついている作りなんだろう。世帯によっては部屋の数が違うかもしれない。

 

 「というか、一部屋に4人は狭いよな?なんで…」

 「いやだ!ぜったいにおれのへやはわたさないからな!!」

 ムスっとしていて無言だったリオンが吠えた。犬獣人なので吠えるという表現が非常に似つかわしい。

 

 「…という事なのよ…」

 「いや、4人入れるなんだよな?」

 「ダブルベッドが一つですけど…問題ないのよね?」

 「なんだろう、プライドの問題ですごく頷きたくないけど、迷惑かけたら悪いから頷くしかないというこのジレンマは…」

 ちくせう…俺は心の中でなにか腑に落ちない感覚を必死で拭った。

 

 「取り敢えず俺は寝る、異論は認めん」

 そう言って俺はこのやるせない気持ちを誤魔化すようにあてがわれた部屋へ飛び込み…

 

 「んぐぁ!?」

 足元に張ってあったロープという古典的な罠にかかり、盛大に転んだ。

 

 「あっはっはっはっはっはっはっは!!」

 この声は確実にリオンだ…いや、声が聞こえなくてもわかる。まあリオンママが実は人間大嫌いで仕掛けた可能性も微レ存…かな?

 

 「ざまぁみやがれです!!」

 的中…だと!?いや、これは明らかに声のトーンが違いすぎる…というか、位置が感情把握て分かるんだなぁ…弱い感情だと対象が目の前とかにいないと分からないけど、激しい、例えばめちゃくちゃ嬉しいとか、そういう感情は位置まで伝わってくる。

 

 「お 前 か」

 俺は持ち前の演技力を利用して低く、野太い声でゆっくりと言葉を紡ぎ出す。

 

 「ヒゥッ!?」

 そいつの感情が恐怖に変わり、打って変わって情けない声を上げた。

 そして俺は無情にもそいつを右手で掴む。胸ぐらを。

 

 「つ ー か ま ー え た ー」

 「やあああぁぁぁぁぁぁぁあ!!」

 俺の凄惨かつ狂的な笑みの前に、兎獣人は悲鳴を上げた。言わずもがな、森で最初に出会った兎であった。

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