30話 魔性の邂逅
最近ストックという物を知りました。これからはまったりと気が向いた時に書くという事ができます。そろそろシリアスになってきますね。
「…何でそんな笑うんだよ…」
「「お前、前世で自分が何したか」」
「ごめんなさい!!許して下さいお願いします!!」
2秒で立場が逆転した。解せぬ。
「所で皐月君?俺がここに来た理由を忘れた訳じゃ無いよな?」
「え…ちょ…急すぎません?」
「あ、美輝の奴、嫌な話題から逃げたな」
「ミキの昔の話聞きたい」
「私も聞きたいです」
「おう、アイツは中学三年生の頃…」
「うるせぇぇぇぇバッキャロォォォ!!」
俺は颯太を黙らせて、絶雪に手をかけた。
「え、おま、本気?」
「皐月、お前は一回殺す…絶雪牙!!」
俺は絶雪を抜きながら突きを放った。
そして皐月が消えた。
「俺より弱い癖にな」
「んなっ!?」
皐月が背後から俺の首に剣を押し当てていた。何故!?しかも体が動かない…いや、どんどん重くなっていく!!俺は膝をつき、地面に倒れ伏した。
謁見室は静寂に包まれた。
「流石に命の危機に笑ってる訳にはいかねえよ」
「皐月…お前なんで…」
颯太が呟いた。無理もない、皐月は俺達のグループの中で一番引っ込み思案で、平和的だった。それが今では一番の力を持っているのだから。
「何でって…俺がこの世界に転生して16年、遊んでた訳が無いし女神様に力を貰ってないとも言ってないだろ?」
「何で隠してたんだよ…」
俺は地面に突っ伏したまま皐月に問いかける。
「…全てはルナ様の支持だぞ」
「…ルナティックか…」
「正解!でもまあまさかここまで弱いとは…」
皐月は剣で俺の右手の人差し指の黒水晶の指輪を叩き割った。
「ちょっと頭を冷やして、勉強してこい。女子に現を抜かしてる暇はねえぞ?」
意識が黒い靄に包まれていく中、最後の一言で皐月が苦々しい顔をするのを俺は見ていた。コイツ、変わってんのか変わってねえのか…
そして意識がはっきりする。周りは真っ白だが、何か建物がある事だけはハッキリと分かった。ここはあの世か…おそらく俺はゼリムの指輪と皐月によって女神ルナティックの元へ送られたのだろう。
女神ルナティック、絶雪やルーン等の狂気を纏った武器を生み出し、俺の行く先々で関わってきた女神。邪神の一種では?とも思っている。油断できない相手だ、気を引き締めよう。
「邪神、か…そんな呼び方をされるなんて心外だね…前もそう言ったはずなんだけど?」
目の前の空間がゆっくりと輪郭を帯び、女神ルナティックが現れた。
「…お前が女神ルナティック…」
「そうだよ?ボクの事は今度からはルナって呼んでくれるかな…そっちの方が邪神よりも嬉しいしね」
その女神は邪悪さ等微塵も感じさせない笑顔で言った。
俺をあの世界に送ったのは、女神ルナティックだったようだ。
「まずはボクの事について話さなきゃいけないね…どうやら随分と警戒されてるみたいだ」
「当たり前だ…絶雪やルーンの効果を見たぞ?持てば斬殺衝動に駆られ、生き血を吸って強くなる武器なんて趣味が良いとは言えないからな…」
「でも役に立っただろう?」
まあ確かに、絶雪が無ければあの竜も、ネロスだって倒せなかった。しかし、俺に肩入れする理由は何なのか、それがとにかく不気味だ。
「酷いなぁ…ボクのキスでドキドキしてくれた美輝君はどこへやら…」
「っオイ!!何でその話が出てくる!?」
「まあいいじゃないか。それよりもまずボクの正体について話そう。ボクは闇を司る女神だ」
「闇…?」
まさかこの女神ルナティックもヤンデレなのか!?そんな何処かのエロ小説みたいな事があってたまるか!!
「そう、ボクの力は闇、強く、そして忌み嫌われる力さ」
そう言った時、ルナティックはひどく悲しげな顔をした。
「ボクは決して悪事を働こうとしてるわけじゃない、ボクは世界を正しい方向に導きたいんだ。ボクなりのやり方で、ね?」
「その為に俺達に干渉したのか?」
「いや、ストーブの故障は完全に想定外だよ。君達をりようしてしまったことについては認めるけどね…」
…成程、大体わかった。
「まだだよ、君にしてもらいたい事があるんだから」
「…ん?何だ?」
「まずは魔王の討伐、生死は問わないけど無力化して欲しい。そして二つ目、勇者を無力化して欲しい」
「…訳が分からないんですけど」
魔王と勇者が同じ派閥だとは考えづらい…それを両方無力化?わけがわからないよ…僕と契約して魔法少女にn((殴蹴殺
「魔王と勇者が生まれたのは、神の管轄外なんだ。そして彼等がどれだけ互いを殺しあっても、決着はつかない。やがて人も魔族も、すべての種族を消してしまう程の力を持った最強の魔王と勇者が誕生し、世界は滅んでしまう」
「いやめちゃめちゃ大変な話だった!!」
何だろう、俺も主人公補正持ってるのかな…すげぇ面倒事に巻き込まれた気がする。
「最後に伝えておく事、それは君の種族とファーストジョブについてだよ。それと幸運値もね」
「ん?ルナがやったんじゃないのか?」
「残念だけど違う、これはおそらく君自身の力が具現化したものだと思う…だからボクには、それらの力が最後にどうなるのか、全く予想できないんだ」
「こりゃまた意味深なステータスだな…」
俺はステータスを開いて見た。社畜と暇魔神…これらはいったい何なんだろう。
「君のその力が世界にどんな影響を与えるのか…楽しみに見てるよ」
最後にルナティックは、初めて邪悪な笑みを見せた。この女神は間違いなく、平和など望んでいない、ただ面白いものが見たいだけだ。そう確信できる狂気と、純粋な病みがその笑には含まれていた。
個人的に皐月はやられ役にしたかったです。ノリと勢いでこんな感じのヤバいキャラになりました。




