40話 ダルオス大森林での再会(笑)
今日はここまで。というか、プロットにダルオス大森林編は書いてないから今後の展開めっちゃ悩む。
ダルオス大森林は獣人族の領域、侵入した人間は排除と決まっている。
兎人族のミルは森で偶然にも人間の少年とその周りに魔物や人間の少女達を発見し、木の上から得意の狙撃で仕留めようとした。
ミルの狙撃の腕は集落の中でも群を抜いて高く、兎の視力を利用したその正確さで獲物の隙をついて急所に的確に命中させる事で一撃で獲物を屠る。
ミルは少年の様子を観察し、隣にいる少女に話しかけた瞬間、反対の斜め後ろ側から弓で正確に頭部を狙い撃ちした。矢は一直線に少年に向かい、その命の灯火を消す…はずだった。
しかし、その少年はミルの想像とは全く違った動きをした。
一瞬で振り返り、ミルの放った矢を掴み、こちらへ正確無比に投げ返してきたのだ。予備動作もなく隙をついたはずの矢を掴み、単なる投擲だけでミルのいる場所を、弓よりも遥かに速く撃ち出してきた。
「ぅヒィ!」
余りに予想外の出来事にミルは反射的に声を上げ、辛うじて矢を回避する。本能が警鐘を鳴らし、ミルの中から戦うという選択肢は既に消え去っていた。
あれは人の姿をした化け物だ、戦っていい相手ではない。
(なんであんな化け物が森に!?)
混乱しつつもミルは全速力で逃げた。木々を渡り、兎人族の跳躍力で飛ぶように逃げる。
「なんなのあのニンゲン!」
ミルは思わずそう悪態をついた。
「呼んだ?」
同時に、そんな声が聞こえた。
「うさ耳か…昔の俺ならめちゃくちゃはしゃいだかも」
俺はどうやら俺をソ☆ゲ☆キしていたらしい兎獣人を掴んで言った。
「ご主人様を狙っていたのはこの女ですか…」
「待て待て待て、ちょっと待て」
ルーンを取り出したミーナを俺は全力で止める。ヤンデレマジ怖いわー…いやまあ別にいいんだけどね?愛が重いのは寧ろカモンだし。
「ミキは、ともかく、ミーナ、どうして、平気、なの?」
ふらふらしながらエーデラが言った。どうやらさっきの飛行(跳躍)で酔ったらしい。
「エーデラが貧弱なだけでしょ、僕は平気だよ?」
「クーは、スライム、でしょ?」
家の妻達は仲良し。ヤンデレなのに。あれ?クーはヤンデレなのか?ヤンデレなんだろうな…フラグ的に…
「取り敢えずこいつが逃げてた方向に行ってみようぜ?獣人の集落とかあるかもしれん」
「ありますよ?」
「いやあるんかーい!!」
ナチュラルに突っ込んでしまった。いやだってそんなトントン拍子に進まれても…ねぇ?
っていうか寄り道イベントかよ、何があるんだよ。
「エーデラが酔ってるから、ここからは歩いて行くか」
「ミキ、ありがと」
そんなこんなで俺たちは獣人の集落に向かう事になった。
…っていうか、獣人ってこう、閉鎖的なのがテンプレじゃね?実際この兎問答無用で撃ってきたし、その線は結構強いはず…
「止まれ人間!!」
「クソっ、よくもミルを!!」
狼獣人の門番二人が叫ぶ。
…はい、知ってました。
「いや別に殺したとかじゃないよ?襲ってきたから気絶してもらっ…」
「問答無用!!うおぉぉぉぉ!!」
ガキィンッ!!激しい音をたてて狼獣人Bの刀が折れた。
「な、貴様、人間ではないのか!?」
「いや?人間だけど?」
ま、人間には見えないだろうけど。
俺が何をしたか、簡潔に言えば背中に寄生してる植物触手の性能を試しただけだ。この触手、サタナステンタクルと名付けよう。
つーか半端ない硬度だな!!刀真っ二つやで?
