2話 社畜万歳
今日は呉の大和ミュージアムに行く。その中で続きを…いや何のために行くんだ。
「…なん…だと……?」
思わず口にしてしまった。社畜?俺の才能は、社畜?俺は社畜だったのか…嫌だな。うん嫌だ。ホントに嫌だ。そう、社畜なんて…
「嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
それは魂の叫びだった。俺は喉が潰れる程に叫んだ。それこそ、声が枯れるまで。
「なんでだァァァァァ!!おかしいだろうがァァァァァァ!!」
転生したからといって、そんなうまい話は無いという事だろうか。俺は社畜として生きていくしかないのか。
いや、実際の職はセカンドジョブだと女神は言っていた。俺は社畜の適性があるだけなのだ。社畜の、適性……社畜………。嫌だな。
まぁそんな後ろ向きになってもしょうがない、女神から授かった能力を確認しよう。俺は再びステータスウィンドウに向き直る。
俺はステータス詳細、という所を触れ…られなかった。ん?やり方が違うのか?
「ステータス詳細。」
あ、、開いた。口頭操作なのか。俺は自分の能力値に目を移す。俺のステータスはこんな感じだ。
大下美輝 16歳 男
ジョブ:1st,社畜 2nd, 3rd,
種族:暇魔神、人間
▷▶︎ステータス◀︎◁
HP:320/320
MP:640/640(+?)
ATK:121
DEF:67
MATK:278
MDEF:156
DEX:215
LUC:3,296,571
EXP:0/1
▷▶︎スキル◀︎◁
ステータスウィンドウ(Lv-)
スキルボーナス(Lv1)
魔力錬金(Lv1)
社畜精神(Lv999)
…うん、幾つかおかしいのがあるね。
まず、種族。暇魔神って何!?種族二種類あるんですけど!?人間は分かる。俺は人間だ。んで!暇魔神って何よ!!暇魔神で社畜って支離滅裂にも程があるだろ!!
そして幸運のステータス。あのさ、何これ?さんじゅうにまんきゅうせん…うん、何があった!?俺は一体どんな豪運の持ち主なんだよ!!前世だと機械の故障で有り得ねぇ死に方したんだけど!?何がラッキーなのかな!?
そして最後にスキル。社畜精神。何これ!?ホント何なん!?え?Lv999って何よ!!そもそもどんなスキルよ!!おかしいだろうが!!
…はぁ。自分のステータス見ただけなのに猛烈に疲れた。よく見たらMPにも何か変な表示あるし…それにしても、何だよ社畜精神って。…ん?もしかしてスキルも詳細見れたりするのか?あ、見れるっぽいわ。なんかそんな気がする。
「スキル説明、社畜精神」
俺の言葉に反応し、新しいウィンドウが開く。
社畜精神
働く事への飽くなき使命感により、作業意欲が上昇し、セカンド、サードジョブの効果がレベルに応じて上昇する。また、MPもレベルに応じて上昇し、MPが枯渇した場合はHPを消費して代用することができる。
…チートでした。
何コレ!!社畜すげぇ!!何か母さんが社畜やってた事に初めて感謝したわ!!ありがとう、母さん。
そして社畜って何やねん。
何かもう疲れてきたので、ステータス確認はもうやめて俺は歩き出した。取り敢えずどっか町へ行こう。
なんて思ってると、ぴょんぴょんと兎が飛び出てきた。この世界にも兎いるんだ。何か癒され…前言撤回、コイツ兎じゃねえ!!
俺が兎だと思っていた生物は膨れ上がり、やがて熊と比べて謙遜ない大きさへと変貌を遂げる。あの、ドラ〇エで言ったらスライム的な存在は何処ですか?
レベル上げたり、お金稼いだりできる奴、いないの?おかしくね?俺また死にそうだよ?
そんな事を考えている間を待ってくれるはずもなく、兎(?)は前足を大きく振り上げ、風を切りながら振り下ろす。俺はそれを反射的に腕で受けるが当然、受けきれるわけもなく…あれ?痛くないな。バキボキィって音はしたんだけど。
恐る恐る目を開けると、兎の前足があらぬ方向にひん曲がり、新しい関節が出来てしまっていた。
こいつ、こんな見た目してスライムと同じ立ち位置かよ。
何か拍子抜けした俺は、兎を背負い投げして絶命させた。
お、レベルが18まで上がってる。何だろう、女神が何か経験値に関するボーナスを付けてくれたのだろうか。すげぇ成長してるわ。
という事はスキルポイントも入っているのだろうか。おお、入ってる。
スキルポイントは44ポイントあった。ボーナスポイントで10ポイントくれてたらしいが、気づかなかった。
取り敢えず適当に取っとけばいいか。ん?ジョブもスキルポイントで解放できるのか。見た所農家とか勇者とか、ありそうなジョブは見当たらない。きっとスキルポイントでしか得られない特別なジョブなんだろう。因みに、社畜は無かった。
何かポイントが高い君主とかいうジョブと、探求者というジョブをゲットしてみた。強いのか?これ。まあ、振り直しとか…できるよね?まあ大丈夫でしょう。セカンドジョブに君主、サードジョブに探求者をセットしようとする…と、
[警告]ジョブは一度設定すると一定条件を満たすまで変更できません。
成程、そんなのもあるのか。ほいほいジョブを付け替えたりはできない訳だ。スキルポイント消費から考えても有用な職なのだろうと予測して、付けておいた。それぞれのジョブの詳細を見てみる。しまった、ジョブ詳細を確認してから付けるべきだったか。
君主
パーティメンバーや奴隷、ペット等の能力をレベルに応じて上昇【+】し、【更に好感度を上げやすい】。剣術、槍術、【刃物を使った近接戦闘技術全般】のスキルを習得。
探求者
研究によって【あらゆるもの】の解析が可能、一般的に知られていることに関する知識の【会得】、魔術やそれに関する技術の【開発】、初級、中級全属性魔法、【全属性魔法習得、特別生成】のスキルを習得。
んー?強すぎじゃね?所々ある括弧は…もしかして、社畜の効果か?社畜の効果でこんなチート効果になってるのか?
怖い怖い、社畜マジ怖いよォ…
そんな社畜に恐怖している俺に迫る影がある事に、俺は何故か気付くことができた。DEXとかLUCとか、関係あるのかもしれない。