「取り敢えず、暇潰しに寄っただけなんで通してもらっていいか?」
「里にこんな化け物を入れる訳には行かない!!デリア!!」
「おう!!」
そう言って二人して襲いかかってきた。はぁ…
俺は一歩も動かずに触手の動きだけで狼獣人二人を吹き飛ばす。今は一本が限度だが、そのうち『ザァッ』って効果音がつくぐらいの本数になるだろう。
こんな雑魚二人ならいっぽんで十分、二人して吹き飛んでいった。
「よし、入るぞ」
「そうですね」
「え、ミーナ、止めないの?」
「止めても無駄ですから」
「僕もそこは同意見かな」
そう言って俺たちは堂々と獣人達の郷に入っていった。
「美輝!!助けてくれ!!」
「おーい、俺もだー!!」
「ちょっと、助けなさいよ!!」
「「「な、誰だ貴様!!」」」
「落ち着けお前ら!!まずそこの3人、何で捕まってんだ!!そんで獣人共!!どうせその3人も侵入者だろ、また増えたぐらいで取り乱してんじゃねぇ!!」
俺の謎の怒号に全員が気圧されて後ずさる。後々考えてみると前半はまだしも、後半は結構な暴論だったな…
「ご主人様…もうなんでもありですか」
「ミキかっこいい…」
「…ミキはどうしてこうなんだろう…」
「うるさいぞ俺の嫁!!」
「「「え…」」」
俺のノリと勢いが嫁に飛び火した。もはや何も怖いものなどない俺は普通に歩いていって縄で木に縛り付けられている大輝、颯太、シフォンの3人を普通に解放した。
「…ハッ、何をしている!!」
「俺の知り合いを解放しただけだ、反省はしている、後悔もしている」
「「「おい」」」
3人に殴られたが、俺のステータスは文字通り桁が違うので3人ともが殴った腕の痛みに悶絶する結果となった。
「森に侵入した人間を生かしておく訳にはいかない!!者共、かかれぇっ!!」
「何その悪役っぽい掛け声」
俺はめんどくさそうに、非常にめんどくさそうに絶説を抜いた。何となくこっちで戦いたい気分。
…だったのだが、突然獣人達がピタッと静止してしまった。中にはだいぶ不自然な姿勢で、どうやってバランスをとっているのか良くわからないやつもいた。
「…ミキは僕の能力を知らなかったよね?」
「…そう言えば『静止』のクーだったか」
「あれ?知ってた?」
確かクーに出会う前にミーナから聞いた気がする。ふふふ…俺の記憶力を舐めるなよ?楽しい事は絶対覚えてるからな…異世界の事なんかパーフェクト、コンプリートよ。
なんだこのテンション…
「くそ…体が動かねえ!!」
「こんな…所で…ッ!!」
「こんなロリコン野郎に!!」
「ブフォッ」
「おい待て今俺の事『ロリコン』っつった奴と吹き出した3人出てこいてめえら全員処刑じゃ」
俺は虎?の獣人と捕まってた3人を触手で捕まえて引き寄せた。
「出てこさせてんじゃん!!」
「くっ…殺せ!!」
「颯太、お前のくっ殺とか誰得だよ」
「私得よ!!」
「知らねえよ!!颯太への想いを隠す気ゼロだな!!」
「…!!」
「めんどくせぇなぁもう!!」
「…」
俺達のやり取りに虎の獣人が怪訝なめを向けている。あれは『人間ってこんな奴らばかりなのか?』という目だ。
「…はぁ…取り敢えず俺は疲れた、金払うからどっかで飯食いたいんだけど…」
「「「「「よくこの空気の中言えたな!!」」」」」
獣人達が叫んだ。
「お、この肉うまいな!!」
「スマイルポークですね、身が締まっていて美味しいです」
「なんだそのメルヘンな豚」
「頭がニヤけたオッサンの豚ですよ」
「聞かなきゃ良かった!!」
俺食っちゃったよニヤけたオッサン豚!!美味いからまだ食うけど!!何となく食欲失せるわ!!
「そんなの気にしてたら…って気にしてなかった」
「そうだね、ミキは何でも食べるもんね…」
「クー!!死んだ魚のような目をしながら顔を真っ赤にするのやめてくれ!!というかどんな心境なんだ!?」
駄目だ、何故か物凄く面倒な事になってる…
と、そんな時長老っぽい亀が歩いてきた。ど〇森の村長かよ。
「ニンゲンよ、この村への宿泊を許す代わりに一つ頼まれてはくれんか?」
「え、めんどい」
俺は即答して、特に理由もなく爆発した。




